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クラリスの心配 〜クラリス視点〜

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 夜風が少し高揚した私の頬を冷ましてくれて、気持ちいい。

 私にしては上出来だと思う(あくまで私にしては)ハンカチを眺めては、完成したのが嬉しくてニマニマしていた。

『M.A』
 ミカエル・アルフォント

 ん、ふふふふ。

 顔が笑ってしまう。

 うん、きれいな色。私のリボンとお揃い。
 ミカエル、喜んでくれるかな?
 
 あ、でも……

 私はお父さまとミカエルの会話を思い出し、一気に気分が下がる。

 そう、お父さまの執務室で聞こえてしまったミカエルの婚約話。

 ミカエルだってお年頃。
 アルフォント家の次期当主だもん。婚約してもおかしくない……ううん、遅いくらいだわ。
 婚約したら、義姉より恋人が大事になるよね……まぁ、当たり前だけど。

 ……当たり前……だけどさ……やっぱり、ちょっと、寂しいな。

 義姉ねえちゃんの下手っぴな刺繡入りのハンカチなんて、いらないかな……

 バルコニーの手すりに肘を付き、さっきまでの上機嫌はどこへ?というくらい、アンニュイな気分になってしまった私の耳に、夜風にのって人の話し声が届く。

 ん?

 風にまぎれてボソボソと聞こえる声は、内容まではわからないものの、男の人の声である事は判別でき、声の感じから、ミカエルとジェスター様だと確信した。

 こんな夜中に何してるのかな?
 わざわざ外で? なんだろ……?

 さっきまで、ミカエルの婚約について考えていたからか、ある事を思いついてしまう。

 そういえば、ジェスター様も婚約者がいないわ。
 ミカエルだって、私が知らなかっただけで婚約の話はたくさん来ているんじゃないかしら……だって、アルフォント家次期当主だよ?
 我が国トップクラスの超超優良物件の2人に婚約者がいないなんて、おかしいよね?

 それに、こんな夜中に2人っきりで外にいるなんて……しかも周りは暗闇なわけで……

 ええ? まさか……え?

 私は自分が導き出した1つの答えに唖然とする。


 ……あの2人……恋仲なの……?
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