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学園編 2年目
男爵家男孫と南部首長長男 ×
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キスをしたまま抱き上げられる。頭の位置が入れ替わり、オレの方が高くなる。
軽々と抱き上げられ驚いたが、腹が立つどころかときめいてしまった。
ベッドに腰掛けたジンの膝を跨ぎ、服を脱がされながら唇を吸い付き合う。ちゅっちゅっと音が立つ度に鼓動が早まる気がする。
お互いにフェロモンを香らせていて、久々に混ざり合う強い匂いはまさに媚薬だ。
裸になるとジンの手が肌を弄って来る。
暖かくて広い手が胸を揉む。既に主張し始めていた乳首を指でくりくりと摘まれて、ぴくんと身体が反応する。唇が離れ、見上げて来る赤褐色の瞳が微笑む。
「乳首気持ちいい?」
「……ん…」
こいつは知ってる事を一々聞いて来る癖がある。
小さく頷くと、胸へと顔を埋めた。
何をされるか分かって、何もされていない乳首まで硬く尖る。
「あッ」
舌先がそれに触れて、そのまま吸われた。
「…ん…っ…あ♡それ、いい…っ♡」
口の中はあったかくて、硬くなった乳首を舌先でぐりぐりと潰される。強めに吸われるほど、腰が震えた。
もう片方では指先で乳首を丹念に捏ねられていて、胸から広がる甘い快感に背が柔らかく反った。
臀部の割れ目へと指が滑り込む。すりすりと孔を撫でる指の腹に息を飲む。
「あ…いれて…っ…ジン…♡」
「……っ…」
とびきり甘えた声でねだる。わざとだ。
ジンはこの言葉を言われると喜ぶけど、耐えるように歯噛みする。今は八つ当たりのように乳首を噛まれた。少し強めの噛み方に勃起したペニスが震える。
「あッ!噛、むな…ッ♡」
上目に見上げて来た赤みが増えた目。
(人の気も知らないで…)と言ってるようだった。
オマエのそう言う目に興奮するオレがいる。
つぷっと指が中に入って来た。
ジンの匂いや魔力を感じると勝手に柔らかくなってしまう、だらしない窄まり。こんな身体の変化がある事をオレは知らなかった。
ゆっくり侵入して来る指が前立腺に触れかけ、腰を揺らす。
「あ……ッ…ん、そこ…そこ触って…ああッ♡んッ♡」
望み通りに前立腺を引っ掻く指に喉を反り、ぢゅうっと強めに乳首を吸われて、触られていないペニスから先走りが垂れた。
「ん…ッ、はあ♡…ぁッ♡ジン、指、指増やして…中、もっと…♡」
「…ッ」
軽く腰を揺すり、指を自ら奥に招いてねだる。
息を飲むジンの気配にぞわぞわしてしまう。
胸から口を離し、濡れた唇を舐めとる舌に目がいく。
「…今日、いつも以上におねだり凄いな」
「………はやく…中、いっぱいにしてくれ…オマエので…」
否定しない。早くして欲しい。
言葉の意味を履き違えないようにと我慢してるんだろうオマエがもどかしい。
挿れたいなら、挿れていい
いや、挿れて欲しい
「ん、…あッ♡」
本数が増えて、中を満たされる。ばらばらに動く指に容易く広がる窄まり。腰がカクカク揺れて、ペニスをジンの胸に擦り付ける。
そのまま解すように指3本で中を掻き回しながら、ジンの手はオレのペニスを包んだ。
「あっ♡くッ…それ、すぐイく、っだめ…!あッ、んんんッ♡♡♡」
掌に包まれたペニスを扱かれ、中の指が更に奥に行って肉壁を擦って来る。真っ赤に腫れ上がった乳首も強く噛まれて、ジンの手の中へ射精した。
「はあ…はあ…」
「はー……褐色って、何でこんなエロいの」
汗で濡れた肌をジンは躊躇いなく舐めて来る。
呼吸も整わない内に、オレはベッドの上へと転がされた。
上に被さるジンの顔を両手で掴んで、後頭部を浮かせてキスをする。応えてくれるジンが頭を下げた。
広げた股の間で、バスタオルを剥がすジンの動きに気付いて、オレはジンの胸を押した。
「…イルラ?」
ジンは不思議そうにしつつも、素直に身体を離してくれた。いつもならこのまま兜合わせでまぐわうから、いつもと違うオレの態度に首を傾げている。
羞恥心とプライドが心臓を叩き付けてくるが、何もかも捨てて膝を曲げ、臀部をジンに晒した。
「…ジン…ここ」
