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第3章 魂の記憶

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この子とは、こんな会い方するな…

まあ、この前は校長の家だし、小さな町に一軒だけ有るコンビニで会っても、別に不思議じゃないか。

「先生は、何を買いに来たんですか?」

「キャットフード」

「何でキャットフード?」

「シロのご飯」

「猫飼ってるんですか?」

「町猫だって。池から付いて来たんだ」

「ああ、その子知ってる」

この子、笑顔がキラキラしてるな。

あ、もう外は真っ暗だ。

どうもこの子と居ると、時間を忘れてしまうようだ。

「送って行くから待ってろ」

「えっ?」

「もう遅いから、1人で帰すわけいかないだろ」

僕は、急いでキャットフードを買って、香とコンビニを出た。

【下町】

階段を上がる時は、男は少し後からだ。

下りる時は、先を歩く。

女の子と一緒の時はね。

意外だわ。

凄く気遣ってくれてるのがわかる。

響先生って、こういう人なんだ…

【中町の畑】

「うわー、星が掴めそうだぞ」

「ウフフ」

「おかしいか?」

「だって、このぐらいでそんなに感激するんだもん」

「そんなに変かな?まあ、地元の子は見慣れてるからな」

やっぱり、子供みたいな人ね。

【上町】

「この奥に、お城が有るんだよな?」

「有りますよ」

「明日行ってみようかな」

「フフフ」

「あ、また笑ったな」

「だって、少年みたいな顔するから」

響先生と一緒に居ると楽しい。

ああ、もうすぐ着いちゃう。

お爺ちゃんの家が、もっと遠ければ良いのに。

【朝風校長宅】

「じゃあな、早く寝るんだぞ」

「えー?小学生じゃないんだから」

「そうか、ま、まあ、良いか。じゃあ月曜日な」


【廊下】

「香ちゃーん」

「お姉ちゃん」

「鐘城先生に、送ってもらったでしょう」

「見てたの?!」

【香の部屋】

「へー、偶然コンビニでねー。中間世で一番縁の深い魂だと感じたなら、ソウルメイトかな?」

「そうなのかな?だったら良いなあ」

「でもね、ソウルメイトって深く関わるけど、親しい人ばっかりじゃないのよーん。ライバルなんかもソウルメイトだったりするんだって」

「えー?!そうなのー?」

「まあ、何が本当なのか、死んでみないとわかんないけどね」

【響の宿舎】

家に帰ると、庭にまだシロが居た。

「ミャー、ミャー」

「良し良し、今あげるからな」

ネコカリをあげると、喜んで食べた。

「おっと、お風呂に行かないと」

【下町】

さて、今日はどっちに行くかな?

うーん、昨日諏訪旅館に行ったから、今日は荻乃湯にするか。

【荻乃湯前】

「あら、鐘城先生。お風呂に入りに来たの?」

1年の荻野愛佳だ。

「まだ開いてるわよ」

「おう」

【荻乃湯】

「鐘城先生。いらっしゃい」

荻野のお母さん温子さんだ。

「あ、お母さん。先生お風呂だって」

「どうぞ、どうぞ」

【温泉】

気持ち良いー。

「先生。背中流す?」

愛佳の兄、3年の寛太だ。

「おう、寛太」

「もう上がるから良いよ」

ちゃーんと洗って入ったよ~

さて、明日はお城見学だぞ。

帰って早く寝よう。

【お城】

と、言うわけで、来ちゃいました。

お城!

カッコいい。

ところで…

「何でお前が付いて来てるんだよ」

「細かい事は、良いじゃない」

何が細かいんだか…

「さあ、行くわよ」


「お城って、どうしてこう面倒なの?中々建物に着かない」

「それは、外敵の侵入を防ぐように造られているからなんですよ」

「魚路先生」

「おはようございます」

魚路先生が、お城のガイドをしてくれた。

さすがに詳しい。

社会科の先生だもんな。

【城の中】

この部屋…

初めて来たのに…何だろう…?

知ってる気がする。

またデジャビュ?

似たような部屋に行った事が有るのかな?

