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学園編 3年目
狼の歯噛み2
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「ジン・ウォーリア卿。お迎えに上がりました」
「はえーよ」
翌る日、放課後になると同時に『アレッシオの遣い』だと言う使用人が呼びに来た。正確にはネズミの1匹が変装してるのだが。
(こちらに猶予を与えない作戦か)
クラブが休みだったハンスと教室で少し勉強(と言うイチャつき)をして帰る予定だった。その前に少し腹拵えしようかと駄弁っている最中の事で、急な呼び出しにハンスが不安げに使用人を見詰めている。その瞳に心苦しくなってしまう。
「…ハンス、ごめんな。勉強、明日で良い?」
「……うん、大丈夫。ジンこそ、大丈夫っすか?」
「大丈夫、余裕。また明日な」
心配してくれる様子にキスしたくなるが、クラスメイト達も使用人(ネズミ)もいるから我慢した。頭をくしゃりと撫でて、荷物は置いて歩き出す。
「お荷物は。ご準備などあれば付き添いますが」
「いらねぇよ。さっさと行こう」
「…左様で。…ああ、それと、"お一人"でお願い申し上げます」
「………あ、そう?じゃあ、遠慮なく」
途中でドラゴとフィルは学園長かロキの元へと向かわせるつもりだった。密やかな腹積りが相手の意向で崩れるとは予想外だ。ドラゴは隠密のまま、フィルにくっついていて、使用人の様子を窺っているようだ。
「はい、ドラゴン狙いではないので、必要なのは貴方様だと言う事をこれで信じて欲しいそうです」
「………それ言われた時、アンタは俺が信じると思った?」
「………」
「だよな」
使用人(ネズミ)は黙った。だが目付きだけはギラギラと、主への反抗的な態度に怒りを露わにしている。嫉妬にも似ている眼差しにジンは軽く引く。もう30手前の男が14歳の上司に抱くべきでない感情でも抱いているのだろうか。
「ジン、俺、見てようか?」
ハンスが後ろから声を掛けてきた。振り返ると机に凭れた姿勢のまま、自分自身を指差していた。
「いや、今日は学園長かロキ先生に頼むよ」
何かあった時、ハンスやイルラではドラゴ達の暴走に巻き込まれかねないから。
ハンスの手がゆっくりと落ちて行く。少ししょんぼりしてるが、ジンの考えは理解しているようで「俺じゃドラゴ達止められねっすもんね」と頷いてくれた。
2頭はジンが視線を送っただけで、サッと教室から出て行く。学園長とロキには急なことではあるが、どちらかが受け入れてくれるだろう。
「じゃあ、行って来る」
「ん、行ってらっしゃいっす」
見送られながら使用人について行くと、使用人は外へ出た。
「食事だと言ってたが、どこに向かってる?」
ディナーにはまだまだ早い時間。てっきり教室塔から繋がる食堂やサロン用の個室でも借りてるのかと思ったのだが。
「……」
無言の使用人の背中を眺めつつ、(この気配は一昨日見てた奴だな)と心の中で当たりを付ける。
寮館へと辿り着き、階段を上り、見慣れない廊下を歩く。
辿り着いたのは貴族寮の上層階。
寄付金を多く払った上流階級が入れる部屋だ。各個室になっている。
重厚で豪奢な同じドアが並ぶ。ドアの中央に嵌め込まれた無地のプレートには魔力文字で寮生の名前が書いてあった。『アレッシオ・シルヴァ』のプレート前で使用人は立ち止まる。
使用人がノックをすると、少しの沈黙の後、「はい」と知らない男の声がした。
「連れて参りました」
「…はい」
使用人は下がり、ジンを前へ出るように片手で促す。
前に立つと開いたドアの隙間から、瑞々しく甘い匂いが香ってきた。花とフルーツの間のような匂いだ。芳しいが少しクセのある嗅ぎ慣れない匂い。
(…こいつのフェロモンだったりしねぇよな?)
