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Part 3

В.в 豊穣祭 - 08

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 本来なら、レイフ達が(勝手に) 豊穣祭に押しかけてきたので、レイフが全員分の食事を買い込むべきなのだが、レイフ達はベンチを探しに公園に向かった。

 ギルバートとクリストフは、箱持ちで手がふさがっている。

 それで、セシルが全部の会計を済ませてしまって、ギルバートはなんだか申し訳ない。

 セシルがギルバートの方に視線だけ向け、ふふ、と笑った。

「今日は、特別です。お祭りの醍醐味だいごみは買い食いですもの。今日は、人数が多いですからね。その分、たくさんの料理やらデザートが買えて、私は楽しんでいます」
「それなら良かったです」

 セシルは豊穣祭の主役だけあって、豊穣祭中でも、あまり、自分一人で楽しめるような時間は取れないのだろう。

 今までだって、“初めてのお買い物”の後は、領地の重鎮じゅうちんや商業組合からの挨拶を受けたりして、すぐに邸に戻っていた。

 それから、後夜祭まで、ほとんどセシルの姿を見ることはない。

 今回は、全額セシルに払ってもらってしまって本当に申し訳ないが、それでも、買い物をしているセシルが素直に楽しそうで、ギルバートも、今日のお祭りだけは、口うるさくセシルを止めなかったのだ。

「これは何ですか?」
「フライドチキンとチップスです」
「チップス?」

「ジャガイモを油で揚げて、塩を振りかけたものです。チキンも油で揚げたものです。食べ過ぎるとヘビーな料理ですけれど、でも、病みつきになりますわよ」
「それは楽しみです」

 そして、揚げたてのチキンや塩の匂いが混ざって、見た目だけではなく、おいしそうな料理だ。

「私もお腹が空いてきました」

 ギルバートの後ろで、さっきからたくさん買い込まれる品々を見て、クリストフも素直に口に出していた。

「確かに」
「リドウィナ様も楽しんでいらっしゃっているようですけれど、このような昼食は、大丈夫でしょうかしら?」
「そうですね――」

 あまりに驚いて、固まってしまう光景が思い浮かぶ。

 だが、セシルの好意で豊穣祭に参加させてもらっているリドウィナは――きっと、文句は言わないだろう。

 あの性格は、文句があっても、きっと、口には出さず、心内で黙っているような感じだ。

 おまけに、偏屈で有名な兄のレイフの手伝い役で、毎日、レイフと顔を合わせていながら、未だに生き延びている令嬢である。

 それだけでものすごい驚きの事実ではあって、きっと、文句をあまり口に出さない性格のおかげか、レイフからいじめられたり、追い出されずには済んでいたのだろう。

 それなら、豊穣祭での外で食べる昼食形式に言葉もなく驚いてしまいそうではあるが、それほど問題にすることでもないと、ギルバートも考えている。

 セシルは、たくさんの露店に並んでいる料理を買い込むだけではなく、ありとあらゆるデザートも、買い込んでいくようだった。

 すぐに、ギルバートとクリストフの持っている箱は、たくさんの皿で埋め尽くされていた。

「そちらもお持ちしますが?」
「いいえ。お気になさらずに。片方の手を空けて置くのは、便利ですもの」

 そして、最後の箱はセシルの左手に。

 レイフ達には、常時、経験組で腕のある騎士達が十人ついている。

 私服で護衛している騎士達で、それとは別に、ギルバートの側には、クリストフを入れて、いつもの五人の騎士達が。

 セシルの護衛の二人は、今日は一緒に回ってきているが、どうやら、セシルに指示されて、婚約してから増やした残りの四人は、一緒に付き添ってこなかったようだった。

 レイフ達の護衛に、ギルバートの護衛、セシルの護衛まで入れたら、ものすごい数になってしまう。
 それで、セシルも残りの四人は控えさせたのだろう。

 セシルが、目線だけで、後ろにいたユーリカに合図を送った。

 ユーリカがすぐに駆け寄ってきて、
「どうしました?」

「荷物持ち、よろしくお願いしますね」
「わかりました」

 それで、セシル達が持っている箱を見下ろし、ユーリカも自分の役目をすぐに理解する。

「何人分でしょうか?」
「そうですねえ――。11人分くらいかしら? ユーリカ達はどうします? 一緒に参加しますか?」

「いえ、お気になさらないでください」
「それなら、一応の為に、12人分のコップとおしぼりをお願いね」

「わかりました。用意して公園に向かいますので、マスターは先に向かってください」
「わかりました。それなら、ギルバート様、行きましょう?」
「わかりました」

 ユーリカをその場に残し、セシル達はゆっくりと公園に向かう。

 昼の時間になって、露店に並ぶ観光客もたくさんで、公園に向かう人込みも、たくさん増えだしていた。

 裏通りを超えていくと、開けた広場が目に入ってくる。

 どうやら、シリルは、簡単に、人数分用のベンチを見つけられたようだった。

「これはまた、たくさんですねえ」

 ギルバート達の手にぶら下がっている箱を見て、レイフが瞳を細めていく。

「おじうえっ! たくさんのごはんですか? すごいです」
「そうだね。色々、試してみられるから、私も楽しみだ」

 片方にレイフ、オスミン、その隣にリドウィナとリドウィナの付き人が座っていた。

 騎士達は、テーブルから少し離れた場所を囲んでいる。

「皆様、どうぞ」

 シリルは、皆を待っている間、レイフの前に座っていたが、ギルバートがやって来て、すぐに席を立ち、場所を空ける。

 ギルバートは、箱をテーブルの上に置き、ギルバートの隣にセシルが腰を下ろす。その隣に、クリストフとシリルが。

「ギルバート様の護衛の皆さんも、ご一緒にどうぞ」
「いえ、我々は……」

「他の護衛の騎士達がいますから、順番で食事をした方が、効率的でしょう?」

 残りの四人の視線が、ギルバートに向けられた。

 ギルバートが簡単に頷いたので、四人は、シリルから一つ離れて、席を取るようだった。

「反対にも座った方がいい。縦長だと、食事を回すのが大変だから」
「わかりました」

 二人はテーブル側を廻ってきて、騎士達の向かい側の席に座っていく。

 その間に、木箱から、セシルが、手慣れた風に、買いだした食事の皿をテーブルの上に並べていく。

「たくさん買ってきましたので、色々試してくださいね、オスミン様」
「はいっ!」

 テーブルの上に並べられていく皿を見ているだけでも、オスミンの前で、今まで見たこともないような食事ばかりが並べられていく。

「リドウィナ様も、このような――ピクニック形式の食事方法は、初めてでいらっしゃるかもしれませんが、今日はお祭りということで、ふふ、あまり食事のマナーなど、お気になさらずに?」
「は、はい……」

 だが、こんな風に、外で、おまけに、全員が一緒になってテーブルを囲み、テーブルの上には、次から次へと皿が並べられていくなど、リドウィナにとっては初めての経験である。




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読んでいただき、ありがとうございます。
Gràcies per llegir aquesta novel·la
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