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ダンスパートナーは……

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 あれから、リーズル嬢を義姉さまに紹介……する前に僕を無視して、義姉さまにグイグイ挨拶していた。

 えっと……その積極性があれば、僕、いらなくない?
 
 綺麗で所作も上品でおしとやか……僕のリーズル嬢への第一印象は、ほんの数分で大崩壊である。

 義姉さまの事となると、あのパワフルさ……正直……怖い。
 なんか、僕、女性不信になりそう……

「ミカエル! 昨日ね、お友達になったローザ様。ローザ様、私の義弟おとうとのミカエルですわ」

 リーズル嬢の挨拶が終わると、義姉さまは意気揚々と黒髪のご令嬢を僕に紹介した。

 昨日、「友達ができたの!」と嬉しそうに話していて、ご令嬢と聞いて安心していたのだけど……

 紹介されたローザ嬢は、黒髪のお人形さんみたいな、かわいらしいご令嬢だった。

「はじめまして。クラリス様と同じクラスのローザ・ベリルと申します」

 顔を上げ、あでやかに笑ったローザ嬢の目が全く笑ってない事に気づき、僕は戸惑う。

「えっと……ミカエル・アルフォントです」

 ご令嬢をこんな風に思うのは、紳士として恥ずべき事だし、良くないとは思っているけど……なんだか、あの艶やかさが恐ろしい。

 ローザ嬢の小さくかわいい赤い口元が、微かに上がり、僕はゾクッとした。

「存じてますわ。ミカエル様」

 僕の目をまばたきもせずに、見続けるローザ嬢の漆黒の瞳に、ある感情がチラリと覗く。

 敵意。

 そう、初対面なのに、なぜか僕は敵視されているのだ。

 なぜか?
 その理由は、すぐに判明した。

「クラリスさまぁぁ、素敵な義弟君おとうとぎみですわぁ」

 僕に挨拶していた時とは打って変わり、ニコニコの笑顔に鈴を鳴らしたような愛らしい声で、義姉さまの腕にべったり絡まる。

 うらやま……もとい……ちょっとベタベタしすぎじゃないの!
 いくら女性同士だからって!

 僕が口をポカンと開けていると、ローザ嬢は僕を見て、得意気に「フフン」と鼻で笑う。

 はっ!?

 義姉さまは「まぁ、ミカエルをお褒めいただき、ありがとうございます。自慢の義弟おとうとなのですよ」と満面の笑みで会話をしているけど……この状況、異常だよ!?

 ローザ・ベリル嬢……

 たしか、次世代の社交界の花と噂される、才色兼備。

 ベリル家は、代々シトリン家の右腕として活躍する家門だったはず。
 もちろん、ジェスターはローザ嬢の事を以前から知っていたのだろう。

 僕は、この訳のわからない状況に呆然としながらも、ジェスターと目を合わせると、諦めたように肩をすくめていた。

 ジェスター……知ってたな?
 事情を話してよ! 事情を!


 なんで、彼女は僕を敵視してるの!?
 なんで、彼女は義姉さまにべったりなの!?
 なんで、彼女は……恋敵ライバルなのっっ!!


 そう、あの目は僕のよく知る目。


 女性だから安心なんて、僕は浅はかだった。
 同性同士の恋愛だって、世の中、ありえるじゃないか!

 僕とジェスター、そして、事の成り行きを見て、言葉を失っていたアルベルト……3人で視線を合わせ、一斉に特大の溜息をついた。
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