悪役令嬢が最強!伝説の魔法使いが悪役令嬢に転生。いろいろやらかして追放されて贖罪をしながらのんびり。この悪役令嬢あまり懲りてないみたい。

島風

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追放されるようなので懺悔をしたいと思います。

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 私は悔いていた。自分の行いを恥じていた。嫉妬に狂い、婚約者の慕う彼の想い人を傷つけた。それだけで無かった。母が亡くなり父が再婚した際にも私は継母に散々辛くあたった。父の愛情が自身から薄れ、新しい継母や連れ子の異母妹に移っていくにつれて、私の嫉妬と憎悪は増していった。家の使用人にも冷たくあたった。 

 

 牢の中で枷をされた足首を見て、私は何度目か分からない憎しみの言葉を吐いた。他者を憎んだものではない、自身への憎しみ。自身が一番自身の罪を理解した。 

 

 今更遅い、私が気が付いたのは、前世の記憶を思い出したからだ......たくさんの過ち、何が正しく、何が誤りなのか? それは以前の私には判らなかった。牢に入れられて、すぐに高熱と激しい頭痛の中、前世の記憶が蘇ってきた。前世の16年の記憶は自身の過ちを全て見通した。過ちが盲目であった自分にあったと気づいた時は茫然自失となった。 

 
 

 父は新しい継母を溺愛した。そして、異母妹も、そして私への愛情はどんどん薄れていった。父の母への記憶と共に......そして異母妹に心を奪われた私の婚約者からも。 

 世の中の全ての人が自分を愛してくれない。幸せを与えてくれない。幸せは与えてもらう物ではないのに...... 

 
 

 私の前世は伝説の魔導士だった。僅か16歳にして、大陸最強の魔導士。私の前世の生が16歳で潰えたのは、当時の魔王を打倒したものの力尽き、他の魔族に殺された為だ。私は正義の為、命をかけて戦った。その私の記憶が蘇った時には、自身がどれだけ醜い存在なのかを自覚させられた。 

  

 みんな継母と異母妹が悪い、そう思い込んで、勝手に憎んで恨んで、何も気が付かずにひたすら復讐に狂った行いは見苦しいとしか形容できない。 

 
 

 二人にだけでは無い、沢山の人を傷付けた。その愚かさに気が付かず......自身が悪い? そんな事は一度も思わなかった。強い意志で、自身では当然の事として、あたかも正義は自身にあるとすら思い。人を傷つけ続けた。 

 

 
「……ごめんなさい」 

 

 

 思わず、嗚咽する。自身の愚かさを、醜さを、どれだけ謝罪しても許される筈がない最低の事を......それを私は何度も行った。一つ一つを思い起こす度、自身の罪に身を裂かれる。 

 

 いっそ、この首を落とし、全ての罪を償わせて欲しい。実際、裁判で私を糾弾する婚約者は断頭台を示唆していた。今から思えば、それは当然の事なのだ。しかし、それに見苦しく抵抗した、醜悪な私。 
 

私を救ったのは異母妹だった。彼女の慈愛は美しく、優しいものだった。 

 

 

「お義姉さまを助けてあげてくださいまし」 
 

 

 何処までも優しい異母妹は私でさえも慈しむ。今は異母妹への感謝と自身への憎悪しかない。今からでも償いをさせて欲しい。心からそう思った。 

 

 

「ごめん、なさい……」 

 

 

 私には心から寄り添う友も知人も恋人も得る事ができなかった。どんなに身分が高くとも、それは個人の力で獲得するもの。一方で、義母妹はそんな私をよそに、私が持たないものを全てを手に入れていった。何もかも全てさらけ出して頼れる親友と、頼まれた訳でもなく、彼女のために行動する友人達。そして、彼女を愛する私の婚約者。 

 

 婚約者以外にも、幼少期に貴族に買われ、心を失くした奴隷、天才が故に孤独により感情を無くした天才魔導士や才が無いと父に捨てられたものの義母妹に救われ真の才能に目覚めた剣聖等々、私には見向きもしなかった人々が異母妹に惹かれていく。 

どうしたら異母妹のように愛されるのか? どんなに努力をしても全てが裏目に出た私。 

目の前で全ての人が異母妹に惹かれていく光景に耐えきれなくなった時、私は壊れていった。 

 

 

 咎人である私が貴族のままでいられる訳がない。私への判決は国外追放だった。そんな私に待っているのは惨めな極貧の上の死だろう。 

 
 