臀部を掌で押さえて、くぱ、と窄まりを開く。
散々指で掻き回されて中は解れきってる筈だ。
ジンの目が、赤褐色の視線が、開かれた箇所に釘付けになるのが、ーーーー嬉しい。
「ここ、きて…」
女みたいにねだってしまう、いや女を知らないんだけど。
意識して甘えてる時よりも更に鼻にかかったような甘えた声が出て恥ずかしいが、どうしようもない程に求めてしまう。
「それは…挿れて良いってこと?指じゃなくて?」
「ん……」
こくんと頷く。
ギ、と音を立てて這い寄って来るジンの体が、脚の間に収まると期待だけで先走りが腹に落ちた。
膝にジンの手が掛かる。いつもより熱く感じた。
「本当に良いの、挿れた後にやっぱ無しって言われても、もう止まんねぇかも」
「ん…ゆ、ゆっくり、して欲しい、けど、少しくらいなら、強くても、いい」
「いや、そうじゃ…ああ…くそ…」
すり、と熱い先端を孔に擦り付けられて、指に力が入る。窄まりを更に左右に引っ張り広げると、粘膜に当たる熱にぞくぞくした。
散々弄られた孔に、温度の違うぬるつきを感じ、ジンの先走りだと気付いて呼吸が止まる程に高揚する。
「欲し、い…ジンの、……挿れて」
「はっ…もう、知らね…っ」
「あッ…」
ゆっくりと入り込んでくる肉杭が、解しても尚狭い肉壁を広げて擦り上げて来る。思っていた以上に、ジンのモノは大きかった。
狭苦しいのか、何かを耐えてるのか、ジンの眉も寄っていて、少し怖い顔になってる。
スッと赤い目がオレを見た。
「大丈夫か?」
顔面の怖さなど馬鹿らしくなる優しい声だ。
「ん、ちょっと、くるし、…っ…」
「だよな、少し魔力流すぞ…」
苦しいし痛いけど、やめたくはない。膝裏を自分で持ち、痛みに耐えるように指先に力を込めた。
じわりと広がる熱が血流に乗って全身を甘く火照らせる。
「は、んん…んー…ッ…」
「呼吸して、イルラ、ゆっくり」
「ん…はあ…ッ、あっ…」
「身体から力抜いて、そう、上手」
ゆっくりと魔力と共にジンのペニスも割り入ってくる。
「あッ♡」
どんどん高揚していき、ジンの魔力に満たされ始めて繋がってる部分の苦しさが抜けていく。
魔力に押されるように先走りがとろとろと溢れるペニスを優しく扱かれ、気持ちよくなってくる。
「ああ…ッ♡あ♡」
「ここ、どう?」
「ん♡…へんに、なる…っ♡」
「そう」
くすりと笑うジンが腰を浅く揺する。
前立腺を擦る亀頭に腰の奥まで甘く痺れる。
「はあ…ッ、あ、あ、へん、へんになる♡やっそこばっか♡だめっ♡」
「かわい…」
「あ、あ、へんっ♡へん♡やっやっ♡」
もっとして欲しくて、カクカク腰が揺れるほどに気持ち良い。
どろどろの先走りが股を濡らしていく。
「ん、もう少し、奥にいくよ」
「あ……ッ…」
前立腺を抜けていった質量に思わず、名残惜しい声が漏れた。ジンが小さく笑う。
「…ちょっと残念?もっと変になりたかった?」
「……っ…!」
「心配すんなよ、これから気持ち良いとこいっぱい突いてやるから」
「……んッ……♡」
キスされて絆される。
いつのまにか身体中から強張りが消えていて、奥へと入り込んでくるペニスに粘膜が吸い付いてしまう。
溶けそうなほどの快感に腰が震えて、先走りは止まらずに腹を濡らしている。
「あ…、ああ…ッ…♡♡」
「はー…ここ、届いたの分かる?ほら」
「あッあッ♡」
コツコツと触れたことのない深くを優しく小突かれて、駆け抜ける危うい快感に背をしならせる。
「つって、全部は入ってねぇんだけど…」
「え…っ…あ、ぐっ…!」
ぐりっと更に奥へと押し込まれそうになって、息が詰まり身体が強張る。
「大丈夫、いっぱい気持ちよくなろうな」
魔力を流されて腰から熱が広がってくる。
全身が火照り、ペニスの先端がパクつく、頭の芯まで高揚感に支配される。
「ん、なる、気持ちよく、なりたい…ああッ!!♡♡」
奥の、入ってはいけない所へと、何かを突き破るように入って来た。更に奥へ進む肉杭にはくはくと空気を噛んだ。股にぴたりとジンの腰が密着する。
「はあ…♡イルラ、全部はいったよ、ほら」
「あ…あ…ッ♡」
最奥を埋める感覚が苦しいのに気持ち良くて、快感を逃したくなくてぎゅううとジンを抱きしめる。
