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第6章 玄と勝負

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【川】

待ち合わせの場所に行くと、生徒達が集まっていた。

水車小屋が有って、小さな川が流れているけど…

ここじゃなさそうだな。

「来なったか」

2年の野上卓だ。

「もっと奥に清流が有るけ、行ってみゅうか」

【森の中】

うわ~

良い所だなあ。

さっきより綺麗な小川だ。

板を渡しただけのような橋を渡る。

〈散策を楽しむ響を睨みつける玄〉

「けっ」

「どがで、そがに、目の敵ぃすっだいや」

「おまいにゃ、わからんけ、ええ!」

「香を、取られるでないかともって、きょうてえ(怖い)だらあが」

【清流】

おおっ、凄いぞ!

清流だ。

しかし、柿崎は相変わらず険しい顔してるな。

もっと楽しそうに出来ないのかね。

「さあ、釣り大会を始めますよ」

いつの間にか釣り大会になってるぞ。

釣りとなると、この人。

やっぱり魚路先生だね。

「勝敗は釣った魚の総重量で決まります。皆んな頑張って下さい」

さて、どの辺りで釣るかな…

「あんまり遠くへ行かんようにな」

「響。頑張って優勝するのよ!」

何故か璃子がはりきってるぞ。

さて、仕掛けはどうするかな?

良し、毛針にするか。

中々釣れないな…

柿崎も荻野も釣れてるみたいだぞ。

頑張らねば。

「響。夕方迄にたくさん釣らないと」

あ、やっと釣れた。

アマゴだ。


夕方になった。

釣り大会終了だ。

「それでは、結果を発表します。第3位、荻野寛太君」

「はい」

「第2位、鐘城響君」

「はい」

うーむ、2位かぁ…

次は負けないぞぉ。

「第1位、柿崎玄くん」

「はい」

結構悔しいなあ。

そして、1位から3位までの参加者には、魚路先生お手製のルアーや毛針をプレゼントされた。

これで大きなイワナを狙うか。

「はい皆んなー、会場移動するわよー」

【柿崎の家】

今度は、大食い大会だ。

丁度お腹が空いてるし、負けないからな。

「握り飯えっと(沢山)こしらえといたけ、好いただけ食いないな」

柿崎のお母さんの唄子さんと、妹の麻莉奈、浅田未来がおにぎりを運んで来てくれた。

うわ~

ワカメのおにぎりだ。

うちでは普通にワカメって言うけど、板ワカメね。

こっちのは、さい味噌のおにぎり(金山寺味噌)

