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番外編2 君と僕の出会いの物語

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青い薔薇ブルーローズ? だって……青い薔薇は自然界に存在しない幻の薔薇だよ? えっ? どうしたの?」
「へへ、綺麗でしょう? エドワード様とザラ様がお祝いにくれたのよ。ん、いい香り」

 クラリスはブーケを両手で持つと薔薇に顔を近づけ、嬉しそうに微笑んだ。

「……あの2人が?」
「うん、ザラ様がね、私の瞳の色に合わせた薔薇をって……魔法で品種改良をして青い薔薇ブルーローズの種を作ったんだって! それをね、エドワード様と育ててくれたの」

 機嫌よく話すクラリスを見つめながら、エドワードとザラの顔を頭に浮かべる。

 あの2人が? 育てた? あんなに忙しい2人なのに?

 ザラだったら魔法ですぐ開花できるだろうに……いや、きっと自分達で育てた薔薇を贈りたかったんだろうな。

 あの2人のクラリスに対する並々ならぬ愛情が、ブーケからひしひしと伝わってくる。それは昔から感じていた、誰にも邪魔できない3人の絆。僕との事もクラリス自ら報告したのだろう。

 必死で秘密にしていたのにダダ漏れすぎるこの状況に、僕は遠くを見つめた。部屋の中だけど遠くを見つめた。

 …………極秘って……なんなのかな……

 それでも、2人が祝福してくれている証のブーケ。なんだか僕も嬉し……

「おかしいわね……ちゃんとテーブルに置いてあった筈なのに……」

 クラリスが不可解そうにひとり言を言い、首を傾げるのを見て、胸中がざわついた。

 前言撤回。

 2から贈られたブーケが、でテーブルから落ちた……これってさ……

 いやいや……考えたくない。考えたくない。僕は考えないぞ。大丈夫。花はいつまでも咲き誇っているわけじゃないし。

 脳裏によぎった考えを一生懸命拒否していたが、クラリスの口から出た言葉は、自分に言い聞かせていた大丈夫という気持ちを打ち砕くものだった。

「しかもね、ザラ様が魔法を施してくれたから、この薔薇、枯れないの!」

 そっか……枯れないのか…………ふぅん……そっか……

「す、すごいね……あのさ、その薔薇、寝室にだけは飾るのやめようね」
「えっ? なんで?」

 屈託なく聞くクラリスに、なんて言えば良いのか……

 クラリスはふふっと笑いながら、話し続けた。

「この香りね、リラックス効果があるのか、ちょっと眠くなるのよね」

 はい。理由はそれ! 絶対その薔薇、夜になると睡眠魔法を撒き散らすから!!

 この今日という幸せな日に、失意のどん底に落とされた僕は泣きそうになった。

 まさかブーケが僕らを邪魔する道具アイテムだなんて、思わないじゃないかぁ。
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