中もジンのペニスを強く抱き締める。
耳にキスして、ゆっくりと小刻みに腰を揺らし出したジン。
「や、ッ♡まっ、…ああッ♡こ、これだめッ…♡」
「ダメって言われてももう遅いよ」
身体の1番深い所をジンの熱が捏ねてくる。
「ああッ♡だ、だめ、だめこれ、あんんん…ッッ♡♡♡」
腰が小刻みに震えて達してしまった。感じた事のない腹底からの絶頂に身悶える。
「…今中イキした?はじめて挿れたのに?…イルラってほんとえっち、最高なんだけど」
ジンの笑う声にカッと顔が赤くなる。
文句を言ってやろうと顔を見たら、目をギラつかせて興奮したように笑うジンがいた。
腹の奥がきゅうううと締まる。
「……っ、中、締めてくるし…かわい… あーあ…将来、絶対に跡継ぎ作らないといけないって言うから、遠慮してたのに」
「んあッ…♡」
ぼそりと呟く声は聞こえているけど、快楽に溶け始めた頭では言葉の意味を考えられなかった。
「こんな事、教えたらダメだと思って」
ペニスを指で挟まれ優しく扱かれる。
甘やかすようなもどかしい扱きに達したばかりなのに容易く勃起した。
「ああ…んッ♡……あん、あッああッ♡♡」
ゆらゆらと揺らめかす腰の動きに、内部がゆっくり捏ねられて気持ちよさに足の指先を丸めた。
どんどん強くなる腰の動きに、比例して強くなる快感と期待。押し出されるように漏れる声は、恥ずかしくなるほどに高く甘えている。
「ま、待って、もっと、ゆっくり…やッ♡やめッ♡ああッ、んんッ♡♡」
ペニスから手を離すと背中に両手を回されて抱き込まれる。熱くて分厚い身体、潰されるような圧迫に腕を回して抱きしめ返す。
強めに唇を吸われて、吸い返す。
「はあッ…もう女の子なんて抱けない身体にしてやる…」
ギラついた赤みが強くなったジンの目に潤んだオレンジが映る。
聞こえた言葉はとんでもないのに、その激しい熱情を受けたいと思ってしまう。
「…は、だめ、だ、そんなの、…だめ……♡」
形だけ諌めるけど、ねだるような声しか出ず、無意識にジンの唇を舐めると、ジンは息を飲んでから舌を押し込んできた。
「ん、ふッ♡んッ♡んはッ♡んんッ♡んーッ♡」
口を塞がれて同時に激しく打ち付けられる腰。
奥をコツコツ叩かれる感覚と、口の中を乱暴に掻き回される感覚がリンクして、えもいわれぬ快感に満たされる。
「…はあッ…イルラ、もう少し早くするよ」
「ああンッ♡う、あッあんッ♡やッ♡だめッ♡ゆっくりして…ッ♡おか、おかしくなる♡あッ♡あッ♡」
口を離されると嬌声が栓をなくしてダダ漏れた。
「これ?おかしくなる?」
「なるッ♡それッ♡ああッ♡おくこんこんしちゃやあッ♡♡ああッいくッいくいッーーー~~ッ♡」
「はー…もうまじでえろい…イク所、ちゃんと見せて」
抱き締めていた身体を離されて寂しかったが、汗だくの体には少し涼しくもあった。
ジンは両手を顔のサイドについて、上から見下ろして来る。腰だけがくっついた状態でパンパンッと打ち付けられて、身体が上下に揺れる。
「はッ♡やッ♡見、るなッ♡ああッ♡やだ、やだッ♡」
顔を隠すと両手首を掴まれて、顔のサイドでシーツに縫い付けられた。更に激しく腰が揺すられる。
「ああンッ♡あッ♡あッ♡あッ♡」
「すっげえエッチな顔してるよイルラ、涎垂れてるし」
「んんッ♡やだあッ♡やだッ♡あ♡見るな、ばかっ!ばかぁ♡見るな、よ…ッ♡♡ああ♡はげしいの、やだッ……♡…やだあッッ♡イッ、イぐッ♡ああッああンッ♡♡♡」
頭を左右に振ってイヤイヤするけど、ジンはにやにやと見つめてくる。
心臓が苦しいほどドキドキして、中をいっぱい締め上げてイキ顔を思いっきり見せてしまった。
「く…っ♡また締めてきた♡ はーまじど淫乱…かわい、こんなにちんぽ好きだったなら、もっと早くにあげれば良かったな…ね、ちんぽ気持ちい?」
「…ふー…ふー…ッ♡」
「ほら気持ち良いか教えて」
「ん、あっ…♡イ、イイ…♡ああんッ♡あん…ッあ、ん♡」
ゆっくりとジンの腰が動き出し、今度は長いストロークで前立腺を捏ねながら奥を優しく叩いて来る。
結腸に入っては抜ける感覚に煽られ、緩慢な抽送の方が好きな筈なのに、もどかしさに腰がへこへこ動いてしまう。
