386 / 520
Part 3
Б.г やっぱり - 02
しおりを挟む
「良かったじゃないですか。ご令嬢が、実は、ものすごい美しい女性だったというのは、ギルバート様が一番に発見されたことですし、当座は、アトレシア大王国の貴族以外は、ほとんど誰も知らない事実なんですから」
無理に乗せられているような気がしてならないのだが、そこで、ギルバートも降参して、長い息を吐き出した。
「まあ、(無性に) 腹が立つのはよーく理解できますが、あのバカ息子は、お家お取り潰しですからね」
「その後の行方は?」
「それは存じません。宰相にお聞きになってはいかがですか?」
「そうだな」
「ついでに。あれ以上、悪さができないように、もっと痛めつけていただく、とか?」
「お前は……」
ちゃっかり、宰相であるレイフにそんなことを頼めば? などと、クリストフも悪巧みに長けている。
「いいではないですか。大体、侯爵家の子息でありながら、公式の場で、貴族の令嬢を侮辱するなど、言語道断の行い」
こう見えても、クリストフは紳士なのである。
セシル自身が侮辱されたどうとは関係なく、女性に対して、非情で失礼極まりない行為は、決して許せない。
「確かに、そうだが」
「ええ、そうですよ。やっぱり、ここは、一発、ぎゃふんと言わせておくべきですね」
「ぎゃふん、ね。――見事なまでにされたと思ったが」
「えぇえ、見事でしたね。でも、念には念を、でしょう」
「まあ……、そうかもしれないが」
それで、クリストフに、随分、不穏な考えを植え付けられたように思えないでもないが、ギルバートはレイフに会いに行った時に、一応、そんなこと(悪巧み) も口には出していたのだった。
もちろん、乗り気な宰相サマがその後どう動いたかなど、誰も知る由はなし。
* * *
「さすが、王宮図書館ともなると、ものすごい本の量でしたわ」
セシルは、午前中の王宮図書館の見学を、大層、満足したらしい。
ギルバートとの婚儀を終えたセシルは、本来なら、臣籍降下を済ませていない王子殿下の婚約者となるから、厳重に警戒された王宮で、大人しくしているべきなのである。
だが、ギルバートは、退屈な王宮にセシルを縛り付けることはしたくない。
その上、王宮に一人残しておいたら、またいつどこで、宰相である兄のレイフが邪魔をしてくるか判ったものではないから、
「観光はどうですか?」
と、セシルを誘っていたのだ。
王宮図書館に行ってみたい、というセシルの希望で、ギルバートの推薦状を持って、午前中、セシルは王宮図書館を訪ねていたのだ。
「また、訪ねることができるといいのですけれど」
「もちろんですよ」
その程度の希望など、すぐに叶うものだ。
「なにか、興味の引くものでもございましたか?」
「ええ、そうですわね。たくさんあり過ぎて、目移りしてしまったのですけれど。ですが、今回は、少々、建築関係の書物に目を通させていただきましたの」
「建築関係?」
「ええ、そうです。博物館建築に際して、なにか、為になる構想はないかな、と思いまして」
「博物館? ――ああ、領地の次の十年計画の一つでしたね」
「ええ、そうです。今は、博物館にどのようなものを展示するか、という案や意見を集めているところなのですが、せめて、今年中には、最初の建築概要は決めておきたいものですから。どんな外装か、広さはどのくらいか、その程度ですけれど」
「なるほど」
「観光情報館に提示されている領地の歴史の資料も、大分、増えてきましたし、それらは、博物館の方に移動しようと考えておりますの」
「あの歴史の資料を読んで、私も本当に驚きました。とても為にもなりましたし」
「全部、読んでくださったんですか?」
「もちろんです。あのような領地の歴史の資料がきちんと揃っていて、年代ごとの事柄なども詳細に提示されていて、とても為になりました。いつも、あのように資料を記録なさっているのですか?」
「ええ、そうです。時間が経ってから昔を振り返って、あんなことがあったな、など記録に残っていたら、きっと懐かしく、面白いだろうなと思いまして。それで、その時々の事柄などを、記録しておいたのです」
「あれは、とても為になりますね。読んでいても、興味深かったです」
「ありがとうございます」
「他には、どのようなものを、博物館に置かれるのですか?」
「今の所、時計塔の出来上がった過程や、ミニアチュア版の模型なども、飾ろうかと考えております」
「ミニアチュア? ――あっ、時計塔ですか? 完成なさったのですか?」
「ええ、完成しましたの。完成式の式典では、大盛況でしたわ」
