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雷の夜に……
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しおりを挟むもう限界だ……物理的に離れるしかない。
義姉さまの両肩に手を置き、顔を背けながら僕から離す。
「今まで……雷、怖いなんて言わなかったじゃない」
こんなに近くに……体温を感じられるほど肌も触れているのに、抱きしめられない切なさと苛立ちが、突き放した言い方になってしまった。
「だって……私、お姉ちゃんだもん」
そうつぶやく義姉さまの声は、いつものしっかりした声ではなくて、子供っぽくて……可愛らしい声。
お姉ちゃんだから、僕に弱いところを見せなかった?
じゃあ……今は……? 今はどうして弱いところを見せるの?
「今は……」
僕はゾクリとした。
もう自分が抑えられないことに。
今まで超えなかったものを超えてしまうんじゃないかということに。
「今は……お姉ちゃんじゃない?」
薄暗い部屋でもわかるほど、カッと赤くなった義姉さま。顔を反らし、何かを誤魔化すように早口で衝撃の内容を話し出す。
「私……あのね、私……アルベルト様に求婚されたの。それで、それでね……私、私……」
義姉さまの口から発せられた驚きの言葉に、僕は息を呑んだ。
「ミカエルに言わなきゃって、ずっと思っていたの。でも、なかなか言えなくて……あのね、私、私、アルベルト様と…………」
心臓がドクンと大きく跳ね上がる。
ゴロゴロと鳴り渡る雷の低音と、一層激しくなった不規則な雨音が不穏な空気を作り出す。
義姉さまの覚悟を決めた声が僕の心を突き刺した。
「結婚するわ……」
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