「腰すっごいえろい動きしてる…激しいの欲しい?」
「やだ、ッ♡あ、このまま、このまま…あ、あっ♡」
長くて遅いストロークは焦ったく、形も行き来も分かるので、妙に興奮する。
ジンは歯噛みして、動きたい衝動を耐えているようだった。その顔にぞくぞくして、腰の動きを早めてしまう。
「この腰は、誘ってんだろ…」
「やだ…♡このまま、ゆっくり、して…♡あっ♡じん、奥きもち…っ♡」
言いながら、最奥に入り込んだ鬼頭を締め上げて腰をくねらせた。「くっ…」とジンは噛み殺す声を漏らすと、腰を引いて最奥から離れてしまった。と、思った瞬間。
「ーーお゛ッッ♡♡」
ばちゅんっと聞いた事ない音と衝撃が脳天を貫いた。
「おあっ♡あ゛ッ♡んあッッ♡あッ♡や、やめッ♡やめでッ♡」
そのまま最奥を激しく穿つ腰の動きに、まともに声も出せなくなった。目の前が明滅するようだ。
「こん、なに、あそこヌルつかせて…っ…何がダメなんだよ…っ」
「あっ♡あっ♡じんッ♡激し…の、いやッ♡いやなのにッ♡」
「嫌じゃないだろ、突く度に射精してるくせに…っ」
「あッ♡あッ♡…なん、でッ…♡なんで、ッ♡きもちいッ♡ああッ♡激しいの、気持ちい♡あッあッあッ♡だめっ激し…ッ♡そこいやッ、いやだッ…ああンッ♡」
パンパンパンと激しく肌がぶつかる音を繰り返し、強めに最奥を突かれて、ジンの言う通りに勝手にペニスは短い射精を繰り返していた。
身体を捩ってもジンの手は痛いほどに手首を掴んでいて、上半身も逃げられない。
「はあっ…♡ 可愛いよイルラ、すっげえ可愛い」
「ばか!ばかァッあッあッ♡も、はげしいのやだ、ッ♡♡」
「激しいの嫌い?ほんとに?こんなに気持ち良さそうなのに」
ちゅと耳にキスされる。
全身を甘く、荒く、快感が暴れ回る。
「きらいッ♡きらッッ……だめだめッ♡イッちゃ、イッちゃうからッッ♡あッ♡ああんッッ♡♡」
「ん、イッてイルラ。ほら、イケ♡」
「あッ、ジンのばか♡いくッ♡い、くッッーー~~ッ♡♡♡」
「ん、ッく……♡」
「…はあ、あ、…中…に…ッ♡」
的確に弱い部分をごりゅと押されて、言われるまま、やられるままに絶頂を迎えた。全身をぶるぶる震わせながらも、ジンが形のいい眉を切なげに寄せた顔はしっかりと見上げていた。中に何かが吐き出される感覚に、思わず脚でジンの腰を抱いた。
ジンはそのままシーツに腕を滑らせ、オレの身体を抱いた。痺れるように痛む腕で、オレもジンを抱き締めた。
「……はー…イルラ、どうすんの」
掠れたような声にゾクリとする。
ゆっくりと顔を上げたジンは、汗で張り付く髪を掻き上げる。それだけでまた腰が疼く。
「…何がだ」
平静を装って出した声は、もっと掠れてた。
ジンの手がオレの頬を撫でる。
「…こんないけない遊び覚えちゃって。ほんとに、女の子抱けなくなるよ?」
「……オ、オマエが、もっとゆっくりしてくれたら良いだけだ」
最低な責任転嫁をしてしまった。ジンの配慮に気付いてなかった上に、誘ったのは自分だと言うのに。
魔力循環で頭が回らないせいだろうか。
「……そう?俺の我慢次第なわけ」
「あ、いや…」
「分かった。じゃあ、練習させて」
言い訳をしないとと、回らない頭をぐるぐるさせていたから、ジンの言葉の真意が分からなかった。
「…れんしゅう?」
「そう、我慢の練習。次はゆっくりするから」
ちゅっと額にキスされて、「ん…」と頷いた。目尻を垂らす笑みを浮かべた赤い瞳。うっとりした心地でぼんやり見詰めていたら、指を絡めるように手を取られた。
その手にもキスしてくる。
「ごめんな、勢い余って。痛くない?」
「……痛くない、から…ジン」
確かに手首が微かに痛む気がする。肌が白かったら痣が見えたかもしれない。痛いのは好きじゃないけど、わざとじゃないと分かるから責めない。
寧ろ、強く求められた証のようで悪い気はしなかった。
危ない思想だと思う。
でも首を傾げるジンの、少し上がる口端と熱に浮かされたような赤目を見てると、どうでも良くなる。
「練習、しよ」
「……ん、…練習失敗しても、許してね」
「…だめ…失敗する、な……あッ♡」
そんな事言いながら、きっと許すんだと分かってる。
オレも、ジンも。
.
.
.
