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誕生日の約束は……
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しおりを挟む僕はシーメス家で「誕生日」というものをお祝いしてもらったことがなかった。
母は物心ついた時から病気で寝たきりだったし、男爵は僕を無視し続けていたし。
だから、アルフォント家に引き取られ、義姉さまの誕生日を目の当たりにして、驚いた。
そうか、誕生日って、おめでたいものだったんだ……僕は皆に祝福され、嬉しそうな義姉さまを部屋の隅っこで眺めていた。
いつもよりおめかしをしてて、かわいいな。
そんな事をぼんやり考えていたら、僕の視線に気がついたのか、義姉さまは、あっと言うまに駆け寄り、僕の前でお気に入りのスカートをなびかせながら、クルリとまわり、ニコッと笑う。
「ミカエル、どう?」
「うん、かわいい……と思う……あの……義姉さま、えっと……誕生日……おめでとう」
誕生日って、おめでとう、でいいんだよね?
皆、そう言ってるよね?
お祝いした事もされた事もない僕は、ドキドキしながら見よう見まねでお祝いの言葉を口にした。
僕……おかしい事、言ってないよね……?
「ありがとう、ミカエル!」
ぱぁっと表情を明るくした義姉さまは、ギュッと僕を抱きしめる。
「ミカエルの誕生日はね、私が1番にお祝いするからね!」
屈託ない義姉さまの言葉に、祝福どころか、今まで邪魔者として扱われてきた僕は、こういう時どんな顔をしていいのかわからず、戸惑ってしまった。
そして……なんだか急に泣きたくなった。
「どうしたの? 大丈夫? お腹痛い?」
泣きそうな僕に慌てふためき、心配そうに顔を覗き込む義姉さま。
「……目にゴミが入ったみたい……もう、大丈夫」
何かあると、お腹すいた?か、お腹痛い?と、聞く義姉さまに、ついクスクス笑ってしまい、僕の笑い声に安心したのか「そっかー」と義姉さまも一緒にクスクス笑っていた。
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