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バルコニーで……

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「あー、僕、ドリンク、貰ってくるよ」

 ソワソワしている気持ちを落ち着かせる為、一旦、バルコニーから離れ、近くにいた給仕係に声をかける。

 ドリンクを2つ貰い、バルコニーへ戻ると、義姉さまは少しうれいを帯びた目で満月を眺めていた。
 聞いた事ない歌を口ずさんでいて……普段とは違うはかない美しさが僕の胸を貫く。

 見惚れ、その場で立ち尽くしていた僕は我に返り、慌てて周りを見渡した。周囲に男がいない事を確認して、ホッとする。

 今の義姉さまを他の男に見せちゃ、駄目だ。

「はい」

 義姉さまの好きなベリーソーダを笑顔で差し出すと、物憂ものうげだった瞳は明るい色になり、弾んだ声でお礼を言われる。

 美味しそうにコクンと喉を鳴らし、笑いかけてくれた義姉さまが愛らしく、僕の体温は上がりっぱなしで、全く冷静になれない。

 緊張で乾いた喉に、僕はクイッと一気にレモネードを流し込んだ。

「ミカエル、今日は忙しかったでしょ。私の為にありがとう」
「いや……そんな……ことは……」

 真っ直ぐ僕を見るブルーの瞳から、スッと視線をそむけてしまう。

 どうしよう……あんな姿を見てしまったからか、今、僕は、義姉さまに触れたくて触れたくて、我慢できない。

 触れたら、壊れる……義姉さまの傍にいられなくなるかもしれないのに。

 それでも……僕は義姉さまに触れたい……

 義弟おとうとではなく、一人の男として。

 頭の中でシースアクト様の言葉がこだまする。


 ――君達もさ、大丈夫かもよ?―― 


 ドクンッと大きく心臓が震えた。

「どうしたの?」

 黙っている僕を不思議に思ったのか、首を傾げた義姉さまと目が合う。

 再び、ドクンッと心臓が揺れる。

 それは、まるで欲望が動き出す合図のように。

 僕はそっと手を伸ばし、ずっとずっと恋い焦がれていた女性ひとの頬に……


 触れた。
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