開いたドアに立つのは頭も頭巾で覆われた、全身黒尽くめの男(ネズミ2号)だ。使用人よりも更に見慣れた(感じ慣れた)気配に、ジンは微笑んだ。
「よお、5日ぶり。忙しかったか」
「………中へどうぞ」
減ったとは言え、監視は時折付いている。目の前の男は姿を見せた事がないにも関わらず、正確に日付を当てて来たジンに頭巾の下で頬を引き攣らせた。
ネズミ2号の前を通り過ぎて中に入る。先程の匂いは一層強まるが、同時に様々な匂いが混ざって匂いの元は良く分からなくなる。香水か、お香か、キャンドルかもしれない。恐らくその辺りだろう。
苦手ではないが、嗅覚の鋭いジンには少し刺激が強い部類の物だ。
室内は広々としていた。華やかな赤い絨毯にカーテン、壁には絵画、骨董品だろう壺や彫刻。ランプのひとつひとつから高級感が漂う。応接用のソファとローテーブルがあり、更に食事用のテーブルも奥に用意されている。
空のグラスにカトラリーが並ぶテーブルには、ラナンキュラスが飾られていた。緑にオレンジ、赤に紫と色とりどりの中で、一際目立つのは黒い花だ。この花瓶の主役なのだろうと分かる。生け方なのか、数なのか、ジンには定かではないが。
(…なんか、ヴァレリオっぽいな)
花の名前も知らないジンだが、可愛らしいのに毒々しく、存在感がある黒いラナンキュラスを見て思う。椅子をネズミ2号が引くので遠慮なく座らせて貰った。ネズミ2号は何も言わずに姿を消し、入れ替わるようにドアが開いて、ヴァレリオが姿を現した。
「ジン先輩」
立とうとするジンを片手で制する様子は、流石皇子といった所か。様になっている。
「来てくれて嬉しい…無視されたらどうしようかと考えていたんだよ」
前髪を分け、澄んだ若葉色の瞳をさらけ出しているヴァレリオ。隣へと立つと、ジンの髪へと触れた。むせかえるようなフェロモンの匂いが近く、本能が疼くが理性が抑える。フェロモンの強さのせいか、今日はいつもより可愛く見える。
「最後だからな。…今日はアレッシオではなく、ヴァレリオ皇子として接するべきですか」
制服のシャツに、見慣れないラバリエール(蝶結びのアスコットタイ)が胸元を飾っている。目の色に合わせた鮮やかな緑の生地、片端に刺繍が施されてる。はっきりしないが皇室の家紋だろう。
ヴァレリオは年には似合わない妖艶な笑みを浮かべた。少し小馬鹿にしたような、けれど心から楽しそうな笑顔。
「お前は察しが良いね。そうだよ、今日のボクはしがない侯爵家の息子なんかじゃない。帝国の 赫々たる太陽の子、ヴァレリオ・オリエンス=インペラトル・ヴィリディス。誇り高き第三皇子であり、王太子の席に座する者だ。…傅いても良いよ、ジン先輩」
ジンの手から逃れた華奢な手が、肩を這うように撫でて来る。緑の瞳に胸が苦しいほどに高鳴る。ジンは細く吐息を溢す。
(…またこの感覚…気持ちわりィ)
ヴァレリオに見詰められると時々やけに胸がときめく。まるで心臓が自分のものではないような動きに、ジンは頭と身体が乖離したような気になって落ち着かない。
反応のないジンに、ヴァレリオは微かに眉宇を寄せ瞳を覗き込む。
「改めて言われるとプレッシャーかな?ボクが気を遣ってやらないとね。お前なら今まで通りに接する事を許すよ。…生意気なぐらいが良いって思ったの、お前が初めてだし」
(なんか言ってんな)
黙り込んだジンに、何やら勘違いしてるヴァレリオの、喜悦が隠せない笑みにすら心臓は早鐘を打った。だんだん息苦しくなる。ドキドキが止まらない。胸に手を当て、ジンは堪らず気持ちを声にした。
「…俺、具合悪いみたいなんで帰って良い?」
「ハアッ??」
