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「さぁ、おいで。僕の花嫁」

 エリナはその場で立ち尽くしていたが、ヴァイオスの無惨な姿に発狂し泣き叫ぶ。

 エリナのほおにレナードの右手が飛んだ。

 頬は赤く腫れたが、痛みは何も感じない。

「僕以外の男の為に、君の涙を流してはいけないよ」

 レナードは、血溜まりに倒れている動かなくなったヴァイオスのからだを蹴飛ばし、満面の笑みで優しく諭す。

「……やめて」

 ヴァイオスが物のように扱われているのを目の当たりにしたエリナが、弱々しく声を上げると、再度、頬をバシッと叩かれた。

「んん? なんだって?」

 たのしそうに笑う漆黒くろい瞳がエリナを見下ろす。

「ヴァイ……」

 ガタガタと怯えながらもヴァイオスを見て、もう一度手を伸ばしたが、レナードにグイッと腕を引っ張られ、強引な口づけをされてしまう。

 ヴァイオスの名を呼ぶ事も触れる事も叶わず、口の自由を奪われたまま、エリナはヴァイオスを見つめていた。

 ヴァイオス様……

「エリナ、君を綺麗に磨かなくちゃね。いつまでも、他の男の血を顔につけたままだと、僕、妬いちゃうからさ」

 声に乗せることができない愛する人の名をつぶやき、口を動かし続けているエリナは壊れた人形のようであった。

 ハハッと笑ったレナードは、エリナを抱きかかえ、満足そうな顔をして部屋を出た。
 
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