上 下
15 / 26

15、絶体絶命にて。3

しおりを挟む


クエストを完了して、冒険者ギルドに帰って来た時に、楽しそうに騒ぎたてる集団を見つけた。

新しく冒険者になった少年少女達だ。

その中でも、一際異彩を放ち、怒涛の勢いでランクを上げて来たそのパーティーは、冒険者達の中でも話題に上がっていた。

曰く、あのパーティーの、私達のパーティーの再来の様であると。

彼らは、確かに強かった。
あの時の私達と同じくらい。

だからこそ、そのパーティーは私達と同じ様な行動を取っていた。

そうすれば、誰もが警戒し、警告する。

私達のパーティーと同じようにならないように。

しかし、彼らが方針を変えることは無かった。
それでも上手くいってしまうから。

私は、危機感を覚えた。
私達と同じ結果にならなかったとしても、彼等には、必ず悪い事が起こる。

何故かそう思えてしまった。


彼らよりもランクが高い私なら、彼らよりも高難易度のクエストを受けている私なら。

…彼らと同じ軌跡を辿って来た私の言葉ならば、彼らは耳を傾けるかもしれない。


私は、今がチャンスだと思った。

割と早い時間で、人の目が少なかったし、彼らもこれから何処かに向かうような様子でも無かったからだ。


それなのに、私の足は縫い付けられたように動かなかった。

何というか、今でも思うような、パーティーメンバー達への、パーティーメンバーだった彼への罪悪感とか、後悔とか。

様々な入り混じった感情が、私の体にのしかかって来たような気がしていた。


私は、腰にかけた短剣に指を這わせた。

目を閉じて、短剣に刻まれた模様を、指にかかる凹凸から想像する。

大きく深呼吸を置いて、目を開けた。

足下には、もう重石は存在していなかった。
私は、彼らを正面に捉えた。

ゆっくりと足を進めると、彼らの中に緊張が走ったのが伝わった。

最初は分からなかったが、すぐに理由はわかった。

私は、短剣から手を離して、両手を上げて、武器を持っていない事をアピールした。

「すまないね。

そういうつもりではなかったんだ。」

彼らの中のリーダーと思わしき少年が、安堵の表情を浮かべ、話しかけて来た。

「あんたみたいな高ランクの冒険者がそんなただならぬ様子を醸し出してたら、俺たちも警戒しちまうってもんだよ。」

少しおどけた様子で話す少年に、少女が咎める声を上げる。

「ちょっと!

失礼でしょ!ちゃんと敬語を使いなさいよ!」

すると、面倒くさそうにしながら、少年が質問を投げかけた。

「あー…

それで、なんだか様子が変でしたけど、なんか用でもあるんですかね?」

私は、少し言葉を探したが、早めに切り上げて答えた。

「別に、敬語なんて使わなくてもいいよ。

それで、要件なんだけど、そうだなあ…

高ランク冒険者のノウハウを学ぶってことで、仮パーティーでも組んで見ない?」

少年少女は目を輝かせて、ふたつ返事で肯定した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...