冗談半分に言ってみた。つまり半分本気だ。ヴァレリオは目をひん剥いて、見た事ないほどに歯も剥き出した。(めちゃくちゃ怒るじゃん…)と引いていると、流石に気付いたのか顔を逸らし、髪を掻き上げている。仕草が色っぽく見えるし、実際、髪を掻き上げる男の仕草は好きだった。
「…ダメ。食事をする約束だよ」
「じゃあ、席に座って下さいよ」
「……」
向かいの椅子へ促すと、ヴァレリオは苦々しく歯を食い縛った後、音を立てて座った。離れてもフェロモンの匂いはべったりと纏わり付いてくるようだ。
(生意気なぐらいが良いんじゃねぇのかよ)
口答えは良いけど指図は嫌なのだろうかと、彼の中の生意気の定義について考えてみた。気持ちは分かる気もするが、受け入れたくはないので何も言わないでおこう。
「食事は誰が作ったんですか?まさか」
天井裏の気配へと目線を向けた。静まり返っているが、はっきりとそこに居る。
「食堂のシェフ達だよ。本当は外注したかったけど、手続きとか面倒だったし…先輩、シェフと顔見知り多いでしょ?知り合いの手が作った物の方が安心して食べれるかなって」
「…そうですね、ありがとうございます」
流石に料理までは出来ないか。頷くジンの態度にヴァレリオは眉を寄せた。
「…ね、いつも通りで良いって言ったよね?ジン先輩。お前は特別だって。遠慮しなくて良いよ」
「……そう?その割に言いたい事を言うと怒るからさ」
「それは先輩が悪いんだよ、お前じゃなきゃとっくに不敬罪にしてる」
「気が変わって処刑した時は、遺体はドラゴとフィルにやってくれ」
「そんな事しない。先輩を処刑したら、ボク寂しいもの」
ドアが開き、ワゴンが運ばれて来た。使用人役のネズミが増えてる。手慣れた様子で料理がテーブルに並び始めた。一品一品がまるでオブジェのように美しい料理だ。上品で豪華。シェフ達の本領発揮と言った所か。
「さあ、楽しんで。ジン先輩」
にっこりと微笑んだヴァレリオが食事を促した。並べられたフォークを手に取り、目の前に置かれた皿へと伸ばす。肉料理が多いのはジンの好みだからだろう。
「遠慮なく」
ジンは食べる前に抑えていた嗅覚の感度を上げた。料理に何か仕掛けがないか探る為だ。名前は分からないが細かい材料を嗅ぎ分けながら、出来るだけさりげなく口に運ぶ物を選び抜く。
しかし同時にヴァレリオのフェロモンと、室内を漂う独特な甘い匂いまで強く嗅ぎ取ってしまう。段々鼻が慣れて来てしまい、意識しなければ匂いが分からなくなってきた。
「…これは香辛料?」
舌に乗せた時、ピリッとした苦味を感じた。しかしソースの味ですぐに消えていく。
「帝国で有名な粉末があるんだ。少し苦いけど身体に良いからボクの料理には使って貰ってるんだ」
「粉末?」
「うん、苦手だったら無理に食べなくて大丈夫だよ。使ってない料理もあるから、そっちを食べると良い」
「ああ、うん。大丈夫」
(仮に毒だとしても効かねぇし)
ドラゴからの付随特性『毒耐性』
試しに毒草を齧ってみたり、毒蛇に噛まれてみたりしたが、何の異変も起こらなかった。だが酒には酔うし、毒と同じ植物から作られた薬も効く場合がある。
条件はさっぱり分からないが、毒によって命を取られる心配はないと踏んでる。
(寧ろ仕掛けてくれよ、お前に俺を害する気がある証拠が欲しいんだ)
だがジンの期待を裏切り、食事は終わってしまった。
食事中はあまり喋らないタイプらしく、ヴァレリオも料理の感想を口にしたり、マウント気味ではあったが世間話程度のお喋りだけで、意外とまともなディナーだった。
「…美味かったです、ご馳走様」
「……いいえ、お口にあって何よりだよ。でも食後のティータイムも残ってる。ボクが食べ終わるの待ってて」
