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見舞 ―ミマイ―
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結局、国王から婚約取消の言質が取れなかった事に、今更ながらジワリと悔しさが広がる。だが、あの国王の事、何度、異を唱えてものらりくらりと屁理屈でかわされるだろう。あの狸おやじめ。
まぁ、いつまでもあの国王に構っているのは得策ではないだろうな。
僕は机に広がっていた書類を片付けながら、思考を巡らせた。
仕事を一段落させ、ずっと気になっていたクラリスの様子を窺うべく、ペンを取る。
クラリスの義弟であり、僕の親友であり、恋敵でもある……複雑な立場のミカエルに手紙を書いた。
差し支えなければ、見舞いに行きたいと。
クラリスの状況を恋敵に聞くのは気に入らないが、義弟に聞くのが1番正確で早い。
ミカエル・アルフォント。
アイスブルーの瞳が印象的な柔和な顔つきの美少年。初めてあった時、その柔らかい雰囲気と穏やかな笑顔に驚いたものだ。
僕やクラリスと同じ歳の彼は、シーメス男爵の長男として生まれたが、実母の他界、父親の再婚、異母弟の誕生により疎まれ、居場所がなくなった。その現状を見かねた伯母であるアルフォント公爵夫人がアルフォント家に養子に迎え、今に至ったらしい。
性格、容姿もさることながら、ビジネスの才もあり、我が国の経済を担うアルフォント家次期当主として、類稀な商才を発揮している。
本来なら、親友の彼にクラリスとの仲を取り持ってもらえるはずなのだが……ああ、本当に僕の恋は一筋縄ではいかないな。
溜息をつきながら、新たな書類のチェックを始めると微かに室内の空気が変わり、僕は手を止めた。
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