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Part 3

* В.в 豊穣祭 *

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 豊穣祭は晴天。

 コトレア領は、秋でもまだ日差しが暖かい日が長く続く。十月初めに開かれる豊穣祭の時期では、大抵、晴天続きの気候で、気温も暖かく穏やかな日が訪れることが常だ。

 今年は領地の十周年の記念祭とあって、豊穣祭では、一日中、多彩なイベントが盛りだくさんだ。

 その為、通常であったのなら、豊穣祭の開会式は八時半とされていたのだったが、今年は、朝早く、八時を予定している。

 例年では、八時半の開会式で、それから、領民達が一斉にお店の準備に取り掛かり、観光客などが開会式の公園からゾロゾロと大通りに戻ってくる九時頃には、露店のお店の準備が整っている、という状況だ。

 今年は、開会式の時間が早まった為、もう、ほとんどの領民達が五時起きで、朝早くから、豊穣祭に向けての準備に余念がない。

 豊穣祭の一日は長い。
 朝早くから始まり、夜の後夜祭。そして、酒盛りをしてゆっくりと夜が更けていく。
 今年の豊穣祭は、一日がもっと長くなることだろう。

「おはようございます、皆様。昨夜はゆっくりとお休みになられたでしょうか?」

 セシルの邸の前には、使用人達が全員ズラリと参列している。

 ヘルバート伯爵一家、ギルバート達と王国騎士団の護衛達、そして、今回のゲストであるレイフ達がその前で揃っている。

「セシルじょう、おはようございますっ」
「おはようございます、オスミン様。今朝は早起きになってしまいましたが、お疲れではありませんか?」
「だいじょうぶですっ!」

 朝早くでも、浮かれているオスミンは元気100倍である。

 その隣で、すでに長い溜息ためいきを出して疲れ切っているレイフだ。

 初の旅行、初の長旅、初の豊穣祭。

 オスミンにとってこの旅行は、もう、全てが全て初めてのことばかりだけに、興奮しすぎているオスミンなど、世話係のメイドがオスミンを起こしにくる大分前から、すでに目覚めていた。

 嬉しくて、豊穣祭が気になってしまって、興奮しすぎているだけに、ベッドの上で朝早くからモゾモゾ、モゾモゾと動いている気配が止まない。

 今回はオスミンを同行してきた責任があるので、(本当に) 仕方なく、オスミンと一緒のベッドで寝ているレイフなど、朝っぱらから隣でうるさく動き回る甥のせいで、ゆっくりと寝ることもできず。

 うるさいから静かにしていなさい、とは叱ってみたが、大人しく返事をしたオスミンは、五分ほど黙ってベッドの中で静かに固まっているのだったが、すぐにまた、興奮が止まらず、モゾモゾ、モゾモゾと、ベッドの上で動いてしまっていた。

 すでに叱り飛ばすこともできず、叱ることも諦めるしかないレイフは、隣でモゾモゾうるさい甥を無視していても、もう一度、寝るに寝られず。

 結局、世話係のメイド達が室内に入ってくると同時に、オスミンなどベッドから飛び降りてしまい、早速、着替えを済ませようと、メイドを急かしていたくらいだ。

 着替えを済ませると、朝早くから豊穣祭に参加するので、軽食をどうぞと、サンドイッチが部屋に運ばれてきた。

 小腹を満たす程度にもならないものだったが、一応、腹ごしらえを終えた後も、まだ豊穣祭にいかないのかと、そればかりオスミンにせっつかれて、そのオスミンを無視することを決めたレイフだったが、オスミンはそのレイフの態度もなんのその。

 鼻歌が出てきそうなほどのご機嫌さで、部屋についている窓から外を眺めたり、時間を確認して、まだか、まだかと、部屋の中をうろつき回ったり。

 普段から、小さな子供など近寄らせないし、近寄りもしないレイフの生活で、一日中、こんな小さな子供と生活しなければならないなど、レイフにとっても初めてである。

 移動中の間も、オスミンが、随分、はしゃぎ過ぎているな、とはレイフも観察していたものだが、セシルの邸に到着して以来、その度合いが更に高まって、もう、レイフの手には負えないほどだ。

「これから、ほろ馬車に乗って、宿場町の方に向かいます。そこから、会場まで少し歩くことになりますが、よろしいですか?」
「だいじょうぶですっ」

「そうですか。それは、良かったです。では、どうぞ、幌馬車に乗り込んでくださいね」
「わかりましたっ」

 オスミンの目の前にあるのは、窓のない大きな馬車だ。セシルは、ほろ馬車、と言った。

 だが、オスミンはほろ馬車という概念をしらない。生まれて初めて見た乗り物だった。
 窓がついていないから、外が丸見えで、天井は布がかぶさっている乗り物など、生まれて初めてだ。

 ワクワクが止まらず、ほろ馬車の後ろについている階段を登ってみた。

 すぐ後ろから、叔父であるギルバートが一緒についてきている。

「オスミン、一番奥の席に座りなさい」
「はい、おじうえ。でも……、どっちですか?」

 広いほろ馬車の中には両側にシートがつけられている。

「では、左側に座りなさい」
「はいっ」

「走らないように」
「はいっ」

 走り出しかけたオスミンの足並みが、ピタリ、と止まり、注意された通り、ほろ馬車の中でもゆっくりと歩いていくオスミンだ。

 オスミンが一番端のシートに腰を下ろすと、ギルバートがその隣に座った。
 ギルバートの隣にレイフが座り、レイフの隣にはクリストフが。

 向かいにはヘルバート伯爵一家が座り、その横に護衛達が。
 リドウィナと、リドウィナの付き人はクリストフの隣に。

 それから、残りの護衛達がゾロゾロとほろ馬車の中に上がっていく。その全員は、シートには腰を下ろさず、真ん中の空き場所で膝をついてバランスを取るだけのようだった。

「セシルじょうは、のらないのですか?」
「そうだね。セシル嬢は、違う馬車で会場に向かうそうなんだ」

「どうしてですか?」
「それは、豊穣祭のお楽しみだろうね」
「おたのしみ?」

 なぜ、セシル一人だけが一緒にほろ馬車に乗らないのか、その理由が判らないオスミンではあったが、叔父のギルバートが、お楽しみだ、というくらいだから、問題ではないのだろう。




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読んでいただき、ありがとうございます。
Bu romanı oxuduğunuz üçün təşəkkür edirəm
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