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Part 3

Б.г やっぱり - 02

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「良かったじゃないですか。ご令嬢が、実は、ものすごい美しい女性だったというのは、ギルバート様が発見されたことですし、当座は、アトレシア大王国の貴族以外は、誰も知らない事実なんですから」

 無理に乗せられているような気がしてならないのだが、そこで、ギルバートも降参して、長い息を吐き出した。

「まあ、(無性に) 腹が立つのはよーく理解できますが、あのバカ息子は、おいえお取り潰しですからね」
「その後の行方は?」

「それは存じません。宰相にお聞きになってはいかがですか?」
「そうだな」

「ついでに。あれ以上、悪さができないように、もっと痛めつけていただく、とか?」
「お前は……」

 ちゃっかり、宰相であるレイフにそんなことを頼めば? などと、クリストフも悪巧わるだくみに長けている。

「いいではないですか。大体、侯爵家の子息でありながら、公式の場で、貴族の令嬢を侮辱するなど、言語道断の行い」

 こう見えても、クリストフは紳士なのである。
 セシル自身が侮辱されたどうとは関係なく、女性に対して、非情で失礼極まりない行為は、決して許せない。

「確かに、そうだが」
「ええ、そうですよ。やっぱり、ここは、一発、ぎゃふんと言わせておくべきですね」

「ぎゃふん、ね。――見事なまでにされたと思ったが」
「えぇえ、見事でしたね。でも、念には念を、でしょう」
「まあ……、そうかもしれないが」

 それで、クリストフに、随分、不穏な考えを植え付けられたように思えないでもないが、ギルバートはレイフに会いに行った時に、一応、そんなこと(悪巧み) も口には出していたのだった。


 もちろん、乗り気な宰相サマがその後どう動いたかなど、誰も知る由はなし。


* * *


「さすが、王宮図書館ともなると、ものすごい本の量でしたわ」

 セシルは、午前中の王宮図書館の見学を、大層、満足したらしい。

 ギルバートとの婚儀を終えたセシルは、本来なら、臣籍降下しんせきこうかを済ませていない王子殿下の婚約者となるから、厳重に警戒された王宮で、大人しくしているべきなのである。

 だが、ギルバートは、退屈な王宮にセシルを縛り付けることはしたくない。

 その上、王宮に一人残しておいたら、またいつどこで、宰相である兄のレイフが邪魔をしてくるか判ったものではないから、


「観光はどうですか?」


と、セシルを誘っていたのだ。

 王宮図書館に行ってみたい、というセシルの希望で、ギルバートの推薦状を持って、午前中、セシルは王宮図書館を訪ねていたのだ。

「また、訪ねることができるといいのですけれど」
「もちろんですよ」

 その程度の希望など、すぐにかなうものだ。

「なにか、興味の引くものでもございましたか?」
「ええ、そうですわね。たくさんあり過ぎて、目移りしてしまったのですけれど。ですが、今回は、少々、建築関係の書物に目を通させていただきましたの」

「建築関係?」
「ええ、そうです。博物館建築に際して、なにか、為になる構想はないかな、と思いまして」
「博物館? ――ああ、領地の次の十年計画の一つでしたね」

「ええ、そうです。今は、博物館にどのようなものを展示するか、という案や意見を集めているところなのですが、せめて、今年中には、最初の建築概要は決めておきたいものですから。どんな外装か、広さはどのくらいか、その程度ですけれど」

「なるほど」

「観光情報館に提示されている領地の歴史の資料も、大分、増えてきましたし、それらは、博物館の方に移動しようと考えておりますの」

「あの歴史の資料を読んで、私も本当に驚きました。とても為にもなりましたし」
「全部、読んでくださったんですか?」

「もちろんです。あのような領地の歴史の資料がきちんと揃っていて、年代ごとの事柄なども詳細に提示されていて、とても為になりました。いつも、あのように資料を記録なさっているのですか?」

「ええ、そうです。時間が経ってから昔を振り返って、あんなことがあったな、など記録に残っていたら、きっと懐かしく、面白いだろうなと思いまして。それで、その時々の事柄などを、記録しておいたのです」

「あれは、とても為になりますね。読んでいても、興味深かったです」
「ありがとうございます」

「他には、どのようなものを、博物館に置かれるのですか?」
「今の所、時計塔の出来上がった過程や、ミニアチュア版の模型なども、飾ろうかと考えております」

「ミニアチュア? ――あっ、時計塔ですか? 完成なさったのですか?」
「ええ、完成しましたの。完成式の式典では、大盛況でしたわ」

「そうですか。一体、どのようなものなのか、想像もつきません」

 ギルバートがセシルに会いに行った時は、観光情報館は建築用の足場ができていて、幕が張られたり、作業中の人員がたくさん出入りしたりと、一体、何を作っているのかは見えなかった。

「ふふ。とても素晴らしい出来になりましたの。もう、領地の観光名所となるくらいですわ」
「そうですか」

 ああ、ギルバートも時計塔を見られる機会があるのだろうか。

「ギルバート様?」
「はい、なんでしょう?」

「今年の豊穣祭に、ギルバート様をご招待したいと考えておりますが、ご多忙でいらっしゃいますか?」
「いえ。ご迷惑でなければ、是非、豊穣祭に参加させてください」

 ギルバートが豊穣祭に参加できるのなら、仕事が忙しかろうと、徹夜でもして、さっさと仕事を片付けてしまえばいいだけのこと。

 婚儀が来年初めになるのだろうから、その間、セシルに簡単に会うことは難しい。ほぼ、無理である。
 だから、豊穣祭でセシルに会いに行けるだけではなく、後夜祭でのセシルの美しい姿を見られるのなら、ギルバートは、何をしてでも、絶対に、豊穣祭に顔を出すつもりでいる。

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