「ああ、…慌てなくて良いよ」
元々ジンは食べる速度が早い。まだ半分も残っているヴァレリオの手元の動きが少し焦るのを見て、のんびりと待つつもりで背凭れに身を預けた。ネズミ達がジンの前の食器を片付けて、グラスに水を注いでくれた。
(…こうやって普通にしてたら、ただの可愛いガキなんだが…)
やはり小さい気がして食指は動かないが、後輩として可愛がる程度はしただろう。一口食べるごとに目が合う。小動物が飼い主の姿を確認する動きにも似ていて、頬が緩んだ。
しばらく無言で食べていたヴァレリオが、手を止めて遠巻きに待機するネズミ達を見た。
「…? どうした?」
背凭れから身を起こす。
「いえ…先輩、具合はどう?良くなった?」
「うん?ああ、動悸息切れは多少するが後は特にーーー」
言い掛けのまま、ジンはテーブルに頭から突っ込んだ。
「び……っくりしたぁ…」
突っ伏したまま動かなくなったジンを見て、ヴァレリオはゆっくりと食器を置いて立ち上がる。
「平然としてるから、睡眠薬効かないのかと思った…なにこの人…」
料理にはランダムに睡眠薬が混入していた。”帝国で有名な粉末”だ。濃度や量を変えて人間から大型獣まで使える自然由来の睡眠薬。
「……通常の3倍量を使用しました。全部摂取されたので、異常がないかお調べします」
ネズミの1人がジンへと寄っていく。
「そうだね、ついでに寝室へ運んで」
「……ヴァレリオ皇子、ベッドへ寝かせるのは」
「良いから、ボクの言う通りにしてよ」
苦言を一蹴されてネズミは肩を落とし、眠るジンを睨みつけた。うつ伏せのジンの肩を乱暴に揺する。反応がないのを確認して、脈や呼吸、身体を起こさせて瞳孔のチェックをする。意識を失ったように見えたが、呼吸は安定しており脈に異常もない。ただ眠っているだけで間違いないようだ。過剰摂取で目が覚めないなどと言う最悪の想定が過りもしたが、見たところ心配はいらない。密やかにネズミはホッとした。
見守りながら水を飲むヴァレリオを見て、ネズミは渋々とジンの腕を肩に回して担ごうとした。
「うぐぅ…ッ!お、重い……!」
背丈もあり体格も良いので覚悟していたが、予想よりも重い。眠っているせいで身体はぐにゃぐにゃとしていて1人で運ぶのは難しいと、結局2人がかりで寝室へと運んだ。
後ろからついて来ていたヴァレリオはベッドに仰向けに転がされたジンを見て、満足そうに微笑む。
「うん、ご苦労。それじゃ、みんな出てって。監視もしないで。どこかで休んでると良い」
持っていたグラスを脇に立っていたネズミへと押し付け、ヴァレリオがベッドへと近づきながらネズミへ指示をする。ネズミたちは「え?」と一斉に怪訝に顔を歪めた。
「殿下、この男と2人になるつもりですか?」
「これは腕で良いんだよね?」
枕元に置いてある銀のトレイの中身をひとつ取り出して、ヴァレリオは近場のネズミへ尋ねる。困惑しつつもネズミは頷いた。
「殿下!!その男に言い寄ってるのはフリなのでしょう!2人きりなど危険です!もし御身に何かあれば…」
「うるさいな。ボクがそんなヘマすると思ってるの?良いから早く出てって!1人も残るんじゃない!!」
怒鳴られてネズミ達の顔が青ざめた。全員何か言いたげにしていたが、唇を噛んで下がっていった。
室内には寝息を立てて呑気に眠るジンと、ヴァレリオの2人だけが残される。ヴァレリオの毛先が微かに揺れ、その目がペリドットの輝きを見せた。瞬時に部屋の中だけに結界が張られ、外では結界の気配に気付いたネズミ達が慌てている。認識阻害まで備えた結界内でヴァレリオは大きく溜息を吐いた。
