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別宅にて……

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「ようこそ、いらっしゃいました」

 義姉さまは皆の顔を見て、にっこり笑うと、リーズルが今にも飛び跳ねそうなほど、弾んだ声で喜々として話す。

「こんな素敵な場所で、明日までクラリス様とご一緒できるなんて嬉しいですわ」

 ローザがいつものように、義姉さまの腕に絡みつき、薔薇の花が咲いたような笑顔を見せる。

「クラリス様、ありがとうございます。一生の思い出にしますわ」

 ジェスターは義姉さまに穏やかな微笑みをむける。

「クラリス、ミカエル、お邪魔するよ」
「皆さん、お疲れでしょう? お一人ずつお部屋をご用意してますから、どうぞ、ゆっくりしてくださいね」

 義姉さまがニコニコと皆に説明をしているのを横で聞き、僕は肩を落とした。

「…………義姉さまは知ってたの?」
「うん」
「なんで、僕に言わなかったの?」
「ジェスター様がね、ミカエルを特別に喜ばせたいから、内緒でって」

 ……義姉さま……ソレ、違うから……

 おかしいと思ったんだよな……あのジェスターが僕と義姉さまの旅行に気がつかないわけがない。なのに珍しく大人しかったから、違和感を覚えつつも、気がついてないんだ。よしっ!……と楽観視していた僕にも問題はあったけどさ。

「クラスでね、休暇の事が話題になったの。別宅の話をしたら、みんなも行きたいって話になって……」

 義姉さまは楽しそうに話しているけど……それね、ジェスターがわざと話題にしたんだよ……

 僕との旅行を邪魔するために!

「……そう」

 いろんな感情が入り乱れ、なんて言っていいのかわからず、僕は言葉少なに返事をする。

 ……さっき、明日までって言ってなかった?
 泊まっていく気満々なのかぁぁ。
 日帰りできるよ? みんな。

「驚いた?」

 義姉さまは悪戯っ子のような顔で僕の目を覗き込む。

「……うん、驚いた」

 ホント、心臓が止まりそうになるほどにね……

 一旦、荷物を置いてこようという話になり、5人で屋敷にむかって歩き始めた。
 義姉さまの両隣はリーズルとローザが占拠し、僕の入る隙間はない。

 はぁぁ……本当なら義姉さまの隣は僕の場所だったはずなのに。

 意気消沈している僕の耳元でジェスターが顔を寄せ、囁いた。

「残念だったな」

 チッ……

 ジェスターをひと睨みし、心の中で舌打ちする。

 ホント、お前は容赦ないな。
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