「そうですか。一体、どのようなものなのか、想像もつきません」
ギルバートがセシルに会いに行った時は、観光情報館は建築用の足場ができていて、幕が張られたり、作業中の人員がたくさん出入りしたりと、一体、何を作っているのかは見えなかった。
「ふふ。とても素晴らしい出来になりましたの。もう、領地の観光名所となるくらいですわ」
「そうですか」
ああ、ギルバートも時計塔を見られる機会があるのだろうか。
「ギルバート様?」
「はい、なんでしょう?」
「今年の豊穣祭に、ギルバート様をご招待したいと考えておりますが、ご多忙でいらっしゃいますか?」
「いえ。ご迷惑でなければ、是非、豊穣祭に参加させてください」
ギルバートが豊穣祭に参加できるのなら、仕事が忙しかろうと、徹夜でもして、さっさと仕事を片付けてしまえばいいだけのこと。
婚儀が来年初めになるのだろうから、その間、セシルに簡単に会うことは難しい。ほぼ、無理である。
だから、豊穣祭でセシルに会いに行けるだけではなく、後夜祭でのセシルの美しい姿を見られるのなら、ギルバートは、何をしてでも、絶対に、豊穣祭に顔を出すつもりでいる。
無理に乗せられているような気がしてならないのだが、そこで、ギルバートも降参して、長い息を吐き出した。
「まあ、(無性に) 腹が立つのはよーく理解できますが、あのバカ息子は、お家お取り潰しですからね」
「その後の行方は?」
「それは存じません。宰相にお聞きになってはいかがですか?」
「そうだな」
「ついでに。あれ以上、悪さができないように、もっと痛めつけていただく、とか?」
「お前は……」
ちゃっかり、宰相であるレイフにそんなことを頼めば? などと、クリストフも悪巧みに長けている。
「いいではないですか。大体、侯爵家の子息でありながら、公式の場で、貴族の令嬢を侮辱するなど、言語道断の行い」
こう見えても、クリストフは紳士なのである。
セシル自身が侮辱されたどうとは関係なく、女性に対して、非情で失礼極まりない行為は、決して許せない。
「確かに、そうだが」
「ええ、そうですよ。やっぱり、ここは、一発、ぎゃふんと言わせておくべきですね」
「ぎゃふん、ね。――見事なまでにされたと思ったが」
「えぇえ、見事でしたね。でも、念には念を、でしょう」
「まあ……、そうかもしれないが」
それで、クリストフに、随分、不穏な考えを植え付けられたように思えないでもないが、ギルバートはレイフに会いに行った時に、一応、そんなこと(悪巧み) も口には出していたのだった。
もちろん、乗り気な宰相サマがその後どう動いたかなど、誰も知る由はなし。
* * *
「さすが、王宮図書館ともなると、ものすごい本の量でしたわ」
セシルは、午前中の王宮図書館の見学を、大層、満足したらしい。
ギルバートとの婚儀を終えたセシルは、本来なら、臣籍降下を済ませていない王子殿下の婚約者となるから、厳重に警戒された王宮で、大人しくしているべきなのである。
だが、ギルバートは、退屈な王宮にセシルを縛り付けることはしたくない。
その上、王宮に一人残しておいたら、またいつどこで、宰相である兄のレイフが邪魔をしてくるか判ったものではないから、
「観光はどうですか?」
と、セシルを誘っていたのだ。
王宮図書館に行ってみたい、というセシルの希望で、ギルバートの推薦状を持って、午前中、セシルは王宮図書館を訪ねていたのだ。
「また、訪ねることができるといいのですけれど」
「もちろんですよ」
その程度の希望など、すぐに叶うものだ。
「なにか、興味の引くものでもございましたか?」
「ええ、そうですわね。たくさんあり過ぎて、目移りしてしまったのですけれど。ですが、今回は、少々、建築関係の書物に目を通させていただきましたの」
「建築関係?」
「ええ、そうです。博物館建築に際して、なにか、為になる構想はないかな、と思いまして」
「博物館? ――ああ、領地の次の十年計画の一つでしたね」
「ええ、そうです。今は、博物館にどのようなものを展示するか、という案や意見を集めているところなのですが、せめて、今年中には、最初の建築概要は決めておきたいものですから。どんな外装か、広さはどのくらいか、その程度ですけれど」
「なるほど」
「観光情報館に提示されている領地の歴史の資料も、大分、増えてきましたし、それらは、博物館の方に移動しようと考えておりますの」
「あの歴史の資料を読んで、私も本当に驚きました。とても為にもなりましたし」
「全部、読んでくださったんですか?」
