上 下
25 / 26

25、憧れのマイホーム。

しおりを挟む


廊下を歩いている途中、男性が話しかけて来た。
行きとはうって変わった、優しそうな目つきだ。

「すみません、うちの娘が。

生まれて数百年ですから、上手く相手の力量を測れない未熟者でして。」

「いえいえ、こちらとしても面白かったですし、上に立つ才能もあるんでしょうね。

娘さんは。

……娘⁉︎」

「ああ、そうですか。
そう言って頂くとこちらとしても嬉しい限りですよ。」

「いや!
そうじゃ無くて!
娘って、だって、シルビアの部下って感じで、指示に従ってたし、えっ?」

「どこかおかしいですか?

人間の社会っていうのは、時に年功序列を超えて形成されるものだと聞きます。
部下と上司の様に。」

「えっ、まあそうですけど…」

困惑に足を止めたリグを気にせずに進むシルビアの父に置いていかれないように、リグは少し小走りで後を追った。

(エルフっていうのは、想像以上に凄いのかも知れない。)

ーーーーーーー

「着きましたよ。」

案内されたのは、集落の端に存在する建物。
他の物より少し大きいそれは、真っ暗になった夜に溶け込んで、少し不気味な雰囲気さえ感じさせていた。

「…ありがとうございます。」

「では、私はこれで。」

早々と退散していった男性に小さく手を振って、リグは建物のドアを開ける。

埃っぽい空気が顔面を襲って、リグは思わず扉を閉めた。

「取り敢えず、掃除か。」

ーーーーーーーー

朝目覚めたリグは、見覚えの無い天井に違和感を覚えた。

「ああ、そういえば、昨日貸してもらったんだった。

えっと、この部屋だけ綺麗にして、一旦眠ったんだよな。」

窓を見ると、目に痛い程の光が差し込んでいる。

「完全に寝坊だ…」

足元で丸まって眠っていたドラさんを撫でて起こして、次にとるべき行動を考える。

「ああ、朝ご飯、いや、昼ご飯か。
どうしよう…

狩ってくるしか無いのか。
ストック無いし。

でもなあ、取り敢えず家を整えておきたい。

…ダメかあ。
自分だけなら我慢できるけど、ドラさんもいる訳だし。」

ため息を一つついて、近隣に挨拶をしようと扉を押すと、向こう側に確かな重みを感じた。

外に出て確かめると、そこにはバスケットが置いてあった。

もう一度部屋に帰って確認すると、手紙が挟まっている。

『来たばかりで朝食も無いだろうから用意してやったぞ。

ただ、部屋は早く掃除しろ。
誇り臭くて入れん。』

「ああ、なんだ。
シルビアって神だったのか。

って不法侵入…
次からは鍵かけておこう!」

ドラさんがいる部屋に戻り、一人分の少し少ない量のサンドイッチで、遅めの朝食をいただいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

処理中です...