関金の大伯母のさい味噌は、茄子の漬物が入ってて、美味しかったよな。

このお米は、柿崎の家の田んぼのお米だそうだ。

「美味しい!」

「味噌汁もえっと有るけなあ」

蟹の味噌汁だあ。

お婆ちゃんがよく作ってくれたよな…

「どがで泣くだいな?」

「祖母の味噌汁思い出して…」

「死んなったか?」

「生きてるよ。もうすぐ85になるけど元気」

「生きとんなるなら、泣きゃあでもええがな」


「はーい、大食い大会終了ー!」

ここを仕切るのは、浅田未来。

「皆んなちゃんと数えてたよね」

参加者は、3年生男子3人と、一本木先生と僕だ。

1人ずつ女子がついて数えてくれていた。

僕のは、朝風香が数えてくれてた。

「野上君12コ」

「荻野君15コ」

「柿崎君18コ」

「一本木先生20コ」

「鐘城先生21コ」

「優勝は、鐘城響先生です」

皆んなは、一本木先生が優勝すると思っていたらしい。

これだから「体育の先生ですよね」って言われちゃうんだよな。

「響先生って、こんなに食べる人なのね」

「こりゃ、お嫁さんになる人は、大変だわ」

「えっ?」

「香、赤くなってるよ」

大食い大会優勝したので、柿崎の家の田んぼで作った美味しいお米を頂いた。

ついでにコッコちゃんの小屋に敷く寝藁も頂いたぞ。

「わーい。美味しいお米炊いて、コッコちゃんの卵かけて食べよう」

「ウフフ」

あ、また香が笑った。

「あー、でもうち、お竃(くど)さんだった。どうしよう…?」

【柿崎の家の玄関】

〈翌朝〉

「この米、先生ねに(家に)持ってったげていや」


【響の宿舎】

柿崎がお米を届けてくれた。

「ありがとな」

「お母ちゃんが、持ってったげぇ、って言いなるけ」

「そうか。ああ、でも、お竃(くど)さんの使い方わからないから、釜買うまで食べられないか」

「木で炊きゃあええだがな」

そして、柿崎が薪を割ってくれた。

良ーし、薪の割り方も覚えたぞ。

【台所】

「こがにーすっだあじぇ」

ご飯の炊き方を教えてくれた。

湯気が出始めたら火を強めて、たくさん湯気が出て来たら中火。

湯気が透明になって来た。

最後は、一気に火力を強めるて余分な水を飛ばす。

45分で炊き上がり。

その後、5分~10分蒸らしたら食べられるぞ。

うわ~

美味しそうだな。

丁度コッコちゃんの卵が2個有ったぞ。

「柿崎も食べて行けよ」

「俺は、ええけ」

「遠慮するなって」

【部屋】

そして、2人で食べた。

卵かけご飯。

「美味しい」

「美味い」

あ、柿崎が笑った。

【ドラッグストア】

今日は、日曜日。

隣町迄シロのご飯を買いに来た。

「待ってー」

何故か、璃子も付いて来てる。

「シロちゃんのオヤツ」

明日からまた学校だ。

柿崎と少しは仲良く出来るかな?

【響の宿舎】

「シロ。ご飯だぞ」

「ニャニャー」

「オヤツも有るわよー」

「オヤツは、あとあと。ご飯食べなくなるからな」

「ウニャ、ウニャ、ウマ%☆♪ンニャ、ンニャ」

【校長宅の囲炉裏】

「え?手紙?浩一郎って、私のお爺ちゃん。あなた達のひいお爺ちゃんの名前よ」

「ひいお爺ちゃんなら、この家で暮らしてたのね」

「そう。あなた達が来るちょっと前に亡くなったのよ」

「封筒見たら、関金からだったみたい」

「そうか…後で見てみよう」


【朝風家の蔵】

〈古い手紙を見る晶子〉

「ああ、これね…お爺ちゃんごめんね、見るわよ」

うーん、墨がにじんで読みにくいな…

ああ、この話し、小さい頃聞いた事有る…

ご丁寧なお断りの手紙みたいだわ。

この人、名前何て言ったっけ?

忘れちゃった。

聞けばわかるんだけどな…

【中町学園職員室】

さあ、月曜日だ。

一週間が始まるぞ。

「鐘城先生。晶子先生が、検査の結果を聞きに来てください、って言ってましたよ」

「はい、行って来ます」

良し!

今のうちに行って来るか。

【診療所】

「鐘城さーん、どうぞ」

「はい」

「ああ、響君。検査の結果ね…全て異常無しだわ」

「そうスか」

「響君て、横浜の音大出てるのよね」

「はい、そうです」

「香達の母親ね、私の妹、あの子もやっぱり医者なんだけど、横浜の大学に行くって聞かなくて…大学で知り合った人と結婚したのよ」

「そうなんですか」

「周りの反対押し切って結婚して、横浜に住んでたの」

「それで横浜に居たのか」

「今は、離婚して、南米の無医村に居るわ」

「凄い行動力有る人だ…あ、そうそう、祖母の事なんですけど、旧姓だけわかりました。田野倉です」

「田野倉都子さん?」

「はい」

「え?待って…田野倉都子さんて、聞いた事有る。地蔵院の近くだったわよね」

「はい。昔は、地蔵院で相撲や盆踊りが有ったなんて言ってました」

「そう!盆踊りよ!」

「え?」

「地蔵院の盆踊り!そこで会ったんだわ!」

「先生。次の患者さんが待っとんなるけ、早よしないよ」

「ごめんね響君。夜にでもまた話しましょう。それまでに私も思い出しとくから」



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