「……朝日、昇った」
「…そうだな」
「出掛けなくて良いのか」
いつもならば既に居ない時間だ。
つい数分前まで繋がっていた身体をやっと離して、オレはジンに聞いた。身体が怠い。腹も股も変な感覚が残ってる。
だけど満足感の方が大きい。
「あー……んー…」
考えながら窓を見るジンの横顔を眺める。
ホントはもう少し、一緒に居たい
この満足感を共有してほしい
恥ずかしくなる我儘は、口にはしない。
カーテンの隙間から漏れる光に浮かぶ、彫刻のように美しい横顔のシルエットを物欲しげに見つめるだけだ。
パチンーー
指の音がしたと思ったら、微かな違和感があり、身体がさっぱりした。清潔魔術だ。
そのまま、オレのぐったりと重い身体をジンが抱えて横になった。
「今日は休み。授業まで少し寝よう、疲れたろ」
「………うん」
これも、初めての事だ。
ジンは朝までまぐわっても、殆どの場合出掛けてしまう。
嬉しかった。
もっとジンの顔を見たかった。
だけど腕の中は心地良くてオレはすぐに眠ってしまった。
軽々と抱き上げられ驚いたが、腹が立つどころかときめいてしまった。
ベッドに腰掛けたジンの膝を跨ぎ、服を脱がされながら唇を吸い付き合う。ちゅっちゅっと音が立つ度に鼓動が早まる気がする。
お互いにフェロモンを香らせていて、久々に混ざり合う強い匂いはまさに媚薬だ。
裸になるとジンの手が肌を弄って来る。
暖かくて広い手が胸を揉む。既に主張し始めていた乳首を指でくりくりと摘まれて、ぴくんと身体が反応する。唇が離れ、見上げて来る赤褐色の瞳が微笑む。
「乳首気持ちいい?」
「……ん…」
こいつは知ってる事を一々聞いて来る癖がある。
小さく頷くと、胸へと顔を埋めた。
何をされるか分かって、何もされていない乳首まで硬く尖る。
「あッ」
舌先がそれに触れて、そのまま吸われた。
「…ん…っ…あ♡それ、いい…っ♡」
口の中はあったかくて、硬くなった乳首を舌先でぐりぐりと潰される。強めに吸われるほど、腰が震えた。
もう片方では指先で乳首を丹念に捏ねられていて、胸から広がる甘い快感に背が柔らかく反った。
臀部の割れ目へと指が滑り込む。すりすりと孔を撫でる指の腹に息を飲む。
「あ…いれて…っ…ジン…♡」
「……っ…」
とびきり甘えた声でねだる。わざとだ。
ジンはこの言葉を言われると喜ぶけど、耐えるように歯噛みする。今は八つ当たりのように乳首を噛まれた。少し強めの噛み方に勃起したペニスが震える。
「あッ!噛、むな…ッ♡」
上目に見上げて来た赤みが増えた目。
(人の気も知らないで…)と言ってるようだった。
オマエのそう言う目に興奮するオレがいる。
つぷっと指が中に入って来た。
ジンの匂いや魔力を感じると勝手に柔らかくなってしまう、だらしない窄まり。こんな身体の変化がある事をオレは知らなかった。
ゆっくり侵入して来る指が前立腺に触れかけ、腰を揺らす。
「あ……ッ…ん、そこ…そこ触って…ああッ♡んッ♡」
望み通りに前立腺を引っ掻く指に喉を反り、ぢゅうっと強めに乳首を吸われて、触られていないペニスから先走りが垂れた。
「ん…ッ、はあ♡…ぁッ♡ジン、指、指増やして…中、もっと…♡」
「…ッ」
軽く腰を揺すり、指を自ら奥に招いてねだる。
息を飲むジンの気配にぞわぞわしてしまう。
胸から口を離し、濡れた唇を舐めとる舌に目がいく。
「…今日、いつも以上におねだり凄いな」
「………はやく…中、いっぱいにしてくれ…オマエので…」
否定しない。早くして欲しい。
言葉の意味を履き違えないようにと我慢してるんだろうオマエがもどかしい。
挿れたいなら、挿れていい
いや、挿れて欲しい
「ん、…あッ♡」
本数が増えて、中を満たされる。ばらばらに動く指に容易く広がる窄まり。腰がカクカク揺れて、ペニスをジンの胸に擦り付ける。
そのまま解すように指3本で中を掻き回しながら、ジンの手はオレのペニスを包んだ。
「あっ♡くッ…それ、すぐイく、っだめ…!あッ、んんんッ♡♡♡」
掌に包まれたペニスを扱かれ、中の指が更に奥に行って肉壁を擦って来る。真っ赤に腫れ上がった乳首も強く噛まれて、ジンの手の中へ射精した。
「はあ…はあ…」
「はー……褐色って、何でこんなエロいの」
汗で濡れた肌をジンは躊躇いなく舐めて来る。
呼吸も整わない内に、オレはベッドの上へと転がされた。
上に被さるジンの顔を両手で掴んで、後頭部を浮かせてキスをする。応えてくれるジンが頭を下げた。
広げた股の間で、バスタオルを剥がすジンの動きに気付いて、オレはジンの胸を押した。
「…イルラ?」
