上 下
223 / 298
後日談 プディングを……

3

しおりを挟む

 2時間ほど経ち、気分転換に外の空気を吸いに部屋を出ると、庭師のジョレルに呼び止められる。

「ああ、ミカエル坊っちゃん。中庭のテーブルに空の瓶が3つ置いてありまして……なにか、思い当たる事ありますか?」
「空の瓶?」
「はい。なにか事情があるといけませんので、皆さんにお聞きしてから、片付けようと思いまして」

 その時、周りにふわりと暖かい風が吹き、僕の耳に言葉が届く。

『美味しかったぞい』

 思わず、ぷっと吹き出してしまった。

 なんだ、あの人は食べたのか。
 あの猫は……なるほど、そういう事だったんだな。
 あの人らしいや。

 僕はクスリと笑い、心の中であの人へ返事をする。

 それは良かったです。

「ジョレル、その瓶は片付けておいてくれる?」
「あ、坊っちゃんが知ってましたか」
「うん、僕が置いたんだ。もう用は終わったから」
「かしこまりました」

 ジョレルが軽く頭を下げ、中庭に戻ろうとした時、たまたま廊下に飾られたあき薔薇ばらが僕の視界に入った。

「ねぇ、ジョレル……薔薇ばらの花言葉って知ってる?」
「薔薇……ですか……まぁ、愛……とか美とかですかね?」
「ふぅん……」

 大して目新しい話じゃないな……それくらいなら僕も知ってるし。

 シースアクト様は、なんだか含みを持たせていたけど、髪飾りの7つの薔薇にはどういう意味があったんだろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

【完結】義弟に逆襲されています!

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢ヴァイオレットには、『背が高い』というコンプレックスがある。 その為、パーティではいつも壁の花、二十一歳になるというのに、縁談も来ない。 更には、気になっていた相手を、友人に攫われてしまう…。 そんな時、義弟のミゲルが貴族学院を卒業し、四年ぶりに伯爵家に帰って来た。 四年前と同様に接するヴァイオレットだが、ミゲルは不満な様で…??  異世界恋愛:長めの短編☆ 本編:ヴァイオレット視点 前日譚:ミゲルの話 ※魔法要素無。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...