「……本当、いろいろと予想を超えて来る人だなァ…このボクにこんなに手間を取らせたんだから、ちゃんとボクの期待に応えてよね」
ラバリエールを解きながら、ヴァレリオはジンの頬を撫でた。
「はえーよ」
翌る日、放課後になると同時に『アレッシオの遣い』だと言う使用人が呼びに来た。正確にはネズミの1匹が変装してるのだが。
(こちらに猶予を与えない作戦か)
クラブが休みだったハンスと教室で少し勉強(と言うイチャつき)をして帰る予定だった。その前に少し腹拵えしようかと駄弁っている最中の事で、急な呼び出しにハンスが不安げに使用人を見詰めている。その瞳に心苦しくなってしまう。
「…ハンス、ごめんな。勉強、明日で良い?」
「……うん、大丈夫。ジンこそ、大丈夫っすか?」
「大丈夫、余裕。また明日な」
心配してくれる様子にキスしたくなるが、クラスメイト達も使用人(ネズミ)もいるから我慢した。頭をくしゃりと撫でて、荷物は置いて歩き出す。
「お荷物は。ご準備などあれば付き添いますが」
「いらねぇよ。さっさと行こう」
「…左様で。…ああ、それと、"お一人"でお願い申し上げます」
「………あ、そう?じゃあ、遠慮なく」
途中でドラゴとフィルは学園長かロキの元へと向かわせるつもりだった。密やかな腹積りが相手の意向で崩れるとは予想外だ。ドラゴは隠密のまま、フィルにくっついていて、使用人の様子を窺っているようだ。
「はい、ドラゴン狙いではないので、必要なのは貴方様だと言う事をこれで信じて欲しいそうです」
「………それ言われた時、アンタは俺が信じると思った?」
「………」
「だよな」
使用人(ネズミ)は黙った。だが目付きだけはギラギラと、主への反抗的な態度に怒りを露わにしている。嫉妬にも似ている眼差しにジンは軽く引く。もう30手前の男が14歳の上司に抱くべきでない感情でも抱いているのだろうか。
「ジン、俺、見てようか?」
ハンスが後ろから声を掛けてきた。振り返ると机に凭れた姿勢のまま、自分自身を指差していた。
「いや、今日は学園長かロキ先生に頼むよ」
何かあった時、ハンスやイルラではドラゴ達の暴走に巻き込まれかねないから。
ハンスの手がゆっくりと落ちて行く。少ししょんぼりしてるが、ジンの考えは理解しているようで「俺じゃドラゴ達止められねっすもんね」と頷いてくれた。
2頭はジンが視線を送っただけで、サッと教室から出て行く。学園長とロキには急なことではあるが、どちらかが受け入れてくれるだろう。
「じゃあ、行って来る」
「ん、行ってらっしゃいっす」
見送られながら使用人について行くと、使用人は外へ出た。
「食事だと言ってたが、どこに向かってる?」
ディナーにはまだまだ早い時間。てっきり教室塔から繋がる食堂やサロン用の個室でも借りてるのかと思ったのだが。
「……」
無言の使用人の背中を眺めつつ、(この気配は一昨日見てた奴だな)と心の中で当たりを付ける。
寮館へと辿り着き、階段を上り、見慣れない廊下を歩く。
辿り着いたのは貴族寮の上層階。
寄付金を多く払った上流階級が入れる部屋だ。各個室になっている。
重厚で豪奢な同じドアが並ぶ。ドアの中央に嵌め込まれた無地のプレートには魔力文字で寮生の名前が書いてあった。『アレッシオ・シルヴァ』のプレート前で使用人は立ち止まる。
使用人がノックをすると、少しの沈黙の後、「はい」と知らない男の声がした。
「連れて参りました」
「…はい」
使用人は下がり、ジンを前へ出るように片手で促す。
前に立つと開いたドアの隙間から、瑞々しく甘い匂いが香ってきた。花とフルーツの間のような匂いだ。芳しいが少しクセのある嗅ぎ慣れない匂い。
(…こいつのフェロモンだったりしねぇよな?)