ジンは不思議そうにしつつも、素直に身体を離してくれた。いつもならこのまま兜合わせでまぐわうから、いつもと違うオレの態度に首を傾げている。
羞恥心とプライドが心臓を叩き付けてくるが、何もかも捨てて膝を曲げ、臀部をジンに晒した。
「…ジン…ここ」
臀部を掌で押さえて、くぱ、と窄まりを開く。
散々指で掻き回されて中は解れきってる筈だ。
ジンの目が、赤褐色の視線が、開かれた箇所に釘付けになるのが、ーーーー嬉しい。
「ここ、きて…」
女みたいにねだってしまう、いや女を知らないんだけど。
意識して甘えてる時よりも更に鼻にかかったような甘えた声が出て恥ずかしいが、どうしようもない程に求めてしまう。
「それは…挿れて良いってこと?指じゃなくて?」
「ん……」
こくんと頷く。
ギ、と音を立てて這い寄って来るジンの体が、脚の間に収まると期待だけで先走りが腹に落ちた。
膝にジンの手が掛かる。いつもより熱く感じた。
「本当に良いの、挿れた後にやっぱ無しって言われても、もう止まんねぇかも」
「ん…ゆ、ゆっくり、して欲しい、けど、少しくらいなら、強くても、いい」
「いや、そうじゃ…ああ…くそ…」
すり、と熱い先端を孔に擦り付けられて、指に力が入る。窄まりを更に左右に引っ張り広げると、粘膜に当たる熱にぞくぞくした。
散々弄られた孔に、温度の違うぬるつきを感じ、ジンの先走りだと気付いて呼吸が止まる程に高揚する。
「欲し、い…ジンの、……挿れて」
「はっ…もう、知らね…っ」
「あッ…」
ゆっくりと入り込んでくる肉杭が、解しても尚狭い肉壁を広げて擦り上げて来る。思っていた以上に、ジンのモノは大きかった。
狭苦しいのか、何かを耐えてるのか、ジンの眉も寄っていて、少し怖い顔になってる。
スッと赤い目がオレを見た。
「大丈夫か?」
顔面の怖さなど馬鹿らしくなる優しい声だ。
「ん、ちょっと、くるし、…っ…」
「だよな、少し魔力流すぞ…」
苦しいし痛いけど、やめたくはない。膝裏を自分で持ち、痛みに耐えるように指先に力を込めた。
じわりと広がる熱が血流に乗って全身を甘く火照らせる。
「は、んん…んー…ッ…」
「呼吸して、イルラ、ゆっくり」
「ん…はあ…ッ、あっ…」
「身体から力抜いて、そう、上手」
ゆっくりと魔力と共にジンのペニスも割り入ってくる。
「あッ♡」
どんどん高揚していき、ジンの魔力に満たされ始めて繋がってる部分の苦しさが抜けていく。
魔力に押されるように先走りがとろとろと溢れるペニスを優しく扱かれ、気持ちよくなってくる。
「ああ…ッ♡あ♡」
「ここ、どう?」
「ん♡…へんに、なる…っ♡」
「そう」
くすりと笑うジンが腰を浅く揺する。
前立腺を擦る亀頭に腰の奥まで甘く痺れる。
「はあ…ッ、あ、あ、へん、へんになる♡やっそこばっか♡だめっ♡」
「かわい…」
「あ、あ、へんっ♡へん♡やっやっ♡」
もっとして欲しくて、カクカク腰が揺れるほどに気持ち良い。
どろどろの先走りが股を濡らしていく。
「ん、もう少し、奥にいくよ」
「あ……ッ…」
前立腺を抜けていった質量に思わず、名残惜しい声が漏れた。ジンが小さく笑う。
「…ちょっと残念?もっと変になりたかった?」
「……っ…!」
「心配すんなよ、これから気持ち良いとこいっぱい突いてやるから」
「……んッ……♡」
キスされて絆される。
いつのまにか身体中から強張りが消えていて、奥へと入り込んでくるペニスに粘膜が吸い付いてしまう。
溶けそうなほどの快感に腰が震えて、先走りは止まらずに腹を濡らしている。
「あ…、ああ…ッ…♡♡」
「はー…ここ、届いたの分かる?ほら」
「あッあッ♡」
コツコツと触れたことのない深くを優しく小突かれて、駆け抜ける危うい快感に背をしならせる。
「つって、全部は入ってねぇんだけど…」
「え…っ…あ、ぐっ…!」
ぐりっと更に奥へと押し込まれそうになって、息が詰まり身体が強張る。
「大丈夫、いっぱい気持ちよくなろうな」
魔力を流されて腰から熱が広がってくる。
全身が火照り、ペニスの先端がパクつく、頭の芯まで高揚感に支配される。
「ん、なる、気持ちよく、なりたい…ああッ!!♡♡」
奥の、入ってはいけない所へと、何かを突き破るように入って来た。更に奥へ進む肉杭にはくはくと空気を噛んだ。股にぴたりとジンの腰が密着する。
「はあ…♡イルラ、全部はいったよ、ほら」
「あ…あ…ッ♡」
最奥を埋める感覚が苦しいのに気持ち良くて、快感を逃したくなくてぎゅううとジンを抱きしめる。
中もジンのペニスを強く抱き締める。
耳にキスして、ゆっくりと小刻みに腰を揺らし出したジン。
「や、ッ♡まっ、…ああッ♡こ、これだめッ…♡」