「ごめ、なさ……っい」 

 
 

 あの時、どれだけ無様に無実を主張したのか? 今となっては何と無様な事か? 今更誰にも届かぬ謝罪など何の役にも立たない。何より既に私は罰を受け、皆満足しているのだろう。今更誰も私の謝罪等聞きたくある筈がない。 

 
 

「ごめん、なさい……ごめ、なさい……っ」 

 

 
 ぎゅっと目頭に力を入れる。泣いているせいで鼻声となり、まるで甘えている様な声だった。こんな自分を見せたいわけじゃなかった。下唇をぎゅっと噛む。嗚咽が、唇の隙間から溢れていく。ただ、ただ愛されたくて、行った悪行。 

 

 どれだけ泣いて、謝っても届かぬ想い。罪を償うには? 罪は償えない。その機会はとっくに過ぎていたのだ。追放された他国で、人の為に働く。それ位しか私には残された道はなかった。 

 

 


 私が住んでいたアウクスブルク帝国 は、大陸でも1、2を争う大国だ。国の始まりは、「勇者」と「聖女」が当時、世界を恐怖に陥れていた魔王を滅ぼし、勇者と聖女が結ばれ二人の子孫が、王家を創ったと言われている。 

……だが、それは嘘だ。 

 

 

 真相は今では暗黒の大魔導士と蔑まれ、恐怖されている虚数魔法使い、前世の私が魔王を倒したのだ。しかし、仲間であった筈の勇者、聖女、賢者、剣聖。彼らはボロボロで瀕死の私を見捨てて魔王城から去った。聖女の回復魔法を受ければ再び立ち上がり、帰還する事は可能だった筈だ。そして、私の従者であり、虚数戦士であった幼馴染も......彼は私を庇い続け、やはり瀕死の重傷を負った。その彼にも治癒魔法を施されず、死んだ。 

 

 私に待っていたのは、自らの王である魔王を滅ぼした魔王を慕う魔族達による...... 凌辱、暴力、拷問。死よりも辛いこと。殴られ、蹴られ、踏みつけられ、這って逃げようとしても、瀕死の私には抗う力は残っていなかった。何度も犯され、地獄のような苦しみを味わい。地べたを這いつくばって悲鳴を上げながら泣き叫ぶ私を、魔族達が囲んで大笑いしていて……。そして、一方的になぶられ、いたぶられ、たっぷりと時間をかけて殺されていった…… 

 
 

 その魔族達は、敬愛する魔王を殺した私が憎かったのだろう。一方的になぶり、いたぶり、凌辱し、行為とともに魔王への愛を綴った。 

 

 

「愛する魔王をお前は殺した」 

「誰も愛していなかったお前が殺した」 

「誰にも愛されなかったお前が殺した」 

 

 

 その綴られる言葉は、遅効性の毒のように、少しずつ少しずつ、私に染み込んでいった。愛を持たない者は殺されても仕方がないと...... 

 

 
 どのくらい時がたったのだろうか? もはや、何もかもが狂いだした私は、ようやく理解した。誰からも愛されなかったから、誰も愛さなかったから、私は見放され、殺されるのだ...... と。 

 
 

「お前は何故殺されるのだ?」 

「誰からも愛されなかったから......」 

「お前は何故誰からも愛されなかったのだ?」
 
「私が誰も愛さなかったから...... 」 

 

 女として死ぬしかない辱めを受け、人としての尊厳を全て踏みにじられた私はようやく理解した。魔族は満足したのか......そして、私を殺した。 
 

 



 追放されて異国の地で釈放された私に待っていたのは、幼馴染のアルからの言葉。かつて私が罵り、罵倒し、傷つけ、私を恨んでいる筈の幼馴染。私を愛してくれたのに...... 

彼は追放される私を嘲笑い、罵るだろう......そう思っていたが、彼の口から出た言葉は、 

「僕は君を今も想っている。想うだけならいいだろう? だから一緒にいよう。この国で君を守らせてくれないか?」 
 

「・・・・・・嬉しい」  

 
 幼馴染を見上げながら、私はふわりと笑った。  
そして、濡れ続けた目も拭わずに言葉を綴った。  

 
「私の罪はこれでもう消えましたよね?」  
「「「えっ……。あ……あー…………えぇ? ……なにぃ~この人……?」」」 

 

 

真面目そうで実はちょっとおかしい元侯爵令嬢の物語が始まりました。
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