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Part 3
Б.г やっぱり - 04
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今までは、ギルバート達の父親が国王陛下だった。前国王陛下は穏やかで、家臣にも平等な平和な国王だった。
だが、混乱や動乱では――その力が及ばなかった。
だから、中立派も一応の距離を見て、距離を取って、手に負えないであろう混乱に巻き込まれないようにしていたのかもしれない。
だが、今は、“長老派”に真っ向から立ち向かう、反対勢力を掲げている若い国王が即位した。
これから新国王陛下の政策次第により――国政も、情勢も、一転して変化してもおかしくはない状況だ。
ギルバートの簡潔な説明を聞いているセシルは、こんな説明が聞きたかったはずではないことも、ギルバートは察していた。
ギルバートが胸内で微かな溜息をこぼし、
「ガルブランソン侯爵家には、現在19歳になる、長女のリドウィナ嬢がいます。ガルブランソン侯爵家では、リドウィナ嬢を私の妃候補として、ここ数年、王家に婚約話を持ち掛けていました」
「そうですか」
全く態度が変わらないセシルに、ギルバートの顔が少ししかめられる。
「ですが――私は、元々、婚約する気はありませんでした。私の個人的な意思は関係なく、最終的には、そのような状況になっていたかもしれません。ですが、今は、私はあなたに出会ってしまった。とてもではないが、他の令嬢と婚約などできません。私は、あなた以外の令嬢を愛せないんです」
「……っ……いえ……」
浮気していた場面を見つかってしまったかのような勢いで、ギルバートが弁面をしてくるものだから――おまけに、ものすごい真剣で、また愛の告白などしてくるものだから、セシルも心の準備がなく、面食らってしまう。
「……そのような、ことを、疑ったのではございませんの……」
「そう……、ですか……」
良かった……と、ギルバートの口に出されぬ安堵の息が漏れる。
シーンと、少々、気まずい沈黙が降りてしまった。
「――ガルブランソン侯爵家の名前を、どこでお聞きになったのですか?」
「ただ、耳にしまして」
だが、ギルバートの質問に答えたのではない。
この婚約の儀では、アトレシア大王国に到着してからすぐに、セシルは多忙であったし、挨拶以外で、セシルが他の貴族に接する機会は全くない、といっても過言ではない。
そうなると、以前、セシルが王宮に滞在していた時にでも――まさか、ガルブランソン侯爵家の話を、耳にしたというのだろうか。
セシルの元で仕えている、あの“精鋭部隊”の子供達もいる。
ギルバートの知らない場で、セシルが王宮内や、王国の話を、ある程度、調べさせていても、全く不思議はない。
やっぱり、抜け目のない女性である。
「ガルブランソン侯爵家は、二家のうちの一つですか? それとも多数派ですか?」
「多数派ですよ」
「では、ギルバート様の婚約が決まり、ガルブランソン侯爵は、少々、おかんむりでは?」
「それは――ガルブランソン侯爵の計画は台無しになってしまいましたが、だからと言って、それで寝返るほど、馬鹿な方でもありませんよ。しばらくは、少々、気を害しているかもしれませんが。――だからと言って、あなたに攻撃してくるようでしたら、私も黙ってはいませんよ」
そんなことを、しっかりと、本気で、セシルに安心させてこなくても、セシルはその程度の邪魔は、問題にしていないのに。
「ありがとうございます、ギルバート様」
「私は本気です。あなたは、他国から、このアトレシア大王国に嫁いできてくださるのです。そのことで、嫌な思いをされるのは、あなたのせいではありません」
セシルのことになると、このギルバートは本当にどこまで真摯で、心配していて、気遣っていて、一歩も譲らなくて。
ここまで真剣に思われている令嬢など、そうそういないだろう。
「ギルバート様に思われる女性は、本当に、幸せな女性ですわよね」
「あなたしかいませんが」
「ですから、私はその“幸せな”女性に入るのだと思いますわ。私は、まだギルバート様のことをよく存じておりませんが、それでも、これからギルバート様を知っていく機会があることを、嬉しく思います。そうやって知り合っていくことも、楽しみにしております」
「……そう、ですか……」
嬉しすぎて、ほんの微かにだが、ギルバートの目元が赤らんでいる。
ふふと、セシルが笑んで、
「ギルバート様。お願いがございまして」
「お願いですか? なんでしょう?」
「少し、国王陛下とお話ししたいことがございます。申し訳ございませんが、私がここにいる間、お時間をいただけないか、ギルバート様からお尋ねしていただきたいのですが」
「それは構いませんが――」
今までの話の流れからすると――まさか、ガルブランソン侯爵家のことで?
