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番外編2 君と僕の出会いの物語

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 ドクンと心臓が大きく動いた。

 なんの前置きもなく言われた父さまの言葉が僕の胸を突き刺し、言葉を失う。

 父さまは何を言っているの?

「我が家には跡継ぎファンレーがいるし、お前も公爵様にお世話になった方が幸せだろう。もう手続きは終わっているから、さっさと荷物をまとめなさい」

 どうしよう……上手く、息が、できない。

 父さまは僕がいらないの……?

 公爵様にひたすら笑いかけている父さまに何も言えず、僕はうつむいた。手で拳を作り、ぎゅっと握りしめる。

 泣いちゃだめだ。泣いても誰も気にかけてくれない。だって……

 僕は、なんだから。

「この件はミカエル君も納得済みだと聞いてましたが?」
「父親の私が納得してますので、大丈夫ですよ。役立たずのグズな息子ですが下働きぐらいはできるでしょう。こき使ってやって下さい。魔力もない厄介者、引き取っていただけるだけでもありがたいもの。ああ、でも、息子を差し上げるのですから、我が家にも多少なりとも援助を……」
 
 公爵様のいぶかしむ言葉にハキハキ答える父さま声が、僕の頭の中でガンガン反響する。

 初めて父さまが僕を息子と言った……でも……役立たずでグズの厄介者の息子。差し上げるから援助を……?

 僕は……売られたの?

 泣いたらだめだ。余計、無能な奴だと思われる。公爵家でも役立たずだと笑われてしまう。

 笑え。笑え。笑え。笑え。笑え。

 にっこり笑って挨拶するんだ。

『よろしくお願いします』

 と。

 歯を食いしばりながら、我慢していた涙が僕の目から溢れてしまい、ひと粒ポトリと床に落ちた瞬間だった。

「失礼な発言は止めて!!」

 女の子の凄まじい大声に驚いて顔を上げると、フルフル全身を震わせた小さな令嬢が悔しそうに唇を噛んでいた。

 あの令嬢が怒鳴った? えっ? 公爵令嬢が?

 びっくりしすぎて、僕の涙は引っ込んでしまう。令嬢は更に驚愕の行動にでた。

 僕の腕をガシッと掴み、父さまに向かってイィーーと思いっきり口を横に広げ、顔をプイッと背ける。

「行きましょ!」

 彼女は僕の腕を引っ張り、この部屋から連れ出した。
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