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第六章 にわかに信じ難い

第十六話 中年の恋バナ(その後)

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 中年の恋バナを長々と続けるのに耐えられず、聞いては欲しいけど需要は無いという観点から一旦普通の話も混ぜてみた。 

〈閑話休題〉

 さて前回の話を少しだけおさらいさせて頂こう。

 友達の紹介でお会いした女性がナッツの彼女だったという話。
 そして公園にでも行ってみようかという所までだったと思う。


 彼女の気持ちはこの時は分からないけれど、少なくとも私の方は完全に彼女の初めに見せた笑顔にやられてしまっていた。

 その後、公園に行って野外のステージのような作りの場所に腰を掛けて勤め先の事や、ここまでの互いの経緯などを話したかと思う。

 座る時にどれくらい距離を置いて座っていいのか分からずに少し開け過ぎてしまい、彼女が少しだけ近くに座り直した時に気が付いて恥ずかしくなった。
 後で分かったが、どうやら遠くて話が聞き取りにくかったらしい。

 
 「私、実は大森さんに助けて頂いているんですけど、、、覚えていらっしゃいますか?」
 優子さんは少し控えめに私に尋ねてくる。

 (勿論ですとも!!)と心の中で叫ぶが、そこは顔に出さずに
 「あ、あぁ、、車のタイヤの、、、」
と平静を装いながら返すと
 
 「はい。あの時は本当にお世話になりました。」
 と鶴の恩返しばりのお辞儀をされた。

 「いえ、、あの、はは。」
 (本当はもっと前から知ってましたー!)とは言えず笑って誤魔化したら会話が終わってしまった。


 (やばい、、どうしよう、、、)
 優子さんはこちらが何か言うだろうという表情で待っているようだった。


 コロコロ……

 何処からかみうちゃんが見つけて遊んでいたゴムのボールが二人の間に転がってきた。

 みうちゃんはこちらにボールを取りに来ることもなくその場に立ってこっちを見ている。
 (みうちゃん、ナイスパス!)

 「遊ぶ?」
 とボールを持って私が立ち上がるとみうちゃんの顔がぱっと明るくなった気がした。

 「いくよー。」とボール軽く蹴ると、みうちゃんがそれを追っかけて両手で掴んでこちらへ投げ返す。
 みうちゃんは無言だったが、私の心の中は『あははは、、、つかまえてご覧ー、そーら』と少々道化の様にいつもより気持ちを上げてボールを返す。

 それを繰り返して、私とみうちゃんはステージの上でボールを蹴ったり投げたりしてしばらく遊んだ。
 優子さん達の事を知りたいのとは裏腹に、何を話していいか正直分からなかったので、この時間が有り難かった。
 それを彼女はしばらく微笑みながら見ていた。

 遊んでいると、ふとみうちゃんの足が止まる。
 「どうしたの?」
と私が聞くとクスクスと座っていた優子さんが笑う。
 
 「みう、お腹が空いたんだと思います。」
 あぁ、、私は少しホッとして昼ごはんを食べに行く事を提案する。
 じゃあと近くのうどん屋に行く事に決め、車に戻ろうかとみうちゃんに声をかけた。
 
 小さなみうちゃんはこくりと頷くと優子さんにボールを預けた。
 すると唐突に私の手を取って反対のみうちゃんの手で優子さんの手を取った。

 「せーのー」
みうちゃんが言うと同時に右手に彼女の体重がかかる。
 私の手と優子さんの手の間で突然みうちゃんがブランコをしようとしている。
 
 「ちょっと、、みうっ。」
 優子さんが言うのも聞かず、みうちゃんは私達の手に体重を預け、容赦なく両足を上げた。

 いきなりでびっくりしたが、何度も繰り返されるブランコに双方段々とコツが掴めてきた。

 そしてふと思った。
 これは、、、もしかして親子がやるやつでは?
 傍から見ると確実に親子に見えるやつでは??

 なぜそれをみうちゃんが始めたのかは分からないけど、心を開いてくれた感が凄くて私はとても嬉しくなった。

 その後はうどんを一緒に食べ、みうちゃんのお陰で会話もとても弾んだ気がする。

 「え、?!大森さん年上なんですか?!」
 優子さんはうどんを詰まらせそうになりながら言う。どうやら話が合うので優子さんのお姉さんと同世代と思っていたらしい。因みに優子さんが私の3歳上だという。
 ごめんなさいと彼女は真っ赤になって謝った。
 「いえいえ、よく驚かれます。」と私が返すと、
 「なんだか凄く落ち着いてらっしゃるので。」と彼女。
 「それも、よく、言われます。」と私。
 終始和やかなやり取りで凄く有り難かった。


 「今日は有り難うございます。」
 「とても楽しかったです。」

 優子さんはみうちゃんの背中に手をやりお辞儀をさせながら言った。
 
 「あの、良かったらまた遊びに行きませんか。」
 私がそう言うと彼女はぱっと顔を明るくして
 「はい。是非また。」と言ってくれた。

 みうちゃんも私の手をギュッと握ってぶんぶんと振ってくれて、一瞬だったが嬉しそうに笑った。

 日は暮れかけて、バイバイと手を振る二人と私はまた会いたいなと思った。


  
  
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