セシルの意図が読めなくて、ギルバートも少々考えてしまうが、セシルが、理由もなしに国王陛下を呼びつけることなどしないのは、百も承知だ。
「わかりました。この後すぐに、陛下にお願いしてみます」
「ありがとうございます」
「私も、その場にいては?」
「もちろん、ギルバート様もご一緒に。それから、王妃陛下と宰相閣下も、ご一緒によろしくお願いいたしますね」
国王陛下のみならず、王女トリネッテを抜かした王族全員が揃ってなど、一体、どんな重大な話をする気なのだろうか。
「――わかりました」
「ありがとうございます」
穏やかな笑みを口元に浮かべ、態度が変わらないセシルの意図は、さっぱり判らないままである。
だが、混乱や動乱では――その力が及ばなかった。
だから、中立派も一応の距離を見て、距離を取って、手に負えないであろう混乱に巻き込まれないようにしていたのかもしれない。
だが、今は、“長老派”に真っ向から立ち向かう、反対勢力を掲げている若い国王が即位した。
これから新国王陛下の政策次第により――国政も、情勢も、一転して変化してもおかしくはない状況だ。
ギルバートの簡潔な説明を聞いているセシルは、こんな説明が聞きたかったはずではないことも、ギルバートは察していた。
ギルバートが胸内で微かな溜息をこぼし、
「ガルブランソン侯爵家には、現在19歳になる、長女のリドウィナ嬢がいます。ガルブランソン侯爵家では、リドウィナ嬢を私の妃候補として、ここ数年、王家に婚約話を持ち掛けていました」
「そうですか」
全く態度が変わらないセシルに、ギルバートの顔が少ししかめられる。
「ですが――私は、元々、婚約する気はありませんでした。私の個人的な意思は関係なく、最終的には、そのような状況になっていたかもしれません。ですが、今は、私はあなたに出会ってしまった。とてもではないが、他の令嬢と婚約などできません。私は、あなた以外の令嬢を愛せないんです」
「……っ……いえ……」
浮気していた場面を見つかってしまったかのような勢いで、ギルバートが弁面をしてくるものだから――おまけに、ものすごい真剣で、また愛の告白などしてくるものだから、セシルも心の準備がなく、面食らってしまう。
「……そのような、ことを、疑ったのではございませんの……」
「そう……、ですか……」
良かった……と、ギルバートの口に出されぬ安堵の息が漏れる。
シーンと、少々、気まずい沈黙が降りてしまった。
「――ガルブランソン侯爵家の名前を、どこでお聞きになったのですか?」
「ただ、耳にしまして」
だが、ギルバートの質問に答えたのではない。
この婚約の儀では、アトレシア大王国に到着してからすぐに、セシルは多忙であったし、挨拶以外で、セシルが他の貴族に接する機会は全くない、といっても過言ではない。
そうなると、以前、セシルが王宮に滞在していた時にでも――まさか、ガルブランソン侯爵家の話を、耳にしたというのだろうか。
セシルの元で仕えている、あの“精鋭部隊”の子供達もいる。
ギルバートの知らない場で、セシルが王宮内や、王国の話を、ある程度、調べさせていても、全く不思議はない。
やっぱり、抜け目のない女性である。
「ガルブランソン侯爵家は、二家のうちの一つですか? それとも多数派ですか?」
「多数派ですよ」
「では、ギルバート様の婚約が決まり、ガルブランソン侯爵は、少々、おかんむりでは?」
「それは――ガルブランソン侯爵の計画は台無しになってしまいましたが、だからと言って、それで寝返るほど、馬鹿な方でもありませんよ。しばらくは、少々、気を害しているかもしれませんが。――だからと言って、あなたに攻撃してくるようでしたら、私も黙ってはいませんよ」
そんなことを、しっかりと、本気で、セシルに安心させてこなくても、セシルはその程度の邪魔は、問題にしていないのに。
「ありがとうございます、ギルバート様」
「私は本気です。あなたは、他国から、このアトレシア大王国に嫁いできてくださるのです。そのことで、嫌な思いをされるのは、あなたのせいではありません」
セシルのことになると、このギルバートは本当にどこまで真摯で、心配していて、気遣っていて、一歩も譲らなくて。
ここまで真剣に思われている令嬢など、そうそういないだろう。
「ギルバート様に思われる女性は、本当に、幸せな女性ですわよね」
「あなたしかいませんが」
「ですから、私はその“幸せな”女性に入るのだと思いますわ。私は、まだギルバート様のことをよく存じておりませんが、それでも、これからギルバート様を知っていく機会があることを、嬉しく思います。そうやって知り合っていくことも、楽しみにしております」
「……そう、ですか……」
嬉しすぎて、ほんの微かにだが、ギルバートの目元が赤らんでいる。
ふふと、セシルが笑んで、
「ギルバート様。お願いがございまして」
「お願いですか? なんでしょう?」
「少し、国王陛下とお話ししたいことがございます。申し訳ございませんが、私がここにいる間、お時間をいただけないか、ギルバート様からお尋ねしていただきたいのですが」
「それは構いませんが――」
今までの話の流れからすると――まさか、ガルブランソン侯爵家のことで?
セシルの意図が読めなくて、ギルバートも少々考えてしまうが、セシルが、理由もなしに国王陛下を呼びつけることなどしないのは、百も承知だ。
「わかりました。この後すぐに、陛下にお願いしてみます」
「ありがとうございます」
「私も、その場にいては?」
「もちろん、ギルバート様もご一緒に。それから、王妃陛下と宰相閣下も、ご一緒によろしくお願いいたしますね」
国王陛下のみならず、王女トリネッテを抜かした王族全員が揃ってなど、一体、どんな重大な話をする気なのだろうか。
「――わかりました」
「ありがとうございます」
穏やかな笑みを口元に浮かべ、態度が変わらないセシルの意図は、さっぱり判らないままである。
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