優しいおしごと。

鈴木トモヒロ

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第11話

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4月になり、私は小学校に入学した。

ピカピカの赤のランドセルを背負い、黄色い帽子をかぶって学校に行く。

入学式は母に連れて行ってもらったが、次の日からは私1人で登校した。

1人で外出するのは、そんなになかったので、ワクワクとドキドキが同じくらいあった。

この赤いランドセル。
おばあちゃんが買ってくれた。

日曜日にデパートに連れて行ってもらい、ランドセルが販売されているコーナーに向かった。

家を出るとき「お前が気に入ったものを買ったらいい。気に入ったものが1番似合うさ」と祖父が声をかけてくれた。

あの時、あまり分からなかったけど時が経ってから祖父の優しさを感じれるようになった。

(ありがとう、おじいちゃん)

さて、話は戻り、私はランドセルを見つめていた。

お店には「黒」と「赤」の2種類だった。

男子は黒、女子は赤と決まっていた。

今は様々な色のランドセルを自由に使えるみたいだけど、私は赤のランドセルが好きだった。

沢山の赤のランドセル。
私はどれにしていいか、分からなかった。

「えっと...えっと...」
それが精一杯の言葉だった。

見かねた祖母が
「ランドセル、背負ってみようか?使いやすいモノがいいかもね」と、1つランドセルを背負わせてくれた。

「少し重いかも...」

違うランドセルを背負う。

「さっきよりいいけど...」

そんな感じで、一通りのランドセルを背負ってみた。

一つだけ、背負い心地が良いモノがあった。

(もしかしたら、コレがいいのかもしれない)

ただ、知らない販売員のお姉さんが見つめる中、話をするのが恥ずかしくて自分の意見を言えない私がいた。

そんな時
「あら、このランドセル!可愛いんじゃない?」

祖母が声を発した。

私が気になっていたランドセルだった。

「これにする」
私は一言。

気に入ったのもあるけど、祖母が「可愛い」と言ったランドセルが欲しかった。

すぐにランドセルの購入手続きとなった。

祖母がお金を支払い、晴れてこの赤いランドセルは私のものになった。

(このランドセル、私のなんだ!)
嬉しくて仕方がなかった。

ただ、その日にランドセルを持って帰るのは難しそうだったので、後日家に届く郵送配達をしてもらうことになったのだ。


そして、2日後にランドセルが家に届いた。

私はずっとランドセルを家で背負ってはしゃいでいた。

ジャンプしたり、駆け回ったり...
嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

小学校に入学すること。

ちょっと大人になった気がした。

もっと大きくなって、沢山祖母のお手伝いをしたい。

そのために、小学校でがんばるぞ!

そう思った。

次の日も、ワクワクと希望を胸に、大好きなランドセルを背負って、私は小学校に登校する!
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