89 / 298
別宅にて……
4
しおりを挟む
「ようこそ、いらっしゃいました」
義姉さまは皆の顔を見て、にっこり笑うと、リーズルが今にも飛び跳ねそうなほど、弾んだ声で喜々として話す。
「こんな素敵な場所で、明日までクラリス様とご一緒できるなんて嬉しいですわ」
ローザがいつものように、義姉さまの腕に絡みつき、薔薇の花が咲いたような笑顔を見せる。
「クラリス様、ありがとうございます。一生の思い出にしますわ」
ジェスターは義姉さまに穏やかな微笑みをむける。
「クラリス、ミカエル、お邪魔するよ」
「皆さん、お疲れでしょう? お一人ずつお部屋をご用意してますから、どうぞ、ゆっくりしてくださいね」
義姉さまがニコニコと皆に説明をしているのを横で聞き、僕は肩を落とした。
「…………義姉さまは知ってたの?」
「うん」
「なんで、僕に言わなかったの?」
「ジェスター様がね、ミカエルを特別に喜ばせたいから、内緒でって」
……義姉さま……ソレ、違うから……
おかしいと思ったんだよな……あのジェスターが僕と義姉さまの旅行に気がつかないわけがない。なのに珍しく大人しかったから、違和感を覚えつつも、気がついてないんだ。よしっ!……と楽観視していた僕にも問題はあったけどさ。
「クラスでね、休暇の事が話題になったの。別宅の話をしたら、みんなも行きたいって話になって……」
義姉さまは楽しそうに話しているけど……それね、ジェスターがわざと話題にしたんだよ……
僕との旅行を邪魔するために!
「……そう」
いろんな感情が入り乱れ、なんて言っていいのかわからず、僕は言葉少なに返事をする。
……さっき、明日までって言ってなかった?
泊まっていく気満々なのかぁぁ。
日帰りできるよ? みんな。
「驚いた?」
義姉さまは悪戯っ子のような顔で僕の目を覗き込む。
「……うん、驚いた」
ホント、心臓が止まりそうになるほどにね……
一旦、荷物を置いてこようという話になり、5人で屋敷にむかって歩き始めた。
義姉さまの両隣はリーズルとローザが占拠し、僕の入る隙間はない。
はぁぁ……本当なら義姉さまの隣は僕の場所だったはずなのに。
意気消沈している僕の耳元でジェスターが顔を寄せ、囁いた。
「残念だったな」
チッ……
ジェスターをひと睨みし、心の中で舌打ちする。
ホント、お前は容赦ないな。
義姉さまは皆の顔を見て、にっこり笑うと、リーズルが今にも飛び跳ねそうなほど、弾んだ声で喜々として話す。
「こんな素敵な場所で、明日までクラリス様とご一緒できるなんて嬉しいですわ」
ローザがいつものように、義姉さまの腕に絡みつき、薔薇の花が咲いたような笑顔を見せる。
「クラリス様、ありがとうございます。一生の思い出にしますわ」
ジェスターは義姉さまに穏やかな微笑みをむける。
「クラリス、ミカエル、お邪魔するよ」
「皆さん、お疲れでしょう? お一人ずつお部屋をご用意してますから、どうぞ、ゆっくりしてくださいね」
義姉さまがニコニコと皆に説明をしているのを横で聞き、僕は肩を落とした。
「…………義姉さまは知ってたの?」
「うん」
「なんで、僕に言わなかったの?」
「ジェスター様がね、ミカエルを特別に喜ばせたいから、内緒でって」
……義姉さま……ソレ、違うから……
おかしいと思ったんだよな……あのジェスターが僕と義姉さまの旅行に気がつかないわけがない。なのに珍しく大人しかったから、違和感を覚えつつも、気がついてないんだ。よしっ!……と楽観視していた僕にも問題はあったけどさ。
「クラスでね、休暇の事が話題になったの。別宅の話をしたら、みんなも行きたいって話になって……」
義姉さまは楽しそうに話しているけど……それね、ジェスターがわざと話題にしたんだよ……
僕との旅行を邪魔するために!
「……そう」
いろんな感情が入り乱れ、なんて言っていいのかわからず、僕は言葉少なに返事をする。
……さっき、明日までって言ってなかった?
泊まっていく気満々なのかぁぁ。
日帰りできるよ? みんな。
「驚いた?」
義姉さまは悪戯っ子のような顔で僕の目を覗き込む。
「……うん、驚いた」
ホント、心臓が止まりそうになるほどにね……
一旦、荷物を置いてこようという話になり、5人で屋敷にむかって歩き始めた。
義姉さまの両隣はリーズルとローザが占拠し、僕の入る隙間はない。
はぁぁ……本当なら義姉さまの隣は僕の場所だったはずなのに。
意気消沈している僕の耳元でジェスターが顔を寄せ、囁いた。
「残念だったな」
チッ……
ジェスターをひと睨みし、心の中で舌打ちする。
ホント、お前は容赦ないな。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる