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夜会にて……
side クラリス 9
しおりを挟むあれから少し時間が流れ、今、私はダンスホールの中庭で花を愛でている。
魔法で温度管理をしているからか、肌寒い季節だというのに春の庭園さながら、ここは花で溢れていた。
とても美しく、素晴らしい中庭で、私の目を楽しませてくれる…………って、ココどこっ!?
そう……早い話、私は、今、迷子である。
広い……広いよ……この中庭!!
アルベルト様に中庭に誘われ「ジェスター様とミカエルを誘いますねー」と2人を探しに行こうした私は腕を掴まれ、アルベルト様に全力で引き止められた。
「あいつらは、俺が誘っておくから!! お前は先に中庭に行ってて!」
「あ、はい。では、よろしくお願いします」
アルベルト様の必死の形相と気迫に押され、私はペコリと頭を下げた。
中庭はアルベルト様が言っていた通り、本当に素敵な場所だった。
月の光が射している光景がまるで絵画を見ているようで……つい、ぼけーとしながら歩いていたら……迷子になったのだ。
ああ、前世だったら携帯で連絡するのにぃ。
便利道具に思いを馳せても、何一つ状況は変わらないので、私は微かに人の声がする方に歩いてみる。
「…………で……す」
後ろの茂みから、ミカエルの声が聞こえた気がして、私は安堵した。
ミカエルは、いつも私を探しに来てくれるもん。
「ミカ…………エ……ル……?」
振り返った先に、たしかにミカエルはいた。
でも、1人じゃなかった。
一緒にいたのは、アルベルト様でもジェスター様でもなく……美しい金髪のご令嬢。
とっさに隠れる私。
薄暗くても、輝く月光で2人の顔ははっきり見えた……
声はよく聞き取れない……こんなところで2人っきりで何してるの?
ドクン、ドクンと嫌な心音が体中に響き渡る。
ミカエルと親しげに話しているのは、オリアーナ・ナザイル侯爵令嬢……
気がつくと、激しい鼓動をなんとかしようと自分の胸を強く押さえつけていた。
オリアーナ様がミカエルの腕をギュッと握り、にっこり笑う。
心臓が、ひときわ大きくドクンッと跳ね上がった。
懸命に何かを話し、顔をぱぁと赤らめたオリアーナ様。
ミカエルは優しく微笑む。そして……
そっと彼女の頬に……
キスをした。
私は心がもぎ取られたのかと思うほどの痛みを感じ、その場にしゃがみ込む……
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