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仕事で……

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 その後、我が家は菓子業界に参入していき、なかなか好調なすべり出し。

 新作ができると義姉さまが「お茶しない?」と誘ってくれて、僕は義姉さまの部屋に行く。

 今日はショートブレッド。
 
 何種類か用意されていて、形は細長い。
 
 義姉さま曰く、片手で持ち歩きながら、町を散策出来るように……との事で、僕は1本手に取り、一口食べる。

「どう?」
「美味しいよ」
「もう! ミカエルは、美味しいしか言わないわ」
「本当に美味しいし」

 バター感があって、とっても美味しい。
 甘さも塩気もいい具合。
 少し細長い分、一口がさっくり食べられて、いいんじゃないかな?

 でも、ちょっと、物足りない?

「細長くて一口で食べられる量が少ない分、もうちょっと重めにしてもいいかも?」
「なるほど。こっちがね、少しバター多めの配合で作ったの。どうかな?」

 義姉さまは別のショートブレッドを手に取り、僕に渡した。
 僕は口直しの為、紅茶を飲み、一口、食べる。

「うん。こっちの方が食べごたえもあるし、ショートブレッドの重厚さもあって、いいかな。でも……さ、喉は渇くよね。食べ歩くとなると、紅茶も持ち歩かないと」
「そうよねぇぇ。そこが問題なの」

 僕の指摘に「ふむ……」と頷き、眉間にしわを寄せ「どうしようかなぁぁ……紙コップなんてないしなぁ……」と独り言を言い始め、ちゅうを見つめる。

 カミコップ? 何それ? 紙のコップ?

「紙のコップ? 紙で作ったコップに紅茶入れるの? えっ? 無理だよね……えっ? だって紙でしょ?」
「うん……まぁ……そうなんだけどね」

 義姉さまの頭の中にはイメージがあるみたいだけど、なかなか、形にできないことに思いわずらっているみたいだ。

「まぁまぁ、義姉さまも食べてみた?」
「まだなの。でも、他の物の味見もしてて……食べたいんだけどね」

 珍しくお腹いっぱいらしい様子で顔を悔しそうに歪め「1本は多くて……」とつぶやく。

「じゃあ、これ食べる?」

 冗談っぽく、僕の食べかけのショートブレッドを義姉さまの目の前に出した。

 もちろん、冗談……えっ?

「うん、いただくわ」

 僕の手から、ショートブレッドをパクリと食べ……義姉さまは口をもぐもぐ動かし……僕は動きが止まった。
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