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対面 ―たいめん― side クラリス

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「ザラ様、ありがとうございます。本当に素敵です! 嬉しいです!」

 お礼を伝える声も自然に弾み、笑みがこぼれた私と目が合ったザラ様が優しげに目を微かに細めた…………気がした。

 気のせいだったのかもしれない。

 無感情、無表情で魔力制御装置の説明をテキパキし、魔力と馴染むまで執務室で1時間ほど待機するよう言いながら、素っ気なくデスクに戻っていくザラ様。

「少しでも異変があったら声を掛けてください」

 山のように積み上がっている書類に再び手を伸ばすと、忙しそうに目を通し始めた。

 うん、やっぱり気のせいだ。

 私は大人しく椅子に座ったまま、先ほど受けた魔力制御装置の説明を脳内で反復する。

 装置を装着後はBクラス魔道士ほどに魔力は落ちるが、いざという時は人助けもできるし、治療魔法も使える。ただし、魔法は治癒魔法と危険が迫った時しか基本使ってはならない。魔力制御装置を外せるのはザラ様のみ。

 細かい注意事項も頭に叩き込むが、1年も勉強していた私にとって(ほぼザラ様教の布教だったけど)特に目新しい内容でもなく、すぐに手持ち無沙汰ぶさたになってしまった。

 …………
 …………
 …………
 …………ヒマだ。

 何もすることがなく、ただ座っているだけって(しかも近くにお偉方えらがたがいて!)結構な拷問だ。

 本でも持ってくれば良かったかなぁ……

 時計をじぃぃっと見つめるが、全然針が進まない。

 こういう時、前世だったらスマホやゲーム……せめて漫画で時間が潰せるのになぁ……いや、いくら前世でも偉い人の前でゲームや漫画はさすがに無理か。

 ああ、漫画読みたい、ゲームしたい、カップ麺食べたぁぁぁい!!

 前世で好きだったものに思いを馳せる。

 この世界も悪くないけど、スマホやゲームの記憶がある私にはちょっと退屈。私はこれでも立派なゲーマーだったんだからね!!

 そう言えば……

 私は前世を思い出し、クスリと笑った。

 お兄ちゃん達に最後におねだりしたの、流行りの乙女ゲームだったよね。
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