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記憶 ―きおく― side クラリス
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しおりを挟む「アルベルト様にも声かけなきゃ」
物思いに耽っている場合じゃないな。今は紅葉狩りの話を進めなきゃね。いつものメンバー、我が国の王子アルベルト様にも……あれ?
私がアルベルト様の名前を上げた瞬間、2人の動きが止まり、緊張感が漂う。喋ったらいけないような雰囲気に戸惑いながら私も黙った。
私、なんか変な事言ったかな?
上目遣いで2人の事をチラチラ見ていると、ミカエルとジェスター様がお互い目で合図を送り合っている。結論が出たのか、ジェスター様が咳払いを1回して言葉を発した。
「……クラリスとアルベルトの婚約が内定したと小耳に挟んだんだけど」
「へっ?」
……
……
……
「!!!!」
忘れてた!!!!
スッカリ、サッパリ、シッカリ、スッポリ、
わ、す、れ、て、たっ!
あっと声が漏れ、テーブルにバタンと突っ伏す私。
はしたなくてもお許しを……こんな大事な事を忘れていた自分が怖い……怖すぎる。昨日の事忘れて、前世の事を思い出している場合じゃない!!
「……後で考えようって思いながら……昨夜、寝ちゃったの……ちゃんと考えようとは思ってたのよ……」
私はポツリポツリと言い訳を……いや、説明をする。
本当に本当。ちゃんとね、アルベルト様の事もね、考えようと……アルベルト様はこの婚約をどう思っているのかな……
「義姉さま? 大丈夫?」
動かなくなった私を心配したミカエルの声が頭上からする。
「クラリス、大丈夫か?」
ジェスター様も優しい口調で声をかけてくれた。忙しいのにわざわざお見舞いに来てくれて、元気カラーの花束を選んでくれたジェスター様……
近くにあったチョコレートにモゾモゾと手を伸ばし、口に放り込んだ。口の中いっぱいに広がる甘さが私の気持ちを落ち着かせる。
よし! 糖分補給完了。
「大丈夫よ!」
明るく元気よく返事をした私に、ミカエルが言い辛そうに口を開く。
「……義姉さまはさ……婚約の事……どう思ってるの?」
あー、だよね。うーん……でも……きっと、この婚約は……
私の考えを2人に話そうとした時、控えていたセリナに他のメイドが耳打ちをしている姿が目に入った。
「お話し中、失礼いたします。クラリス様、アルベルト王子様がいらっしゃいました」
セリナの言葉に3人が顔を見合わせたのは言うまでもない。
まさに、噂をすれば影がさす。
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