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誤解を……

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「そうね。そういう事もあったわ……あれもキスになるのね」
「そうだよ! やっと気づいてくれ……」
「ええ、ジェスター様と」
「……はっ!?」
「でも、良かったわ……オリアーナ様とミカエルが恋仲だと思っていたから……婚約の話を聞いた時、心配……」
「ちょっ、ちょっ、ちょっとまってよ!! ジェスターとって何さっ」

 聞き捨てならないんだけど!

「え? さっきミカエルが話してくれたじゃない。ふらついた人を支えた時、頬に唇が触れる時もあるって」
「えっ? ジェスターがふらついたの?」
「ええ。この間の夜会で。ジェスター様にしては珍しいわね」

 義姉さまはウフフと笑う。

 ジェスターが僕の知らないところで積極的にアプローチしていた事を知り(本人は気づかなかったとしても)、もしかして義姉さまは僕を……なんて、不確かな甘い考えは吹っ飛ぶ。

 あの社交界の貴公子、ジェスターがふらつく? ましてや、女性に支えられるなんて事態になるわけない。

 それは間違いなく義姉さまにキスしたんだよっ!!

 ……僕がいないところで本当にあいつは、なにをしてるんだ。

「ミカエル? どうしたの?」

 アプローチされている事にまったく気づかず、屈託なく笑う義姉さまに僕は平静を装い微笑む。

「大丈夫だよ」
「あ、あのね、ミカエル」
「なに?」
「えっと……ね……その……最近、寝られないってトーマスから聞いたんだけど……」
「うん……まぁ」

 寝られないというか、眠れない……なんだけど。
 余計な心配させちゃうし……ね。

「仕事……大変なの?」

 心配そうな顔で僕を見つめる。

 うーん……たしかに仕事は大変だけど、眠れないのは義姉さまが他の男と結婚する夢を見るから……とは言えないな。
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