「もちろんです。あのような領地の歴史の資料がきちんと揃っていて、年代ごとの事柄なども詳細に提示されていて、とても為になりました。いつも、あのように資料を記録なさっているのですか?」
「ええ、そうです。時間が経ってから昔を振り返って、あんなことがあったな、など記録に残っていたら、きっと懐かしく、面白いだろうなと思いまして。それで、その時々の事柄などを、記録しておいたのです」
「あれは、とても為になりますね。読んでいても、興味深かったです」
「ありがとうございます」
「他には、どのようなものを、博物館に置かれるのですか?」
「今の所、時計塔の出来上がった過程や、ミニアチュア版の模型なども、飾ろうかと考えております」
「ミニアチュア? ――あっ、時計塔ですか? 完成なさったのですか?」
「ええ、完成しましたの。完成式の式典では、大盛況でしたわ」
「そうですか。一体、どのようなものなのか、想像もつきません」
ギルバートがセシルに会いに行った時は、観光情報館は建築用の足場ができていて、幕が張られたり、作業中の人員がたくさん出入りしたりと、一体、何を作っているのかは見えなかった。
「ふふ。とても素晴らしい出来になりましたの。もう、領地の観光名所となるくらいですわ」
「そうですか」
ああ、ギルバートも時計塔を見られる機会があるのだろうか。
「ギルバート様?」
「はい、なんでしょう?」
「今年の豊穣祭に、ギルバート様をご招待したいと考えておりますが、ご多忙でいらっしゃいますか?」
「いえ。ご迷惑でなければ、是非、豊穣祭に参加させてください」
ギルバートが豊穣祭に参加できるのなら、仕事が忙しかろうと、徹夜でもして、さっさと仕事を片付けてしまえばいいだけのこと。
婚儀が来年初めになるのだろうから、その間、セシルに簡単に会うことは難しい。ほぼ、無理である。
だから、豊穣祭でセシルに会いに行けるだけではなく、後夜祭でのセシルの美しい姿を見られるのなら、ギルバートは、何をしてでも、絶対に、豊穣祭に顔を出すつもりでいる。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
箱入り悪役令息は兄達から激重執着されている事に気づいていません!
なつさ
BL
『悪役令息に転生したので死なないよう立ち回り始めたが何故か攻略対象達に執着されるように』の続編シリーズ
今回は前作エヴァの息子達が主人公に!
エヴァの息子として生まれたユキは、兄達に蝶よ花よと持て囃されたせいで正真正銘わがまま悪役令息に。
しかし、世間知らずなせいでド天然なユキは、ユキに恋情を抱くヤンデレ兄達から激重執着を抱かれてることに気づかず・・・
「僕は完璧だから皆から崇め称えられて当然なんだ!ん?どうしたの兄さん。えっどうしてそんなとこ触るの?んっ・・・僕が可愛いから?あっ…♡ん…そっかぁ・・・それなら仕方ないのかぁ・・・」
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
【本編完結】至高のオメガに転生したのに、最強ヤンデレアルファの番に攻められまくっています
松原硝子
BL
安村誠司、27歳。職業、実家暮らしの社畜サラリーマン。
これまでの人生も今までの人生も、モブとして地味に生きていく予定だったーー。
ところがある日、異世界に生きる”シュプリーム”と呼ばれる至高のオメガ・若柳飛鳥(わかやなぎあすか)に転生してしまう。
飛鳥にはすでに銀髪にアクアマリンの瞳を持つ最強の”アルティメット”アルファの番がいる。けれどその番はヒートの時以外、飛鳥の前には現れることがなく、名前も教えてくれないなど、秘密と謎が多い存在だ。
また自宅には血の繋がらない弟・金成(かんなり)が同居していた。
金成は「インフェリア」と呼ばれる劣等アルファで、口を聞くことができない。
転生前の飛鳥は「番がヒートの時期しか来てくれないのは、他のアルファ、つまり弟が同居しているせいだ」と思い込み、ネグレクトと虐待を繰り返していた。
最初は環境の変化に戸惑う誠司だったが、次第に弟と仲良くなっていく。しかし仲良くなればなるほど、ヒートの時期しか姿を見せないはずの番が夜な夜な部屋へ現れるようになる。
正体を明かさない最強アルファの番と口の聞けない劣等アルファの弟に囲まれて、平凡に生きたいはずの人生はどんどん思う方向とは違う道へ進んでしまう。
そして誠司は番に隠されたある秘密を知ってしまい……!?
ヤンデレ溺愛最強アルファから逃げられない美人オメガがハッピーエンドを目指して奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる