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夜会にて……

side クラリス 1

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 はわぁぁぁ……王宮の夜会ってすごいぃぃ。

 私は高い天井を見上げ、口をぽかんと開けていた。

 社交界デビューして、1ヶ月。
 なんだかんだとパーティーを断っていたら、デビュー後の初パーティーが、絶対参加の大規模夜会となってしまい、只今、少し反省中。

 4月までアルベルト様の婚約者という立場にいる私が、王家主催の夜会を断るなんて言語道断……いや、婚約者じゃなくても断れないけど。

 あーあ、小さいパーティーくらい参加しとけば良かった。

「義姉さまどうしたの?」
「王宮のダンスホールに入ったのは初めてで……驚いちゃった」

 きらびやかな雰囲気に圧倒されながら、私はミカエルにボソッとつぶやく。

 王宮とは別棟のダンスホールは、パーティーの時だけ開放され、ひと言で言えば豪華絢爛ごうかけんらん

 惜しげもなく金や宝石が使われていて、とにかく華やか。でも、下品な派手さはまったくなく、上品に美しく装飾されている。

 このダンスホールを建てた人、センスいいなぁ。

「そっか。義姉さまは夜会、初めてだもんね。このダンスホールは特別だよ。外交にも使うしさ」

 あまりにも私がぽけっとしていたからか、夜会に慣れているミカエルはクスクス笑った。

 なんだかミカエルが大人っぽく見え、バカみたいに大口を開けていた事が急に恥ずかしくなり、視線を外してしまう。

 屋敷からずっと私をエスコートしてくれているミカエルは、我がアルフォント家の象徴色である紺の夜会服がとても似合っていて……すごくかっこいい。ホールに入ってからというもの、周りのご令嬢達はキャアキャアと騒ぎながら、ミカエルに目配せをし、ひっきりなしにアピールしている。

 そりゃ、これだけのイケメンだもん、ご令嬢達はほっとかないよね……今までのパーティーでも、こうやってアピールされていたのかな……

 なぜか私は憂鬱な気分になり、チラリとミカエルを盗み見る。ミカエルは少し照れくさそうな顔をしていて、私のヘッドドレスにそっと触れた。

「……今日もその髪飾り、つけてくれたんだね」

 銀細工の髪飾り……ミカエルがプレゼントしてくれた私の宝物。

「私のお気に入りなのよ!」

 気づいてくれた嬉しさに満面の笑みで答えると、ミカエルも微笑みを返してくれる。

 ……昔から変わらないミカエルの微笑みは、私をいつも安心させてくれた。

 子供の頃から、ずっと一緒だったから、今に始まったことじゃないけど……私の隣りで優しく微笑んでくれるのが、なんだか最近、嬉しい。

 すごくすごく嬉しい。

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