開いたドアに立つのは頭も頭巾で覆われた、全身黒尽くめの男(ネズミ2号)だ。使用人よりも更に見慣れた(感じ慣れた)気配に、ジンは微笑んだ。
「よお、5日ぶり。忙しかったか」
「………中へどうぞ」
減ったとは言え、監視は時折付いている。目の前の男は姿を見せた事がないにも関わらず、正確に日付を当てて来たジンに頭巾の下で頬を引き攣らせた。
ネズミ2号の前を通り過ぎて中に入る。先程の匂いは一層強まるが、同時に様々な匂いが混ざって匂いの元は良く分からなくなる。香水か、お香か、キャンドルかもしれない。恐らくその辺りだろう。
苦手ではないが、嗅覚の鋭いジンには少し刺激が強い部類の物だ。
室内は広々としていた。華やかな赤い絨毯にカーテン、壁には絵画、骨董品だろう壺や彫刻。ランプのひとつひとつから高級感が漂う。応接用のソファとローテーブルがあり、更に食事用のテーブルも奥に用意されている。
空のグラスにカトラリーが並ぶテーブルには、ラナンキュラスが飾られていた。緑にオレンジ、赤に紫と色とりどりの中で、一際目立つのは黒い花だ。この花瓶の主役なのだろうと分かる。生け方なのか、数なのか、ジンには定かではないが。
(…なんか、ヴァレリオっぽいな)
花の名前も知らないジンだが、可愛らしいのに毒々しく、存在感がある黒いラナンキュラスを見て思う。椅子をネズミ2号が引くので遠慮なく座らせて貰った。ネズミ2号は何も言わずに姿を消し、入れ替わるようにドアが開いて、ヴァレリオが姿を現した。
「ジン先輩」
立とうとするジンを片手で制する様子は、流石皇子といった所か。様になっている。
「来てくれて嬉しい…無視されたらどうしようかと考えていたんだよ」
前髪を分け、澄んだ若葉色の瞳をさらけ出しているヴァレリオ。隣へと立つと、ジンの髪へと触れた。むせかえるようなフェロモンの匂いが近く、本能が疼くが理性が抑える。フェロモンの強さのせいか、今日はいつもより可愛く見える。
「最後だからな。…今日はアレッシオではなく、ヴァレリオ皇子として接するべきですか」
制服のシャツに、見慣れないラバリエール(蝶結びのアスコットタイ)が胸元を飾っている。目の色に合わせた鮮やかな緑の生地、片端に刺繍が施されてる。はっきりしないが皇室の家紋だろう。
ヴァレリオは年には似合わない妖艶な笑みを浮かべた。少し小馬鹿にしたような、けれど心から楽しそうな笑顔。
「お前は察しが良いね。そうだよ、今日のボクはしがない侯爵家の息子なんかじゃない。帝国の 赫々たる太陽の子、ヴァレリオ・オリエンス=インペラトル・ヴィリディス。誇り高き第三皇子であり、王太子の席に座する者だ。…傅いても良いよ、ジン先輩」
ジンの手から逃れた華奢な手が、肩を這うように撫でて来る。緑の瞳に胸が苦しいほどに高鳴る。ジンは細く吐息を溢す。
(…またこの感覚…気持ちわりィ)
ヴァレリオに見詰められると時々やけに胸がときめく。まるで心臓が自分のものではないような動きに、ジンは頭と身体が乖離したような気になって落ち着かない。
反応のないジンに、ヴァレリオは微かに眉宇を寄せ瞳を覗き込む。
「改めて言われるとプレッシャーかな?ボクが気を遣ってやらないとね。お前なら今まで通りに接する事を許すよ。…生意気なぐらいが良いって思ったの、お前が初めてだし」
(なんか言ってんな)
黙り込んだジンに、何やら勘違いしてるヴァレリオの、喜悦が隠せない笑みにすら心臓は早鐘を打った。だんだん息苦しくなる。ドキドキが止まらない。胸に手を当て、ジンは堪らず気持ちを声にした。
「…俺、具合悪いみたいなんで帰って良い?」
「ハアッ??」
冗談半分に言ってみた。つまり半分本気だ。ヴァレリオは目をひん剥いて、見た事ないほどに歯も剥き出した。(めちゃくちゃ怒るじゃん…)と引いていると、流石に気付いたのか顔を逸らし、髪を掻き上げている。仕草が色っぽく見えるし、実際、髪を掻き上げる男の仕草は好きだった。
