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第17章 魂の浄化

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【ギルドの魔獣の小屋】

「ミストラルも、だいぶ立派になったな」

「もう少しで、大人の竜だね」

「小屋が窮屈そうだな」

「食い過ぎで、太ったんじゃねーのか?」

「バジルじゃないんだから」

「ガォー」

「良し、俺がもう少し広くしてやる」

〈タイムが扉を開けると、ミストラルは1人で外に出て大人しくしている。小屋を拡張するバジルの工具の音が響く〉

【ギルド・レ・シルフィード】

「今日の依頼は、丘の上の花畑で収穫の警護です」

「了解した」

【丘の上の花畑】

「やあ、アッサムさん。ご苦労様です」

「安心して刈り入れが出来ます」

「魔物が怖くて…」

「任せておけ」

港が見える。

良い景色だ。

「魔物さえ居なければ、こんなに良い所は無いな、ミューズ」

「ヒヒーン」

ミューズが花の香りを嗅いでいる。

花を楽しむかのように、動こうとしない。

「その馬、女の子?」

「ああ、そうだ」

「女の子は、皆んな花が好きなのよ」

馬も人も同じか。

「花畑に白い馬なんて、画家が喜びそうだね」

「私は、余計だがな」

「あはは」

この時季この辺りには、巨大化したキラービーなどの虫の魔物が多い。

花を踏み荒らさないように、外に誘い出して戦った。

毒の粉や眠り粉を撒き散らす蝶なども居る。

ギルドを出る時ミントに持たされた解毒剤が重宝した。

「終わったよ」

「おかげで助かりました」

「これは、お礼です」

「好きなだけ持ってってよ」

好きなだけと言われても…

「遠慮しないで。はい、どうぞ」

花を貰った…

バジルなら、花でも食べるかも知れんが…


【丘の上の修道院】

〈門の前をウロウロするアッサム〉

どうしたものか…

「帰ろうか、ミューズ」

「ブハッ」

〈門が開く。一人の修道女が出て来る。花を後ろ手に隠すアッサム〉

「あら~どうして?」

彼女はニコニコしてそう言った。

「いや…その…」

「何を隠しているの?」

〈少しいたずらっぽく笑うローズマリー〉

「いや…あの…」

〈ローズマリーは、ゲームでも楽しむかのように、よけるアッサムの後ろに回り込んだ〉

「まあ、可愛いお花」

〈ぶっきらぼうに手を伸ばして、花を差し出すアッサム〉

「これを私に?まあステキ」

〈微笑むローズマリー〉

「ありがとう」

「どこかへ行くのか?」

「アルマンドの教会に、イースターエッグを届けに行くのよ」

「エスコートする」

〈アッサムは、ローズマリーの手を取り抱き抱えると、ミューズに乗せた〉

「ヒヒーン」

ミューズは、ローズマリーを乗せている時は、慎重に足る。

丘を下り、アルマンドへと向かう。

「風が気持ち良いわ」

ローズマリーの長い髪が風に揺れて、私の頬に触れる。

抱き締めたい。

今確かに君は、私の腕の中に居る。

確かにここに居るのに…

愛する人…

私の魂は、永遠に君だけを愛し続けるだろう。

(私の心臓の鼓動が、貴方に聞こえそうだわ)

(どんどん好きになってゆく…どうしたら良いの?好きに…なってはいけないの、いけないのに…)

(この気持ち…自分でも、止める事が出来ないの)

そして、町の教会にイースターエッグを届けると、私は再び彼女をミューズに乗せ、修道院まで送り届けた。


【修道院の門の前】

〈アッサムはローズマリーの手を取り、抱き抱えてミューズから降ろす〉

【修道院の中】

〈外の2人の様子を見ている院長と他の修道女〉

「まあ、何て事でしょう」

「時々、ああして馬に乗せてもらって帰って来るんです」

「これからは、ローズマリーを一人で外に出してはいけません」

「はい、院長様」

【ギルド・レ・シルフィード】

「だあー、今日から肉を食えねえのか…」

「明後日には食べられるわよ」

今日は、復活祭の前の金曜日だ。

今日から肉を食べてはいけないのだが、日曜日には、広場で盛大な食事会が有る。

2日間の辛抱なのだが、バジルは、今にも死にそうな声を出している。

土曜日の夜、ミサに行ったが、ローズマリーは居なかった。

そして日曜日の昼食は、広場で食事会だ。

【城下町の広場】

前菜からデザートまで、沢山の料理が並べられている。

「食うぞ、食うぞ、食って食って、食いまくるぞー」

「バジルったら、貴方、年中復活祭みたいに食べてるじゃない」

「2日も肉を食えなかったんだぞ」

「さーあ、呑むわよー」

「コリアンダーも、何かちゅーと呑んでるじゃねえか」

「僕も、呑むよ」

「私も、食べて呑みますよ」

「僕は、もう呑んでるよ~」

オレガノとセージは、もう呑んでいる。

【修道院】

〈刺繍をする修道女達〉

(また戦争に行くのかしら?それとも竜?)

