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冒険者ギルド間新人模擬戦1
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今日も冒険者ギルドで教習を受けている。しかし、新しい教習生の参加にクリスは戸惑っていた。何故なら、クリスはその男に見覚えがあった。確か皇太子カールと一緒にいた冒険者。多分、義妹ベアトリスの信奉者だ。私は少し、身構えた。
しかし、そんな事よりもっと大きな問題に直面する事になった。それはシモン先生が持ち込んだ案件だ。
「お前たち三人に頼みがあるんだ」
教習を終えた後、シモン先生がやってきて、突然お願いされた。私は思わず。
「嫌です」
即答だった。人の頼みはたいてい嫌な事なのだ。なにより主任の先生のシモンさんが頭を下げたのだ。これ、絶対、困る事をお願いするパターンだろ?
「即答なのか? 事情を聞いてはくれないのか?」
「絶対、嫌な事を頼むんでしょ?」
「いや、そんな事はないぞ。お前たちにも益があるぞ」
私は少し思案した。嫌な事でも、益の方が大きければ聞くぐらいの価値はあるか?
「1週間後の冒険者ギルド間新人模擬戦に参加して欲しいんだ!」
「それに私達に何の利益があるんですか?」
「名誉が!」
「いりません」
即答である。名誉? 食べられないし、役にも立たない。
「いや、それだけじゃないんだ。授業料も1か月無料にするし、お前ら二人の剣士検定も早く受ける事ができる仕組みなんだ」
無料というとても心地がいい言葉が出て来て、急に興味がわいた。
「その内容なら検討してもいいので、もう少し詳しく教えてください」
シモン先生は詳細を説明してくれた。この冒険者ギルドはシモン先生達三人で3年前に設立したギルドで未だ歴史が浅い。その為、このギルドに所属する冒険者は未だ少なく、経営はかなり苦しい。今の収入源は国からの助成金と新人冒険者育成の為の教習だった。
それに冒険者ギルドの助成金は現在国家予算の削減対象で、シモンさん達ギルドへの助成金は、冒険者ギルド間新人模擬戦 にかかっている。このケルンには冒険者ギルドが多数あり、国は予算削減の目的で、新しいギルドを潰しにかかってきているらしい。
新しいギルドの新人模擬戦での成績により、助成金が打ち切られる。助成金を受けるには新人模擬戦で1位になる必要があるとの事だった。
「俺達三人は孤児だったところを師匠に育てられて冒険者になった。師匠の夢は自分のギルドを作る事だったんだ。そしてたくさん孤児達を一人前の冒険者に育てあげる事。師匠は俺達三人しか救えなかった。師匠はAクラスの冒険者だったが、それ程裕福ではなかったんだ。俺達を育てる為、財産の大半を使った。そして、師匠は3年前に流行り病で死んでしまった。俺達は師匠の夢を代わりに叶えたいんだ。……」
そう言って、真剣に私を見るシモン先生。
「お断りします」
「えっ?」
何故かアンが驚いた顔と声をあげる。
「クリスさん、いくら何でもこんな話聞いて、断るなんて…… 」
「でも私には関係ない話よ?」
「……」
「……」
何故かアンとシモン先生が沈黙する。私なんか変な事言った?
「私、何か変な事言ったかな?」
私はちょっと心配になり聞いてみた。何しろ私は前世では魔物や魔族の討伐にあけくれ、現世では元侯爵令嬢だ。当然世間知らずだ。
「いや、別に普通だよ」
アルだ。良かった、私、普通だ!
「普通じゃありません。このサイコ幼馴染達め!」
ええ~! 私は狼狽した。アルは普通と言ってくれたけど、アンが異を唱えている。しかも私達をサイコさん扱いだ。いや、私は多少の誹謗中傷は何も感じないけど、サイコちゃん扱いだけは嫌なのだ。普通に体裁を気にする。それに、アルは普通じゃないよね。アンは普通だけど......
「アン、わかった、良くはわからないけど、私の事サイコちゃん扱いは止めて。傷つくから」
「それ位いいのに」
流石アルだ。サイコさん扱いにも平気らしい。逆にアルと同レベルと思われると怖い。
「クリス、今更サイコちゃん扱いされたからって、何で気にするの? そんなの皆知ってる事じゃないかな?」
お前には言われたくねーよ。とにかく、私はサイコちゃん扱いが嫌だったので、承諾したが、アンは何故かとても喜んだ。何処に嬉しい要素あるんだ?
「1週間後の冒険者ギルド間新人模擬戦は、模擬試合の対戦相手としてライバルチームの新人が少なくとも冒険者クラスAランク相当の元騎士が参加するらしい。ルール上は問題ないが、限りなくズルい方法だ。元騎士にはおそらく多額の報酬を支払っているのだろう。勝てば助成金が支払われる訳だから、元は取れる」
私はそれを聞いて、シモン先生に聞いた。
「どうしてうちのギルドは元騎士の新人冒険者を雇わなかったんですか?」
「いや、そんな卑怯な真似はできん」
「......」
頭、固いな......
「頼む、模擬試合で、対戦者をコテンパンにしてくれ!
あんな卑怯な奴らには負けたくない、師匠の夢の為に頼む!」
う~ん、師匠の夢、どうでも良くね?
しかし、流れ的引き受けざるを得ない様だ。アンが事実上了承してしまった。私も無理矢理断ってアンからサイコちゃん扱いは御免こうむる。どこがサイコちゃんだったのかはよくわからないけど、アンが言うなら多分そうだな。アンはかなり常識人だ。
だが、引き受けてから、しまったと思った。目立つ! ヤバい!
冒険者ギルド間新人模擬戦には近隣諸領のギルド関係者、近隣都市のギルドマスター達、見込みのありそうな新人を探す貴族や、ただ退屈凌ぎの見せ物感覚で見物に来るその他の貴族や金持ち、娯楽に飢えた一般市民、そして一番厄介なのが、この国の第一王子まで見に来るというのだ。なんでも、第一王子は冒険者ギルドへの助成金に前向きで、冒険者ギルドとしては貴賓客中の貴賓なのだ。しかし、そこで勝利すればそれだけ目立つという事になる。
シモン先生は説明してくれたが、私は苦い顔になった。目立ってしまう。目立つと私が暗黒の大魔導士である事がばれるかもしれない。伝説は色々伝わっていて、今だと私にしかできない魔法がたくさんある。そんなの見られたら、悪役令嬢から悪役『暗黒の大魔導士』に昇格だ。確実に討伐対象。この国からも帝国からも命を狙われる存在になる。
それに加えてシモン先生は更に困った事を言い出した。
「メンバーは4人なんだ」
「もう一人は誰なんですか?」
「お前たち誰か参加してくれるクラスメイトいないか?」
聞かないでよ。だいたい想像できるでしょ?
「あ、あの、誰か私達のパーティに臨時でいいから参加してくれる人いませんか?」
「「「「「「「「命が惜しいから嫌でーす」」」」」」」」
即答だった。
「どさくさに紛れて敵と一緒に魔法攻撃されそうで、嫌です」
追い打ちまで来た......
「俺が参加してやろうか?」
と困っている私達とシモン先生に声をかける男が現れた。今日教習に参加したばかりのアウグスブルク帝国のAクラス冒険者エドヴァルド。戦力としては魅力あるが、絶対私絡みだよね?
「そうか、君が参加してくれるか! ありがたい!」
シモン先生が大喜びする。が、あれ? 元騎士がズルいなら現役他国のAクラス冒険者はもっとずるいんじゃ? 彼はアウクスブルク帝国の冒険者ギルドに登録しているが、アクイレイア王国の冒険者ギルドには登録していない。その為、この冒険者ギルドの教習を受けて、この国のギルドに登録しようとしている。あまり他国まで遠征する冒険者などいないし、入出国はアウクスブルク帝国の冒険者ギルドの身分証で十分なので、彼のような存在は元騎士くずれより数が少ないと思う。
私はしばらく、あいた口が塞がらなかった。シモン先生、ズルいんじゃないですか?
「あ、あの、元騎士くずれがズルいんなら、現役他国Aクラス冒険者はもっとズルいんじゃないですか?」
私は言ってしまった。だってめちゃ気になる! しかし、
「あ、あわ、はう!」
アンに口を押えられてしまった。
「大丈夫だから! クリスは空気読めないから、何も言わないで!」
え? なんで、なんでこれズルくないの? シモン先生言っている事が矛盾してるよ? それにアン、私が空気読めないって、酷くなくない? 私わかってる子だよ。空気位読めるわよ。アルと一緒にしないで!
「これでおそらく4戦3勝だ」
シモン先生が興奮して叫ぶ。ぷぷっ、4戦3勝の明細がわかった。アルだ。アルは一番強いけど、私に危害が及ぶ時以外は多分役に立たない。それに対戦者の顔が怖いとやっぱり駄目なような気がする。アルの方を見ると、アルは悔しそうにしている。
めっちゃいい顔してますね! アルさん! 私は後ろを向いて、笑いを押し殺す事が大変だった。ああ、幼馴染の悔しがる顔、とっても大好きです。ご飯お代り三杯いけますよ!
「クリス......凄い笑顔だね......」
「いや、私は、ただ!」
ただ、アルが悔しがるのが嬉しいのだ。ちっ、アルに笑いを堪えているのを感ずかれた。
「……君達頼むぞ!」
シモン先生が私の笑顔(ゲス顔)にドン引きしたものの、私達にこの冒険者ギルドの未来を預けた。
しかし、そんな事よりもっと大きな問題に直面する事になった。それはシモン先生が持ち込んだ案件だ。
「お前たち三人に頼みがあるんだ」
教習を終えた後、シモン先生がやってきて、突然お願いされた。私は思わず。
「嫌です」
即答だった。人の頼みはたいてい嫌な事なのだ。なにより主任の先生のシモンさんが頭を下げたのだ。これ、絶対、困る事をお願いするパターンだろ?
「即答なのか? 事情を聞いてはくれないのか?」
「絶対、嫌な事を頼むんでしょ?」
「いや、そんな事はないぞ。お前たちにも益があるぞ」
私は少し思案した。嫌な事でも、益の方が大きければ聞くぐらいの価値はあるか?
「1週間後の冒険者ギルド間新人模擬戦に参加して欲しいんだ!」
「それに私達に何の利益があるんですか?」
「名誉が!」
「いりません」
即答である。名誉? 食べられないし、役にも立たない。
「いや、それだけじゃないんだ。授業料も1か月無料にするし、お前ら二人の剣士検定も早く受ける事ができる仕組みなんだ」
無料というとても心地がいい言葉が出て来て、急に興味がわいた。
「その内容なら検討してもいいので、もう少し詳しく教えてください」
シモン先生は詳細を説明してくれた。この冒険者ギルドはシモン先生達三人で3年前に設立したギルドで未だ歴史が浅い。その為、このギルドに所属する冒険者は未だ少なく、経営はかなり苦しい。今の収入源は国からの助成金と新人冒険者育成の為の教習だった。
それに冒険者ギルドの助成金は現在国家予算の削減対象で、シモンさん達ギルドへの助成金は、冒険者ギルド間新人模擬戦 にかかっている。このケルンには冒険者ギルドが多数あり、国は予算削減の目的で、新しいギルドを潰しにかかってきているらしい。
新しいギルドの新人模擬戦での成績により、助成金が打ち切られる。助成金を受けるには新人模擬戦で1位になる必要があるとの事だった。
「俺達三人は孤児だったところを師匠に育てられて冒険者になった。師匠の夢は自分のギルドを作る事だったんだ。そしてたくさん孤児達を一人前の冒険者に育てあげる事。師匠は俺達三人しか救えなかった。師匠はAクラスの冒険者だったが、それ程裕福ではなかったんだ。俺達を育てる為、財産の大半を使った。そして、師匠は3年前に流行り病で死んでしまった。俺達は師匠の夢を代わりに叶えたいんだ。……」
そう言って、真剣に私を見るシモン先生。
「お断りします」
「えっ?」
何故かアンが驚いた顔と声をあげる。
「クリスさん、いくら何でもこんな話聞いて、断るなんて…… 」
「でも私には関係ない話よ?」
「……」
「……」
何故かアンとシモン先生が沈黙する。私なんか変な事言った?
「私、何か変な事言ったかな?」
私はちょっと心配になり聞いてみた。何しろ私は前世では魔物や魔族の討伐にあけくれ、現世では元侯爵令嬢だ。当然世間知らずだ。
「いや、別に普通だよ」
アルだ。良かった、私、普通だ!
「普通じゃありません。このサイコ幼馴染達め!」
ええ~! 私は狼狽した。アルは普通と言ってくれたけど、アンが異を唱えている。しかも私達をサイコさん扱いだ。いや、私は多少の誹謗中傷は何も感じないけど、サイコちゃん扱いだけは嫌なのだ。普通に体裁を気にする。それに、アルは普通じゃないよね。アンは普通だけど......
「アン、わかった、良くはわからないけど、私の事サイコちゃん扱いは止めて。傷つくから」
「それ位いいのに」
流石アルだ。サイコさん扱いにも平気らしい。逆にアルと同レベルと思われると怖い。
「クリス、今更サイコちゃん扱いされたからって、何で気にするの? そんなの皆知ってる事じゃないかな?」
お前には言われたくねーよ。とにかく、私はサイコちゃん扱いが嫌だったので、承諾したが、アンは何故かとても喜んだ。何処に嬉しい要素あるんだ?
「1週間後の冒険者ギルド間新人模擬戦は、模擬試合の対戦相手としてライバルチームの新人が少なくとも冒険者クラスAランク相当の元騎士が参加するらしい。ルール上は問題ないが、限りなくズルい方法だ。元騎士にはおそらく多額の報酬を支払っているのだろう。勝てば助成金が支払われる訳だから、元は取れる」
私はそれを聞いて、シモン先生に聞いた。
「どうしてうちのギルドは元騎士の新人冒険者を雇わなかったんですか?」
「いや、そんな卑怯な真似はできん」
「......」
頭、固いな......