「…ダメ。食事をする約束だよ」
「じゃあ、席に座って下さいよ」
「……」
向かいの椅子へ促すと、ヴァレリオは苦々しく歯を食い縛った後、音を立てて座った。離れてもフェロモンの匂いはべったりと纏わり付いてくるようだ。
(生意気なぐらいが良いんじゃねぇのかよ)
口答えは良いけど指図は嫌なのだろうかと、彼の中の生意気の定義について考えてみた。気持ちは分かる気もするが、受け入れたくはないので何も言わないでおこう。
「食事は誰が作ったんですか?まさか」
天井裏の気配へと目線を向けた。静まり返っているが、はっきりとそこに居る。
「食堂のシェフ達だよ。本当は外注したかったけど、手続きとか面倒だったし…先輩、シェフと顔見知り多いでしょ?知り合いの手が作った物の方が安心して食べれるかなって」
「…そうですね、ありがとうございます」
流石に料理までは出来ないか。頷くジンの態度にヴァレリオは眉を寄せた。
「…ね、いつも通りで良いって言ったよね?ジン先輩。お前は特別だって。遠慮しなくて良いよ」
「……そう?その割に言いたい事を言うと怒るからさ」
「それは先輩が悪いんだよ、お前じゃなきゃとっくに不敬罪にしてる」
「気が変わって処刑した時は、遺体はドラゴとフィルにやってくれ」
「そんな事しない。先輩を処刑したら、ボク寂しいもの」
ドアが開き、ワゴンが運ばれて来た。使用人役のネズミが増えてる。手慣れた様子で料理がテーブルに並び始めた。一品一品がまるでオブジェのように美しい料理だ。上品で豪華。シェフ達の本領発揮と言った所か。
「さあ、楽しんで。ジン先輩」
にっこりと微笑んだヴァレリオが食事を促した。並べられたフォークを手に取り、目の前に置かれた皿へと伸ばす。肉料理が多いのはジンの好みだからだろう。
「遠慮なく」
ジンは食べる前に抑えていた嗅覚の感度を上げた。料理に何か仕掛けがないか探る為だ。名前は分からないが細かい材料を嗅ぎ分けながら、出来るだけさりげなく口に運ぶ物を選び抜く。
しかし同時にヴァレリオのフェロモンと、室内を漂う独特な甘い匂いまで強く嗅ぎ取ってしまう。段々鼻が慣れて来てしまい、意識しなければ匂いが分からなくなってきた。
「…これは香辛料?」
舌に乗せた時、ピリッとした苦味を感じた。しかしソースの味ですぐに消えていく。
「帝国で有名な粉末があるんだ。少し苦いけど身体に良いからボクの料理には使って貰ってるんだ」
「粉末?」
「うん、苦手だったら無理に食べなくて大丈夫だよ。使ってない料理もあるから、そっちを食べると良い」
「ああ、うん。大丈夫」
(仮に毒だとしても効かねぇし)
ドラゴからの付随特性『毒耐性』
試しに毒草を齧ってみたり、毒蛇に噛まれてみたりしたが、何の異変も起こらなかった。だが酒には酔うし、毒と同じ植物から作られた薬も効く場合がある。
条件はさっぱり分からないが、毒によって命を取られる心配はないと踏んでる。
(寧ろ仕掛けてくれよ、お前に俺を害する気がある証拠が欲しいんだ)
だがジンの期待を裏切り、食事は終わってしまった。
食事中はあまり喋らないタイプらしく、ヴァレリオも料理の感想を口にしたり、マウント気味ではあったが世間話程度のお喋りだけで、意外とまともなディナーだった。
「…美味かったです、ご馳走様」
「……いいえ、お口にあって何よりだよ。でも食後のティータイムも残ってる。ボクが食べ終わるの待ってて」
「ああ、…慌てなくて良いよ」
元々ジンは食べる速度が早い。まだ半分も残っているヴァレリオの手元の動きが少し焦るのを見て、のんびりと待つつもりで背凭れに身を預けた。ネズミ達がジンの前の食器を片付けて、グラスに水を注いでくれた。
(…こうやって普通にしてたら、ただの可愛いガキなんだが…)
