上 下
34 / 66

34幼馴染がぶっ壊れなんだが?

しおりを挟む
「で、この女の子は一体何なのかしら、アル?」 

「ク、クリス、そんな怖い顔するなよ。俺も知らん」 

「いやアル様、この自称スライムの女の子は以前からアル様を知っているそぶりでしたよ」 

余計なこと覚えてるな。先日、リーゼに爆裂魔法でぶっ飛ばされた時のリーゼのいっちゃった顔を思い出して恐怖する。 

俺はスライムが美少女に進化して仲間となったことでクリスとリーゼに迫られていた。 

いや、どうもスライム少女の正体は女神らしい。だが、そんなこと信じてもらえるとは思えないし、女神は俺のことを前から知っているような口ぶり。だが、俺にはさっぱり記憶にない。 

それに前から愛し合っていたとか地雷のような発言。 

クリスがキッと俺とスライムを睨むと。 

「幼馴染で彼女の私というものがありながら、いつの間にか義妹なんてこさえて、その上、スライムを美少女にするとか、一体メインヒロインは誰だと思っているのよ!」 

「クリス、だから侯爵令嬢ともあろう者が、そんなに自分の心の気持ち丸出しにしないこと覚えようね」 

イェスタさんは紅茶を飲みながら、俺達の修羅場を見物していた。意外と酷い人だ。 

「あ、あの……」 

「何だよ。スライム野郎?」 

「だから、クリス、侯爵令嬢にあるまじき言葉は慎むこと覚えようね」 

養父イェスタのクリスへの突っ込みはなかなか鋭い。俺もそう思う。もっとも、俺が言ったら、血の雨が降りそうだが。 

「えと、何なの? スライム?」 

どうもスライムは感情に乏しい。先日の白い空間で会った女神はスライム美少女とそっくりだが、どうも少し違うようだ。 

「わ、私、名前が欲しいです。スライム野郎はいやです」 

「スライム野郎で十分よ」 

「クリスさん、流石にそれは可哀想じゃないですか?」 

「うるせー。ちんちくりんエルフ」 

「だから、クリスは侯爵令嬢にあるまじき発言慎もうね」 

クリスがもうブチギレて、激おこぷんぷん丸だ。 

「クリス、そうは言わないで、名前くらい、つけてやろう。それに俺と、このスライムはそんな仲じゃない。そもそも、この子、スライムなんだよ。何もできないだろう」 

「あ、あの……」 

「どうしたの? スライム?」 

「私、擬人化したので、生殖機能ありますので、ちゃんとアル様のお相手もできますよ」 

スライム美少女がぽっと頬を赤らめて言う。 

「アルー!!! テメエ、何、二人で乳繰りあってやがった!!」 

「クリス、どうどう。そんなはしたない言葉はダメだよ。侯爵令嬢として、というか女の子としてダメなこと覚えようね」 

相変わらず、イェスタさんの突っ込みが冴える。俺が言ったら、魔法ぶちかまされそうだが。 

「クリス、スライムが初めて擬人化したのは、この間の三騎士と戦った後なんだ。だから、決して、俺はこのスライムにやましいことはしていない。誓って、言える」 

俺は正直に事実のみを言った。実際、そうなんだ。このスライムが擬人化したのはつい先日のことなんだ。やましいことなんかしていない。 

「まあ、とりあえず名前をつけてあげよう。なんか候補あるか?」 

「はい! リーゼ、リ○ルがいいと思います!」 

「ダメ! それ、ダメ!!」 

「なんでですか? アル様? スライムって言ったら?」 

「だから、そんな有名な方の尊名のスライムがエロいこと言ったらどうなる?」 

「あ! なるほど」 

そうなのだ。このスライム、擬人化したとたん、生殖機能ありますって…… 

ヤバい、嬉しい悲鳴が出そうだ。 

「まあそうね。ビッチでいいんじゃないの、ビッチで」 

「クリス、だから女の子がそんな言葉使っちゃダメなこと覚えようね」 

なんか、イェスタさんのクリスへの突っ込みが侯爵令嬢としてじゃなくて、ただの女の子へのものへと変わっているんだが。 

「じゃ、ライムじゃどうですか?」 

「もうそれでいいか?」 