「頼む、模擬試合で、対戦者をコテンパンにしてくれ!
あんな卑怯な奴らには負けたくない、師匠の夢の為に頼む!」
う~ん、師匠の夢、どうでも良くね?
しかし、流れ的引き受けざるを得ない様だ。アンが事実上了承してしまった。私も無理矢理断ってアンからサイコちゃん扱いは御免こうむる。どこがサイコちゃんだったのかはよくわからないけど、アンが言うなら多分そうだな。アンはかなり常識人だ。
だが、引き受けてから、しまったと思った。目立つ! ヤバい!
冒険者ギルド間新人模擬戦には近隣諸領のギルド関係者、近隣都市のギルドマスター達、見込みのありそうな新人を探す貴族や、ただ退屈凌ぎの見せ物感覚で見物に来るその他の貴族や金持ち、娯楽に飢えた一般市民、そして一番厄介なのが、この国の第一王子まで見に来るというのだ。なんでも、第一王子は冒険者ギルドへの助成金に前向きで、冒険者ギルドとしては貴賓客中の貴賓なのだ。しかし、そこで勝利すればそれだけ目立つという事になる。
シモン先生は説明してくれたが、私は苦い顔になった。目立ってしまう。目立つと私が暗黒の大魔導士である事がばれるかもしれない。伝説は色々伝わっていて、今だと私にしかできない魔法がたくさんある。そんなの見られたら、悪役令嬢から悪役『暗黒の大魔導士』に昇格だ。確実に討伐対象。この国からも帝国からも命を狙われる存在になる。
それに加えてシモン先生は更に困った事を言い出した。
「メンバーは4人なんだ」
「もう一人は誰なんですか?」
「お前たち誰か参加してくれるクラスメイトいないか?」
聞かないでよ。だいたい想像できるでしょ?
「あ、あの、誰か私達のパーティに臨時でいいから参加してくれる人いませんか?」
「「「「「「「「命が惜しいから嫌でーす」」」」」」」」
即答だった。
「どさくさに紛れて敵と一緒に魔法攻撃されそうで、嫌です」
追い打ちまで来た......
「俺が参加してやろうか?」
と困っている私達とシモン先生に声をかける男が現れた。今日教習に参加したばかりのアウグスブルク帝国のAクラス冒険者エドヴァルド。戦力としては魅力あるが、絶対私絡みだよね?
「そうか、君が参加してくれるか! ありがたい!」
シモン先生が大喜びする。が、あれ? 元騎士がズルいなら現役他国のAクラス冒険者はもっとずるいんじゃ? 彼はアウクスブルク帝国の冒険者ギルドに登録しているが、アクイレイア王国の冒険者ギルドには登録していない。その為、この冒険者ギルドの教習を受けて、この国のギルドに登録しようとしている。あまり他国まで遠征する冒険者などいないし、入出国はアウクスブルク帝国の冒険者ギルドの身分証で十分なので、彼のような存在は元騎士くずれより数が少ないと思う。
私はしばらく、あいた口が塞がらなかった。シモン先生、ズルいんじゃないですか?
「あ、あの、元騎士くずれがズルいんなら、現役他国Aクラス冒険者はもっとズルいんじゃないですか?」
私は言ってしまった。だってめちゃ気になる! しかし、
「あ、あわ、はう!」
アンに口を押えられてしまった。
「大丈夫だから! クリスは空気読めないから、何も言わないで!」
え? なんで、なんでこれズルくないの? シモン先生言っている事が矛盾してるよ? それにアン、私が空気読めないって、酷くなくない? 私わかってる子だよ。空気位読めるわよ。アルと一緒にしないで!
「これでおそらく4戦3勝だ」
シモン先生が興奮して叫ぶ。ぷぷっ、4戦3勝の明細がわかった。アルだ。アルは一番強いけど、私に危害が及ぶ時以外は多分役に立たない。それに対戦者の顔が怖いとやっぱり駄目なような気がする。アルの方を見ると、アルは悔しそうにしている。
めっちゃいい顔してますね! アルさん! 私は後ろを向いて、笑いを押し殺す事が大変だった。ああ、幼馴染の悔しがる顔、とっても大好きです。ご飯お代り三杯いけますよ!
「クリス......凄い笑顔だね......」
「いや、私は、ただ!」
ただ、アルが悔しがるのが嬉しいのだ。ちっ、アルに笑いを堪えているのを感ずかれた。
「……君達頼むぞ!」
シモン先生が私の笑顔(ゲス顔)にドン引きしたものの、私達にこの冒険者ギルドの未来を預けた。
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