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ダンスパートナーは……

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「私ね、昔から、ペンダントつけるの苦手なの」

 あっけらかんとした声が聞こえたが、胸の鼓動がドキドキと鳴り続け、返事をするどころじゃない。

 僕は視線を逸らし、顔を赤くしながら、狼狽うろたえた。

 ……だって、女性にペンダントをつけてあげるなんて……えっ……ちょっと……義姉さま?

「あれ? ミカエルも苦手? じゃあ……教室についたら、ジェスター様にお願いしようかなぁ」
「だ、だめ!だめ!だめ!だめ!だめぇぇぇぇぇ!!!」

 僕は声を張り上げる。
 出せるだけの声量で叫んだせいか、ゼィゼィと息が荒くなってしまった。

 なにを言い出すんだ、義姉さま!

 僕が急に大きな声を出したからか、振りむき、驚いた顔をする。

 いや、本当にね、なにを言い出すの……義姉さま……

 言いようがない程の疲労感に襲われたが、義姉さまの視線に気がつき、咳払いをした。

「あー、ペンダントは僕がつけてあげるから……これからも、そういう事は僕に言って……くれぐれもアルベルトやジェスターに頼んじゃだめだよ。絶対に」
「そうね。わかったわ。お手間を取らせてはいけないものね」

 義姉さまは無邪気に笑い、したり顔で頷く。

 ちょっと違うけど……まぁ、良し。

「じゃあ、お願い。ミカエル」
「う、うん」

 ペンダントのチェーンの部分を指でつまみ、義姉さまの首に手を回した。
 見ないようにしていても、うなじがチラチラと目に入り、心臓が早鐘を打つ。

 うなじ……色っぽい……やばいな……

 僕の理性の後ろから、欲望がひょっこりと顔を出す。

 抱きしめたい……

 ペンダントをつけ終わっても、理性がぐらりぐらり揺れ動くのを感じ、無意識に腕を伸ばし、ギュッと……

 ガタンッと馬車が揺れ、慌てて腕を引っ込めた。

 従者の「学園に着きました」との呼び掛けが聞こえ、義姉さまは振り返り「ありがとう」と微笑む。

 僕も微笑み返しながら、心底、ホッとする。

 ああ、危ない……
 理性が吹っ飛びそうだった。

 ……に、しても……

「ミカエル! 早く行こ!」と僕の腕を掴む義姉さまを横目で見る。

 あんな状況、他の男となったら、どうするの!!

 もう……鈍感なのは知ってるけど……その……なんていうか……男っていうものをさ、もう少し理解してよ……
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