「スライム、ライムでいいか?」 

「は、はい。私はライム……」 

それにしても、このスライム可愛いな。クリスやリーゼとも違う良さがある。 

ヤバい。クリスとリーゼとで悩んでたけど、また候補増えたな。 

そんな、クリスとリーゼに心を読まれたら、袋叩き必須のことを思っていると。 

「アルお坊ちゃん、――た、大変です!」 

エーリヒが血相を変えてやってきた。 

「どうしたのだ。エーリヒ?」 

何なのだ? 

「お、王女殿下がぁ!!」 

「王女殿下が?」 

王女殿下なんて俺に一体どんな関係あるのだ? 

「王女殿下がアル坊ちゃんと結婚すると言って嫁いできました!」 

「はっ?」 

どういう話だ? 

「———アル」 

「な、何? クリス」 

「いっぺん、死んでみるかぁ!!!!!」 

「違う、俺ほんと知らん。頼む、信じてくれ!」 

俺はガクガクブルブルと生まれたての子鹿のようになった。 

クリス、怖ぇ—— 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】苦しく身を焦がす思いの果て

猫石
恋愛
アルフレッド王太子殿下の正妃として3年。 私達は政略結婚という垣根を越え、仲睦まじく暮らしてきたつもりだった。 しかし彼は王太子であるがため、側妃が迎え入れられることになった。 愛しているのは私だけ。 そう言ってくださる殿下の愛を疑ったことはない。 けれど、私の心は……。 ★作者の息抜き作品です。 ★ゆる・ふわ設定ですので気楽にお読みください。 ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様にも公開しています。

生まれた時から「お前が悪い」と家族から虐待されていた少女は聖女でした。【強火ざまぁ】☆本編完結☆

ラララキヲ
ファンタジー
<番外編/更新準備中> ★変更前Title[聖女にはなれません。何故なら既に心が壊れているからです。【強火ざまぁ】]    ───  ビャクロー侯爵家の三女【エー】は今年“聖女選定の儀”を受ける。  その為にエーは母や姉たちから外へ出る準備をされていた。  エーは家族から嫌われていた。  何故ならエーが生まれた所為で母はこの家の跡取りの男児を産めなくなったから。  だからエーは嫌われていた。  エーが生まれてきたことが悪いのだから仕方がない。家族を壊したエーを愛する理由がなかった。  しかしそんなエーでも聖女選定の儀には出さなければならない。嫌々ながらも仕方なく母たちは出掛ける準備をしていた。  今日が自分たちの人生の転機になるとも知らずに。     ─── 〔※キツ目の“ざまぁ”を求める人が多いようなのでキツ目の“ざまぁ”を書いてみました。私が書けるのはこの程度かな〜(;^∀^)〕 〔※“強火ざまぁ”の為に書いた話なので「罪に罰が釣り合わない」みたいな話はお門違いです〕 〔※作中出てくる[王太子]は進行役であって主人公ではありません※〕 〔★Title変更理由>>>『なれません』ではおかしいよなぁ……と思ったので(; ˊ∀ˋ )〕 ◇テンプレドアマットヒロイン ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇『ざまぁ』に現実的なものを求める人にも合わないと思います。 ◇なろう&ミッドナイトノベルズにもそれぞれの傾向にあった形で上げてます。 <※注意※『ざまぁ』に現実的なものを求める人や、『罪に釣り合う罰を』と考える人には、私の作品は合わないと思います。> ※☆HOTランキング女性向け【1位】!☆ファンタジーランキング【1位】!に入りました!ありがとうございます!!😆🙏

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫野真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

処理中です...