「ダメって言われてももう遅いよ」
身体の1番深い所をジンの熱が捏ねてくる。
「ああッ♡だ、だめ、だめこれ、あんんん…ッッ♡♡♡」
腰が小刻みに震えて達してしまった。感じた事のない腹底からの絶頂に身悶える。
「…今中イキした?はじめて挿れたのに?…イルラってほんとえっち、最高なんだけど」
ジンの笑う声にカッと顔が赤くなる。
文句を言ってやろうと顔を見たら、目をギラつかせて興奮したように笑うジンがいた。
腹の奥がきゅうううと締まる。
「……っ、中、締めてくるし…かわい… あーあ…将来、絶対に跡継ぎ作らないといけないって言うから、遠慮してたのに」
「んあッ…♡」
ぼそりと呟く声は聞こえているけど、快楽に溶け始めた頭では言葉の意味を考えられなかった。
「こんな事、教えたらダメだと思って」
ペニスを指で挟まれ優しく扱かれる。
甘やかすようなもどかしい扱きに達したばかりなのに容易く勃起した。
「ああ…んッ♡……あん、あッああッ♡♡」
ゆらゆらと揺らめかす腰の動きに、内部がゆっくり捏ねられて気持ちよさに足の指先を丸めた。
どんどん強くなる腰の動きに、比例して強くなる快感と期待。押し出されるように漏れる声は、恥ずかしくなるほどに高く甘えている。
「ま、待って、もっと、ゆっくり…やッ♡やめッ♡ああッ、んんッ♡♡」
ペニスから手を離すと背中に両手を回されて抱き込まれる。熱くて分厚い身体、潰されるような圧迫に腕を回して抱きしめ返す。
強めに唇を吸われて、吸い返す。
「はあッ…もう女の子なんて抱けない身体にしてやる…」
ギラついた赤みが強くなったジンの目に潤んだオレンジが映る。
聞こえた言葉はとんでもないのに、その激しい熱情を受けたいと思ってしまう。
「…は、だめ、だ、そんなの、…だめ……♡」
形だけ諌めるけど、ねだるような声しか出ず、無意識にジンの唇を舐めると、ジンは息を飲んでから舌を押し込んできた。
「ん、ふッ♡んッ♡んはッ♡んんッ♡んーッ♡」
口を塞がれて同時に激しく打ち付けられる腰。
奥をコツコツ叩かれる感覚と、口の中を乱暴に掻き回される感覚がリンクして、えもいわれぬ快感に満たされる。
「…はあッ…イルラ、もう少し早くするよ」
「ああンッ♡う、あッあんッ♡やッ♡だめッ♡ゆっくりして…ッ♡おか、おかしくなる♡あッ♡あッ♡」
口を離されると嬌声が栓をなくしてダダ漏れた。
「これ?おかしくなる?」
「なるッ♡それッ♡ああッ♡おくこんこんしちゃやあッ♡♡ああッいくッいくいッーーー~~ッ♡」
「はー…もうまじでえろい…イク所、ちゃんと見せて」
抱き締めていた身体を離されて寂しかったが、汗だくの体には少し涼しくもあった。
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「んんッ♡やだあッ♡やだッ♡あ♡見るな、ばかっ!ばかぁ♡見るな、よ…ッ♡♡ああ♡はげしいの、やだッ……♡…やだあッッ♡イッ、イぐッ♡ああッああンッ♡♡♡」
頭を左右に振ってイヤイヤするけど、ジンはにやにやと見つめてくる。
心臓が苦しいほどドキドキして、中をいっぱい締め上げてイキ顔を思いっきり見せてしまった。
「く…っ♡また締めてきた♡ はーまじど淫乱…かわい、こんなにちんぽ好きだったなら、もっと早くにあげれば良かったな…ね、ちんぽ気持ちい?」
「…ふー…ふー…ッ♡」
「ほら気持ち良いか教えて」
「ん、あっ…♡イ、イイ…♡ああんッ♡あん…ッあ、ん♡」
ゆっくりとジンの腰が動き出し、今度は長いストロークで前立腺を捏ねながら奥を優しく叩いて来る。
結腸に入っては抜ける感覚に煽られ、緩慢な抽送の方が好きな筈なのに、もどかしさに腰がへこへこ動いてしまう。
「腰すっごいえろい動きしてる…激しいの欲しい?」
「やだ、ッ♡あ、このまま、このまま…あ、あっ♡」
長くて遅いストロークは焦ったく、形も行き来も分かるので、妙に興奮する。
ジンは歯噛みして、動きたい衝動を耐えているようだった。その顔にぞくぞくして、腰の動きを早めてしまう。
「この腰は、誘ってんだろ…」
「やだ…♡このまま、ゆっくり、して…♡あっ♡じん、奥きもち…っ♡」
言いながら、最奥に入り込んだ鬼頭を締め上げて腰をくねらせた。「くっ…」とジンは噛み殺す声を漏らすと、腰を引いて最奥から離れてしまった。と、思った瞬間。
「ーーお゛ッッ♡♡」
ばちゅんっと聞いた事ない音と衝撃が脳天を貫いた。
「おあっ♡あ゛ッ♡んあッッ♡あッ♡や、やめッ♡やめでッ♡」
そのまま最奥を激しく穿つ腰の動きに、まともに声も出せなくなった。目の前が明滅するようだ。
