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魔道士に……

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 パーティー後、改めて僕の魔力量を測ると、義姉さまほどではないものの、極めて高い数値が表示された。

 義父さまは驚きながらも「すごいぞ、ミカエル」と僕の頭を大きな手で撫でてくれる。
 義姉さまも義母さまも嬉しそうで、家族の皆が喜んでくれている事をひしひしと感じ、僕はなんだか誇らしかった。

 義父さま曰く、僕が生まれた時の魔力測定器が壊れていた。もしくは、魔力がない者が製作したまがい物だったのでは……との事。

 僕は何とも言えない複雑な気持ちになる。

 魔力がなかったから、父さまに息子として扱われなかった。
 もし、あの測定器が正常に動いていたら?
 僕を息子として認めてくれた?


 僕を……愛してくれていた?


 大きく息を吐き、目をつむりながら、首を横に振る。

 ……考えるのはよそう。
 もし……なんて。
 魔道士となった僕は、アルフォント家の次期当主として、これから頑張っていくんだ。
 大好きな家族の為……そして、大切な義姉さまの為に。

 皮肉なことに、父さまがあんなに欲しがっていた魔道士の中でも、上級であるAクラス魔道士に僕は認定される。

 急遽、魔道士の勉強もすることになり、僕は余計な事を考える暇もないくらい忙しくなった。

 この国では、魔法が発現すると魔道士協会から先生が派遣され、みっちり勉強をしなくてはならない。
 魔法とは? から始まり、魔法の歴史、魔法の法律、魔法の禁忌、魔法の原理……

 僕はもともと魔力がないと思っていたから、魔法についての心構えもなく、覚えることもたくさんあり、多忙を極めた1ヶ月をすごしたが、魔道士協会から派遣されたジルコ先生の授業は面白くて、僕は毎日、楽しく勉強をしていた。


 ある日の授業で魔法の法律について、教えてもらった時の事。

「この国は、魔法をむやみに使うことを禁じています。魔法がなくても生活できますからね」
「先生。では、魔道士は何の為にいるのでしょう?」
「そうですね。基本的には国の為、王家の為でしょうか? 自由に魔法を使えるのは、王家の方と国王様が許可した王宮魔道士長を筆頭に数名。あとは、国王様の許可を得た時、魔法の鍛錬時、人命にかかわる時、治療魔法のみです。ただし、有事の際は魔道士は戦わねばなりません。なので、いざという時の為、鍛錬は怠ってはいけませんよ?」
「はい。あの……1回だけ、魔法を使いたいのですが……」

 僕はジルコ先生におずおずと尋ねると、先生はメガネを右手で押し上げ、僕に問いかける。

「ふむ……何をしたいのですか?」
「あの…………」

 僕は、どうしても魔法でやりたいことがあった。
 運がいい事に、僕は水魔法が得意らしい。

 ジルコ先生は僕の話を聞いて、何度か頷くと、にっこり笑う。

「いいですよ。では、その時間は魔法の鍛錬という事にしておきましょう。実際、コントロールも必要ですし。良い勉強になると思います」
「ありがとうございます!」

 認めてもらえた事が嬉しくて、元気よくお礼を伝えると、先生は頬を緩ませた。

「ちゃんと成功するまで、頑張って練習しなくてはね。本当にあなた達姉弟は仲が良いですね」

 たぶん、ジルコ先生に他意はないのだと思うけれど、ついつい僕は赤くなってしまう。
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