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見舞 ―ミマイ―
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「義姉さま、良かったね。シトリン家の御用達の店の贈り物なんて、ジェスターの恋人しか本来は貰えないのに、友人の義姉さまにもなんて、ジェスターは優しいね」
「ほんとにね。ジェスター様は優しいですわ」
ミカエルがこれ幸いと追い打ちをかけ、僕はこっそり溜息をつきながら否定をする。
「いや、違……」
「本当にシトリン家はすごいよなぁ。愛する女性の為の御用達のお店があるのだからぁ」
僕の否定の言葉を事もなげに遮り、クラリスをチラリと見ながらにっこりと僕に微笑んだ。
……ミカエルも本当に厄介だ。
この義姉弟は仲が良く、クラリスはミカエルが大好きで……義姉としてミカエルがかわいくてかわいくて仕方ないみたいだ。同じ年齢だけど。
そこが、クラリスに男として意識して欲しいミカエルの切ないところだろうが、その分、義弟という立場を利用して、しっかり、きっちり、みっちり、僕の邪魔をしてくる。
「なんなら、ミカエルにもお店、紹介しようか? アルフォント公爵について仕事してるなら、ご令嬢と会う機会も多いだろ? そういえば、ミカエルとお近づきになりたいって頼まれていたっけな。ナザイル侯爵のご令嬢やネストニーネ伯爵のご令嬢……それから」
僕はふふっと笑い、ミカエルに好意をよせているご令嬢の名前を何人かあげた。
公爵家次期当主というハイスペックな肩書に加え、穏やかな性格……なおかつ、優しげな瞳の美少年であるミカエルがモテないわけがない。
ミカエルは慌てて僕を止め、きょとんとしているクラリスの様子をチラチラと窺う。
「……それをいうなら、ジェスターだって……」
反撃にでるつもりなのか、クラリスの前で僕の噂話を披露しようとしたが、口を噤み、あれ?と不思議そうな顔をした。
僕はニヤリと笑う。
「ああ、僕? 僕はミカエルほど、もてないよ」
不服そうに顔を歪め、キッと僕の目を見るミカエル。そのアイスブルーの瞳は、嘘つけ!とありありと僕を責めていた。
僕に関する噂話なんて、世間に出る前に潰してるに決まってるじゃないか。ミカエルもまだまだ甘いな。
そんな僕達のやり取りをニコニコ聞いていたクラリスは「男性達の恋話を堪能させていただきましたっ」とご機嫌で……恋話だと認識はできるのに、なんで中心が自分だと気がつかないのか……クラリスの鈍感さは謎である。
「ほんとにね。ジェスター様は優しいですわ」
ミカエルがこれ幸いと追い打ちをかけ、僕はこっそり溜息をつきながら否定をする。
「いや、違……」
「本当にシトリン家はすごいよなぁ。愛する女性の為の御用達のお店があるのだからぁ」
僕の否定の言葉を事もなげに遮り、クラリスをチラリと見ながらにっこりと僕に微笑んだ。
……ミカエルも本当に厄介だ。
この義姉弟は仲が良く、クラリスはミカエルが大好きで……義姉としてミカエルがかわいくてかわいくて仕方ないみたいだ。同じ年齢だけど。
そこが、クラリスに男として意識して欲しいミカエルの切ないところだろうが、その分、義弟という立場を利用して、しっかり、きっちり、みっちり、僕の邪魔をしてくる。
「なんなら、ミカエルにもお店、紹介しようか? アルフォント公爵について仕事してるなら、ご令嬢と会う機会も多いだろ? そういえば、ミカエルとお近づきになりたいって頼まれていたっけな。ナザイル侯爵のご令嬢やネストニーネ伯爵のご令嬢……それから」
僕はふふっと笑い、ミカエルに好意をよせているご令嬢の名前を何人かあげた。
公爵家次期当主というハイスペックな肩書に加え、穏やかな性格……なおかつ、優しげな瞳の美少年であるミカエルがモテないわけがない。
ミカエルは慌てて僕を止め、きょとんとしているクラリスの様子をチラチラと窺う。
「……それをいうなら、ジェスターだって……」
反撃にでるつもりなのか、クラリスの前で僕の噂話を披露しようとしたが、口を噤み、あれ?と不思議そうな顔をした。
僕はニヤリと笑う。
「ああ、僕? 僕はミカエルほど、もてないよ」
不服そうに顔を歪め、キッと僕の目を見るミカエル。そのアイスブルーの瞳は、嘘つけ!とありありと僕を責めていた。
僕に関する噂話なんて、世間に出る前に潰してるに決まってるじゃないか。ミカエルもまだまだ甘いな。
そんな僕達のやり取りをニコニコ聞いていたクラリスは「男性達の恋話を堪能させていただきましたっ」とご機嫌で……恋話だと認識はできるのに、なんで中心が自分だと気がつかないのか……クラリスの鈍感さは謎である。
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