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Part 3

Е. б やっと、ただいま - 09

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 婚儀は、ギルバートが臣籍しんせき降下こうかした家臣の立場となっても、国王陛下アルデーラが奨励した婚儀となる為、その準備は王宮でされるのだ。

 そうなると、婚儀でのマナーから始まっての再教育、セシルの着るドレスや身に着ける宝飾も、大急ぎで仕立て上げなければならない。

 だから、セシルには、せめて十一月以内に、領地の引き継ぎを終えてもらわなければならなかったのだ。

 王族の婚儀ともなれば、その準備だけで、半年から一年は軽くかかってしまっても不思議はない。王国を上げての盛大で晴れやかな婚儀となるのだから、大抵、王宮内だけではなく、王都だって、その準備で大忙しだ。

 王宮中の飾り付けや、王都中の飾り付けだって、盛大なものがされるものだ。
 王宮内の使用人一同、その準備に取り掛かり、余念がなく、調整を済ませなければならない。

 今回のギルバートの婚儀は、国王陛下が奨励した婚儀となるものだが、それでも、諸外国からの来賓を招待していない。特に、ノーウッド王国の王家の参加はないのだ。

 ノーウッド王国からの出席者は、ヘルバート伯爵家だけである。

 前回の婚約の儀と違い、今回は、爵位を継いだ貴族達だけではなく、アトレシア大王国中の貴族が招待されている。
 今回こそが、アトレシア大王国側で、貴族へのセシルの初お披露目となる。

 そして、迫る国の大行事となる二人の婚儀には、前回と同じように、“長老派”が寄り集まった公爵家は、誰一人招待されなかった。

 国王の重臣達からも、その決断だけは性急すぎるだろう……と、アルデーラも止められた。

 王国を上げての婚儀でまで公爵家を無視してしまったのなら、今度こそ――王国内での亀裂が明るめに出てしまい、国王陛下に見捨てられた公爵家は、貴族としてい続けることはできなくなってしまう。

 あまりに性急に事を急ぎ、“長老派”を刺激しては、これからの国王の御代みよまつりごとに差し支えがでてきてしまう……と、アルデーラは家臣達から(ほぼ懇願された状態で) 止められた。

 だが、国王陛下の意志は強く、決して自分の決断を覆す様子もなく、ギルバートの婚儀は、公爵家の参加抜きで決まったのだ。

 前回の婚約の儀での無視だけで済まされず、今回もまた侮辱された公爵家が、なにを企んで報復攻撃をしかけてくるか解らない。

 その為、王宮と王都の警備も厳重体制が敷かれ、物々しい警戒が敷かれている。
 婚儀の当日も、ほぼ全騎士団の騎士達が、王宮と王都の警備に当たらされる予定となっている。

 王宮にやって来る招待客達も、式典に参加する前に、厳しく、持ち物検査、身体検査をされることを、まだ知らない。

 貴族を侮辱しているのか、という文句が上がってこようが、王族の安否が最優先事項なだけに、その日は、騎士団の騎士達は、一切の例外を認めない。

 全騎士団で、今からだって、きたるその日に向け、警備や護衛の計画に抜かりはない。団長、副団長、そして、中隊長、ここずっと、護衛体制の話し合いで超多忙を極めている。

 王国中の貴族が参加する式典だけに、王宮内にある貴族専用の休憩室や、ゲストルーム、公開ガーデンから、大広間から、その至る場所全部に騎士を配置しなければならない。

 祭務官では、参加者の貴族のリスト作り、呼び出す順番、並ばせる準場などなど、互いの権力が交差しないように、それでも、立ち位置や順番で問題が起きないように、毎日、頭を悩ませ続けている。

 王宮中で、きたるその日に向け、婚儀が開かれる王宮の大広間の飾りつけから、設置されるテーブルや椅子から、なにからなにまで、使用人達が大忙しで準備を進めている。

 婚儀の後は祝宴が開かれる為、そのパーティーの準備だって計画され、王国中の貴族がやってくる大祝宴で出される料理のメニューだって、その仕入れだって目まぐるしく、厨房のシェフ達もてんやわんやだ。

 ラストスパートに入り始めている時期だけに、その超多忙を極め、ものすごい喧騒を生んでいる王宮に、式典の主役である令嬢がいないのは、少々、問題である。

「ギルバートは、一応、一月後にはヘルバート伯爵令嬢がコトレアを発つ予定だ、とは言っていたが」
「まあ、あの仕事量なら、無理でしょうね」

 そんな、あっさりと断言してよい状況ではないだろうに……。

 アトレシア大王国側としても、二週間後には王宮から派遣される騎士団の一団がコトレアに向かい、セシルを迎えに行くことになっている。

 その時は、もちろん、ギルバートはお留守番である。何度も、何度も、多忙な副団長を留守にさせるわけにはいかない。

「オスミンの容態はどうなんです?」
「もう、落ち着いたようだ」

 深刻な病ではなかったようで、一安心のアルデーラとアデラだ。

「オスミンだけではなく、お前も、随分、楽しんだようだが」
「ええ、まあ、そうですねえ」

 そして、いけしゃあしゃあと自慢するレイフに、アルデーラからの冷たい反応が返されるが、視察に大満足しているレイフには、その冷たい視線も全く通用していない。

「でも、まだ、全然、足りませんけどねえ」
「冗談を言うな」
「いえいえ。、視察をする場所はあるんですよ。これも驚きでしょう?」
「しっかり、休暇分の仕事を終わらせるように」

「帰って来たばかりですので」
「その程度の仕事なら、数日で終わらせれるのだろう、なのだから」
「敏腕でも限度がありまして」

 その割には、ここ毎晩、アルデーラの私室でコトレアの報告会を済ませているレイフなど、コトレアでごっそりと買い込んで来た(山のような) “お土産”品を、自慢しまくりではないか。

 そんな自慢話をする時間があるのなら、さっさと、山のような書類を片付けられるはず。

 だが、アルデーラの冷たい非難もなんのその。
 レイフの自慢話と、仕事の話は、全く別問題。プライベートと、仕事を、しっかりと区別しているレイフだった。




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