うーん、覚えが無い

「鐘城先生。どうしたんですか?ぼんやりして」

「えっ?あ、いや…」

校長先生のお孫さんの朝風涼子さん。

朝風香のお姉さんで、巫女さんだ。

僕は、涼子さんに、何故ぼんやりしていたのか話した。

「それって、魂の記憶かも?」

「え?何の記憶?」

「過去世とか」

「まさか」

【城の外】

「うちの神社、すぐそこだから寄って行って」

【神社】

と、言うわけで、神社に寄る事にした。

何故か僕だけ…

来たからにはお参りしないとな。

お参りが済むと、部屋の中に連れて行かれた。

【神社の中の部屋】

「はいはい、そこに座って」

僕は、涼子さんに言われるまま畳の上に座った。

「はい、目を閉じて」

「え?」

「誘導瞑想するから」

ふーん、何だか面白そうだから、言う通りにしてみるか。

「静かにゆっくりと呼吸をしてください」

「……」


「深ーく、ゆったりと呼吸してください」

光…

瞑想状態になってしばらくすると、光が見えて来た。

光の中に入ると、色々な景色が現れた。

何か…ファンタジーな感じの酒場?

日本じゃないな。

酒癖の悪い女の子。

璃子だ。

また光が見える。

僕は、光の中へと入って行った。

ここは…

いつの時代だ?

僕?

直衣を着てるな。

あれは…

香。

白い衣に緋の袴だ。

これは…過去世…なのか?

何で香?

あ…

〈巫女姿の女の子が悲しい顔をして去る。直衣の男の子が追いかけて行く〉

何だったんだ?

今の…

あ…何で?

気がつくと、涙が頬を伝っている。

「目を開けて良いわよ。何が見えた?」

僕は、瞑想中に見た事を話した。

「やっぱり香と親しい魂だったんだー」

「……」

「あ、泣いた事は黙っといてあげるねー」

【響の宿舎】

デジャビュと感じたのは、本当に魂の記憶だったのか?

何だかわからないけど、凄く切なかった。

気がつくと、涙が勝手に出ていて…

あれは本当に、香と僕なのか?

親しい魂って言ってたけど…

「ミャー」

「来たな。お腹すいたのか?」

「ミャー、ミャー」

まあ、考えても仕方ないか。

シロのご飯、ご飯。

「猫の缶詰め買って来た」

出たな。

酒癖の悪い女の子登場だ。

「はい、シロ。ご飯よー」

「ウニャ、ウニャ」

「そんなに急がなくたって、たくさん有るわよ」

「ウニャ#%☆ニャ」

「隣町にドラッグストア有るんだって」

「へー、今度の休みに行ってみるかな」

〈翌朝〉

さあ、月曜だ。

今日からまた学校が始まるぞ。


【職員室】

昨日の事はすっかり忘れてる感じ?

気にしてたら、どんな顔して会ったら良いかわからないもんな。

香は、生徒だしな。

さて、やるべき事は、今のうちに片付けちゃおう。

【踊り場】

良ーし!

部活の入部案内を貼ったぞ。

集まってくれよ~

まだ授業まで時間が有るな。

今のうちに行くか。

【浅田商店】

あは、多喜さんも由紀さんも居た。

ここの海苔巻きは太巻き。

お稲荷さんは三角で大っきいんだ。

うわっ、1つずつしか残ってないぞ。

足りるかな…?

「えっと食いなる方かいな?」

「はい、食いしん坊です」

「ああ、それかいな」

「お弁当は無いけど、この辺じゃあイワナ丼も美味しいわよ」

そうなんだぁ…

お婆ちゃんに聞いてみよう。

いぎす(海藻)や、あごちくわ(飛魚のちくわ)は知ってるけどね。

地元の人には珍しく無い話しは、お婆ちゃんも言わないからな。

あごちくわだって、テレビで知って聞いてみたら「有るよ」って言ってたんだ。

【学校の廊下】

さてさて、行きますか。

【音楽室】

「それがね、凄い可愛いの」

「え?どれ?見せて」

「ほらこれ」

「可愛い、欲しい」

「どこで売ってるのかな?」

「この辺じゃ、無いよね。通販か?」

「あ、響ちゃん」

「だから、ちゃんはよせって」

「音楽鑑賞クラブ、入部したよ」

諏訪眞澄、浅田未来、朝風香の3人だけか?

まあ、生徒数が少ないからな…

〈席に座る眞澄と未来。ぼんやり立っている香〉

昨日お姉ちゃんが言ってた事、本当かな?

「どうした?」

「え?」

「座りなさい」

「あ…はい」

良し!

音楽鑑賞クラブ第1日目!

「今日は、バッハのブランデンブルグコンチェルト第5番を聴くぞ」
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