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Part 3

Е.в 婚儀の準備と言うのは - 02

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 邸から派遣された騎士なのか護衛なのか、若い青年が二人、アトレシア大王国からの使者を宿場町に連れてきていた。

 ノーウッド王国に隣接しているアトレシア大王国の国境沿いから迂回して、コトレアの領地にたどり着くまでは2~3時間かかる。

 だが、国王陛下直々に奨励された大事な婚儀を控えるセシルのドレス作りの為、きっと、朝早くから全員が国境側を出立したはずだろう。早くにコトレアに到着する為に。

 そのおかげで、午前中に領地に到着した一行は、領主であるセシルの面会もかない、それから仕事をする予定だった。――が、セシルの好意により、全員は、邸から出るほろ馬車ばしゃに揺られながら、「宿場町へいざ観光!」 である。

 丁度、正午の時間に間に合った一行は、もちろんのこと、宿場町の中央に連れてこられ、コトレア領名物「時計塔」 なるものを初めてお目にした。

 時計塔の仕掛けが終わり、人形が扉の奥に消えると、


「きゃ、きゃああああぁぁぁぁっ……、すごいっ……!!」


と若い針子達からは大歓声が上がっていた。

 生まれてこの方、目にしたこともない「からくり」 という仕掛け人形が踊っていて、それも、自動で踊っていて、全員が目をまん丸く瞬かせる。

 そのまま観光情報館に足を運び、そこで、“観光マップ”をもらい、また大喜びするお針子達。
 宿場町での観光案内、注意事項も、しっかりお行儀よく聞いた全員は、いざ昼食へ。

 その頃には、もう、一時過ぎになっていたが、宿場町のランチタイムは、二時近くになっても賑わっているものだ。

 通りを歩く若いお針子達は大はしゃぎで、案内役の若い青年騎士二人は――さっさと、その(うるさい) 全員を“ラ・パスタ”に連れてきていた。

 あそこは、店内の内装が可愛らしく小綺麗で、領地内では、として有名なスポットになりつつある。若い女性なら、大喜びなことだろう。

 それで、騎士達は客人をレストランに残し、自分達は通りの露店から軽食を買って、それから待機だ。

 ワイワイ、ワイワイと、はしゃいでいる若い女性陣は、メニューを渡されて、また、きゃあきゃあと興奮しながら、自分の注文する品物が決まらず、そこでも、簡単に15分は過ぎていた。

 料理が運ばれてきても賑やかで、見慣れない食事に、テーブルの盛り付けや、かわいらしい小物に、見るもの聞くもの全てが新鮮で、若いお針子達の勢いは止まらない。

 仕立屋の主人である年配の男性だけがたった一人、その女性の群れに交じっているだけに、きゃあきゃあと、はしゃいでいている若い女性達の勢いに、うるささに、食事を終える頃には――すでにゲッソリである。

 食事を待っている間、食べ終わった間、お針子達が“観光マップ”を見比べて、観光スポットやら、お勧めのお店などを読み上げて、更に大喜び。

 みんなでどこに行くのか、それでも、その意見がまとまらなくて、食事中も大騒ぎ。

 やーっと、食事を終えてレストランから出てきた一行は、レストランの前の通りで、次の観光場所を決めるのに、ワイワイ、ガヤガヤと、意見が割れたまま。
 別れたまま。


「あの、お話し中申し訳ありませんが――」


 その状況を黙ってみていた若い青年騎士の一人が、仕方なく、その場に割って入って来た。
 ピタっと、お針子達の喧騒が止まる。

 普段から、目上の立場の人から命令や指示を受けることに慣れている為、そういう状況では、全員が一糸乱れず口を閉ざす。

「もしよろしければ、提案があるのですが――」

 お針子達は自分達から口を挟むことはない。だから、青年を、じっと、黙って見返している。

 青年はそれを肯定と見取り、
「この宿場町は、観光町としても栄えております。ですので、宿場町内では、女性だけで歩かれても問題なく、安全です。先程、説明されました通り、宿場町の観光スポットは、そのお手元の“観光マップ”に記載され、裏側には、宿場町の地図が乗っています」

 それで、青年騎士が、お針子達が手にしているマップを少し指さすので、それぞれの視線が自分達の手元に落ちる。

「宿場町の観光なら、この大通りにほぼ揃っていますので、この通りを、時計塔を挟んで真っ直ぐに進まれれば、道に迷うことはありません。もし問題がありましたら、店の従業員、露店の従業員、または、巡回中の護衛に声をかけていただければ、すぐに、対応いたします」

 そして、その説明と共に、お針子達の視線が、マップと大通りを行ったり来たり。

「お買い物をなさりたい方は、二人一組――などのグループで行動されるのがよろしいかと。買い物ではなく、観光を望まれる方は、このまま、我々がご案内します。観光組と、買い物組で別行動、というのが、よろしいのではないでしょうか」

 その提案は利にかなっていて、とても好条件の提案である。
 全員の視線が、チロリと、仕立屋の主人に向けられる。

 はは……と、苦笑する仕立屋の主人が、
「わたしはね、年だから、観光をするよ。まあ、君たちは、買い物にでも行ってきなさい……。カリーナも――」
「いえ、わたしも、観光に参加しますね」
「そうか」

 それで、お針子達が嬉々として、すぐに誰が買い物なのか、どこなのか――その話し合いがされる。

「――じゃあ、わたしたちは、買い物でっ」
「わたしは、こっちのお店に――」
「わたしは、観光で……」

 それぞれに、次の移動場所が決まったようである。

「では、ここで一度解散して、そうですね――」

 ふいっと、青年騎士が時計塔の時計を見上げる。今は、もう、二時半過ぎになっていた。

「五時にこの場所に集合、ということでよろしいでしょうか?」
「「「はいっ」」」
「では、みなさん、どうぞ、観光をお楽しみください」





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