やはり小さい気がして食指は動かないが、後輩として可愛がる程度はしただろう。一口食べるごとに目が合う。小動物が飼い主の姿を確認する動きにも似ていて、頬が緩んだ。
しばらく無言で食べていたヴァレリオが、手を止めて遠巻きに待機するネズミ達を見た。
「…? どうした?」
背凭れから身を起こす。
「いえ…先輩、具合はどう?良くなった?」
「うん?ああ、動悸息切れは多少するが後は特にーーー」
言い掛けのまま、ジンはテーブルに頭から突っ込んだ。
「び……っくりしたぁ…」
突っ伏したまま動かなくなったジンを見て、ヴァレリオはゆっくりと食器を置いて立ち上がる。
「平然としてるから、睡眠薬効かないのかと思った…なにこの人…」
料理にはランダムに睡眠薬が混入していた。”帝国で有名な粉末”だ。濃度や量を変えて人間から大型獣まで使える自然由来の睡眠薬。
「……通常の3倍量を使用しました。全部摂取されたので、異常がないかお調べします」
ネズミの1人がジンへと寄っていく。
「そうだね、ついでに寝室へ運んで」
「……ヴァレリオ皇子、ベッドへ寝かせるのは」
「良いから、ボクの言う通りにしてよ」
苦言を一蹴されてネズミは肩を落とし、眠るジンを睨みつけた。うつ伏せのジンの肩を乱暴に揺する。反応がないのを確認して、脈や呼吸、身体を起こさせて瞳孔のチェックをする。意識を失ったように見えたが、呼吸は安定しており脈に異常もない。ただ眠っているだけで間違いないようだ。過剰摂取で目が覚めないなどと言う最悪の想定が過りもしたが、見たところ心配はいらない。密やかにネズミはホッとした。
見守りながら水を飲むヴァレリオを見て、ネズミは渋々とジンの腕を肩に回して担ごうとした。
「うぐぅ…ッ!お、重い……!」
背丈もあり体格も良いので覚悟していたが、予想よりも重い。眠っているせいで身体はぐにゃぐにゃとしていて1人で運ぶのは難しいと、結局2人がかりで寝室へと運んだ。
後ろからついて来ていたヴァレリオはベッドに仰向けに転がされたジンを見て、満足そうに微笑む。
「うん、ご苦労。それじゃ、みんな出てって。監視もしないで。どこかで休んでると良い」
持っていたグラスを脇に立っていたネズミへと押し付け、ヴァレリオがベッドへと近づきながらネズミへ指示をする。ネズミたちは「え?」と一斉に怪訝に顔を歪めた。
「殿下、この男と2人になるつもりですか?」
「これは腕で良いんだよね?」
枕元に置いてある銀のトレイの中身をひとつ取り出して、ヴァレリオは近場のネズミへ尋ねる。困惑しつつもネズミは頷いた。
「殿下!!その男に言い寄ってるのはフリなのでしょう!2人きりなど危険です!もし御身に何かあれば…」
「うるさいな。ボクがそんなヘマすると思ってるの?良いから早く出てって!1人も残るんじゃない!!」
怒鳴られてネズミ達の顔が青ざめた。全員何か言いたげにしていたが、唇を噛んで下がっていった。
室内には寝息を立てて呑気に眠るジンと、ヴァレリオの2人だけが残される。ヴァレリオの毛先が微かに揺れ、その目がペリドットの輝きを見せた。瞬時に部屋の中だけに結界が張られ、外では結界の気配に気付いたネズミ達が慌てている。認識阻害まで備えた結界内でヴァレリオは大きく溜息を吐いた。
「……本当、いろいろと予想を超えて来る人だなァ…このボクにこんなに手間を取らせたんだから、ちゃんとボクの期待に応えてよね」
ラバリエールを解きながら、ヴァレリオはジンの頬を撫でた。
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「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
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