推し活、始めました。

桜乃

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出会い

月子さん 4

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「わかってますよ。貸しますって、それぐらい」
「おー、綺良、借りろ! 借りろ! 月子は貯めてるから100万ぐらいなんてことないぞ」

 私の返事に茶々を入れてきた社長をじろっと睨む。

「本当なら、社長が何とかしてあげるべきなんですからね! 社長がナンパしてきた子なんですから。だいたい仕事が忙しすぎて、お金を使う時間がないんですっ!」
「いやはや、うちは奥さんが財布の紐を握ってるからなぁ」
「もう!!」

 社長……奥さんの尻に敷かれているからな。しょうがない。会社で貸すと書類とかいろいろ面倒だし。

「……えっと……使い道とか、聞かないんですか?」
「興味ありませんから」

 ああ、そう言えば、使い道を聞くの忘れてた。
 でも、いいの。推し貯金は潤沢ですもの。100万くらい無条件でお貸ししますわ。むふふふふ。

 私は推しの為にお金が使える事が嬉しくて、顔がニヤけそうになるのを堪え、無表情を保つ。

「綺良くんは間違いなく売れます。私が保証します。なので100万なんて数年で返してもらえます。もし、あなたが逃げたとしても、それは私の責任ですから。後悔しません」

 ええ、ええ、後悔しません! お布施、ですからね、お布施。これで綺良くんがアイドル活動に専念できるなら、ファンとしてこんな嬉しい事はない。

 あ、私、もしかして綺良くんの第一号ファンじゃない?

「トップアイドル請負うけおい敏腕びんわんクール女史のお墨付きがでたな。綺良、これで大丈夫だぞ。大船に乗ったつもりで、ガンガン稼いでくれ」
「トップアイドル請負うけおい敏腕びんわんクール女史?」
「この業界での月子のあだ名。ま、おいおいわかるよ、いてっ」

 おちゃらけながら話す社長の足を思いっきり踏みつけてやった。
 
 社長も余計な事を! でも、私の腕にかけて、綺良くんを世に送り出すからね!

「はぁ……でも、やはりお借りするなら、使い道をお伝えしたいです。あの……妹が美大進学を望んでいて……今のうちから先生について習わないといけないんですけど……お金が……」

 ポツリポツリと綺良くんが話すお金の使い道を聞き、私は更に彼が大好きになり、必ず、彼をトップアイドルにする事を心に誓う。



 予想通り、あれよあれよと芸能界を上り詰め、100万なんてすぐに返してもらえた。

 さすが私の推し。やっぱりすごいっ。さいっこう!!
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