「こん、なに、あそこヌルつかせて…っ…何がダメなんだよ…っ」
「あっ♡あっ♡じんッ♡激し…の、いやッ♡いやなのにッ♡」
「嫌じゃないだろ、突く度に射精してるくせに…っ」
「あッ♡あッ♡…なん、でッ…♡なんで、ッ♡きもちいッ♡ああッ♡激しいの、気持ちい♡あッあッあッ♡だめっ激し…ッ♡そこいやッ、いやだッ…ああンッ♡」
パンパンパンと激しく肌がぶつかる音を繰り返し、強めに最奥を突かれて、ジンの言う通りに勝手にペニスは短い射精を繰り返していた。
身体を捩ってもジンの手は痛いほどに手首を掴んでいて、上半身も逃げられない。
「はあっ…♡ 可愛いよイルラ、すっげえ可愛い」
「ばか!ばかァッあッあッ♡も、はげしいのやだ、ッ♡♡」
「激しいの嫌い?ほんとに?こんなに気持ち良さそうなのに」
ちゅと耳にキスされる。
全身を甘く、荒く、快感が暴れ回る。
「きらいッ♡きらッッ……だめだめッ♡イッちゃ、イッちゃうからッッ♡あッ♡ああんッッ♡♡」
「ん、イッてイルラ。ほら、イケ♡」
「あッ、ジンのばか♡いくッ♡い、くッッーー~~ッ♡♡♡」
「ん、ッく……♡」
「…はあ、あ、…中…に…ッ♡」
的確に弱い部分をごりゅと押されて、言われるまま、やられるままに絶頂を迎えた。全身をぶるぶる震わせながらも、ジンが形のいい眉を切なげに寄せた顔はしっかりと見上げていた。中に何かが吐き出される感覚に、思わず脚でジンの腰を抱いた。
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「……はー…イルラ、どうすんの」
掠れたような声にゾクリとする。
ゆっくりと顔を上げたジンは、汗で張り付く髪を掻き上げる。それだけでまた腰が疼く。
「…何がだ」
平静を装って出した声は、もっと掠れてた。
ジンの手がオレの頬を撫でる。
「…こんないけない遊び覚えちゃって。ほんとに、女の子抱けなくなるよ?」
「……オ、オマエが、もっとゆっくりしてくれたら良いだけだ」
最低な責任転嫁をしてしまった。ジンの配慮に気付いてなかった上に、誘ったのは自分だと言うのに。
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「……そう?俺の我慢次第なわけ」
「あ、いや…」
「分かった。じゃあ、練習させて」
言い訳をしないとと、回らない頭をぐるぐるさせていたから、ジンの言葉の真意が分からなかった。
「…れんしゅう?」
「そう、我慢の練習。次はゆっくりするから」
ちゅっと額にキスされて、「ん…」と頷いた。目尻を垂らす笑みを浮かべた赤い瞳。うっとりした心地でぼんやり見詰めていたら、指を絡めるように手を取られた。
その手にもキスしてくる。
「ごめんな、勢い余って。痛くない?」
「……痛くない、から…ジン」
確かに手首が微かに痛む気がする。肌が白かったら痣が見えたかもしれない。痛いのは好きじゃないけど、わざとじゃないと分かるから責めない。
寧ろ、強く求められた証のようで悪い気はしなかった。
危ない思想だと思う。
でも首を傾げるジンの、少し上がる口端と熱に浮かされたような赤目を見てると、どうでも良くなる。
「練習、しよ」
「……ん、…練習失敗しても、許してね」
「…だめ…失敗する、な……あッ♡」
そんな事言いながら、きっと許すんだと分かってる。
オレも、ジンも。
.
.
.
「……朝日、昇った」
「…そうだな」
「出掛けなくて良いのか」
いつもならば既に居ない時間だ。
つい数分前まで繋がっていた身体をやっと離して、オレはジンに聞いた。身体が怠い。腹も股も変な感覚が残ってる。
だけど満足感の方が大きい。
「あー……んー…」
考えながら窓を見るジンの横顔を眺める。
ホントはもう少し、一緒に居たい
この満足感を共有してほしい
恥ずかしくなる我儘は、口にはしない。
カーテンの隙間から漏れる光に浮かぶ、彫刻のように美しい横顔のシルエットを物欲しげに見つめるだけだ。
パチンーー
指の音がしたと思ったら、微かな違和感があり、身体がさっぱりした。清潔魔術だ。
そのまま、オレのぐったりと重い身体をジンが抱えて横になった。
「今日は休み。授業まで少し寝よう、疲れたろ」
「………うん」
これも、初めての事だ。
ジンは朝までまぐわっても、殆どの場合出掛けてしまう。
嬉しかった。
もっとジンの顔を見たかった。
だけど腕の中は心地良くてオレはすぐに眠ってしまった。
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