「ローズマリー。手が止まってますよ」

「申し訳ありません、院長様」

「この頃、良くボーッとしてる時が有りますね。いけませんよ。しっかり奉仕しなさい」

「はい、院長様」

(いけない…またあの人の事を考えていたわ…アッサム…一日中貴方の事ばかり考えていて、何も手につかないの)


【ローズマリーの部屋】

〈ローズマリーが、手紙を書いている〉

(私は、神に仕える身。恋愛も結婚も許されないの…彼の事は…忘れなければ…)

(恋をしてはいけないのよ…もう手紙を書くのはこれで最後)

【アッサムの屋敷】

〈手紙を読むアッサム〉

いったいどうしたと言うのだ。

突然何を言っている。

これが最後の手紙だと?

【コリアンダーのサロン】

「それで?」

「もう2度と、私の目の前に現れないで下さいと」

「それは、ツインレイのパニックね。ツインレイの女の子は、激しい感情が出てパニックになるのよ」

この前会った時は、あんなに楽しそうにしていたのに。

「ツインレイに巡り会うと、自分でもびっくりするような、自分の知らなかった自分を見せられたりするのよ」

だからって、もう2度と現れるなと?

「今迄押さえ込んでいた自分が出たりして、恥ずかしくなって、こんなの私じゃない!ってなるのね」

コリアンダーは、師匠のエルダーの所で読んだ本に書いて有った事を教えてくれた。

「相手に物凄い暴言を吐いたりする人も居るのよ」

そして…2人が愛し合った事も、巡り会った事実さえ自分の中から消す。

相手の存在を消してしまいたくなるのだと言う。

「ああ…彼女魂の浄化に入ったみたい」

「え?」

魂の浄化?

「今また来てる」

「また生き霊か?」

「うん…あ、何か言ってる。彼女怖いのよ。貴方を失うのが」

(拒絶、そして魂の浄化…あの本に書いて有った通りだわ)

それからしばらくして、私は、手のひらや足に痛みを感じるようになった。

その事をコリアンダーに話すと、師匠の所へ連れて行かれた。

【エルダーの家】

魂の浄化…それは、2人で一緒にしているようだった。

「ああ、手から杭が出てるね…左は彼女のだね…右は貴方のよ」

そう言うと杭を取ってくれた。

私には見えないが…

取ってもらうと痛みはおさまるが、またすぐに痛む。

「次から次へと出て来るね」

手のひらが、焼けるように痛い。

「浄化が終わるまで、2人は、離されるよ」


【アッサムの屋敷】

離れて居ろと言うのか?

まだ一度も愛の言葉さえ伝えていないのに。

愛していると、たった一言…その一言が許されず…

2度と現れるなと、君は拒絶した。

この胸の痛みは、どうだ!

それはまるで、魂の半分をもぎ取られたようだ。

今でもまだ、エネルギーは感じられる。

魂は確かに愛し合っているのに、それでも君は拒絶するのか?!

時々君の声が聞こえる気がする。

そんな時は、大概生き霊が来ている。

【修道院】

〈祭壇の前1人祈るローズマリー〉

(どうして恋をしてしまうのかしら?私は、ずっと恋なんて知らないで生きて来たのに)

(私達修道女は、恋も結婚もしない。それが当たり前だと思っていたの…貴方に会うまでは)

(でも、貴方を知った日から、中間世や過去世を思い出すようになって…ダメ!)

(やめてアッサム。抱き締めないで)

(また魂が溶け合っている…私の体から、光の柱が宇宙に向かって放射されるのを感じるわ…これがツインレイの統合)

「でも…ダメ」

(神様。私からあの人を離して下さい)

(忘れないといけないの。あの人を愛してはいけないのよ)

(今生の私達は、生きて結ばれる事は無いのだわ…そして貴方は…貴方はいつか誰かと結婚するのかしら…?)

「あ…涙?」

(涙が勝手に溢れて来るの…もう、貴方が誰を愛そうと構わないと思ったのに…)

(それは…嘘ね)

【アッサムの屋敷】

君と巡り会ってしまった。

もう私は、こんなにも深く誰かを愛する事なんて出来ない。

君以外の誰かを愛するなんて…

魂の半分をもぎ取られて、それでも生きろと言うのか?!


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