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Part 3
Б.б アトレシア大王国 - 06
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セシルが着ていたドレスは、そのどれもギルバートには見慣れないドレスばかりだったが、そのどれも、いつも、セシルに良く似合っていた。
似合い過ぎていたから、いつも……見惚れてしまっていた。
とてもきれいだ……と素直に思えるほどに、見惚れてしまっていた。
だから、セシルが婚約の儀で着るドレスが、変なドレスのわけがない。きっと、セシルに良く似合っていることだろう。
そんなこと、考えなくても、ギルバートにはすぐにその光景が頭に浮かび上がって来るほどだ。
「そのような心配などしないでください。祭務官もご令嬢のドレスが問題ないと言っているのですから、ご令嬢もそのような心配をなさる必要などありませんよ」
「そう、かもしれませんけれど……」
まだ納得してなさそうなセシルの反応だったが、ギルバートもちゃんとこの点を強調する。
「くだらない文句を言ってくるような輩は、国王陛下に盾突く行為をしていることを、すぐに理解するでしょう。そして、私の婚約者となるご令嬢に向かい、そのような侮辱を吐いて、私の婚約の儀を台無しにするような者は、私が絶対に許しはしません」
かなり冷たい不穏な気配を上げているギルバートの目は、本気である。
王子殿下の婚約者に対して侮辱を働くなど、王子であるギルバートの性格も、プライドも、許してなどおけない。第三王子殿下だろうと、王族として育てられた立場もプライドも、もう、無意識でも体に身についているものだ。
自分の最も大切にしている女性が舐められるなど、絶対に許しておけないのだ。
「絶対に、後で叩き潰します」
「とても、心強く、思います」
そこまで本気でセシルのことを思ってくれているギルバートの言葉は、冗談でもなんでもない。
ギルバートが少し遠慮がちに、両手でセシルの手を握りしめた。
「アトレシア大王国に、そして、王家に嫁ぐことになるご令嬢にとっては、周りは全員敵ばかりと思われるかもしれませんが、それでも……私は、あなたのことを必ず護ります。くだらない貴族になど、耳を貸さないでください」
「その程度の雑音は、気にしておりませんわ」
「ですが、もし、そのような状況が出て来た場合、必ず、私に知らせてください。ご令嬢を傷つける輩は、絶対に許しはしません」
「ありがとうございます。副団長様がそうおっしゃってくださって、とても心強く思います」
「良かった……」
セシルがギルバートに嫁ぐことによって、きっと、セシルはいらぬ攻撃を受けるはずだろう。それで、傷つくことだってあるかもしれない。
だが、そんなことは、ギルバートが一番許せないことだった。セシルを護る為ならどんなことでもするし、どんなことも厭わない。
王家に嫁いで来てくれるセシルに、ギルバートができることなど限りがあるだろうが、それでも、ギルバートはセシルを望んだ。望んだ分だけ、絶対に、セシルを護り切ってみせると誓った。
ぎゅっと、セシルの手に重なっているギルバートの手を、セシルがそっと握り返していた。
「副団長様が傍にいてくださるのなら、私も百人力ですわ」
「そう、ですか。良かった……」
セシルのその言葉を聞いて、ギルバートも、つい、嬉しそうに顔が綻んでしまう。
その笑顔を見ていると、セシルの方だって、ふふと、笑んでしまいそうだった。
「王族のドレスのデザインという話は別にしましても、副団長様の好みのドレスなど、ございますか?」
「私の好みのドレス?」
パタパタと、ギルバートがまたも瞬きを繰り返す。正に、思ってもみない質問だったのだ。
今までを思い返しても、ギルバートの過去は、貴族の令嬢を徹底的に避けて来ていた。冷たく追い払って来ていた。
そんな中で、自分の好みのドレスもあったものではないだろう。誰かが着ているドレスなど、一々、確認したこともない。
今はどんな流行だとか、耳に入れたことさえない。
だが、セシルの質問だ。
じっと、少しだけギルバートが考えている様子なので、セシルが不思議そうな顔をする。
「なにか?」
「あの――これを言ったら変に思われるかもしれませんが……、私は、あなたが着られるドレスなら、その全て、とても美しいものだと思います。きっと、見惚れてしまうほどに」
う、わぁっ…………!!
今のは――ものすごい殺し文句じゃありませんか?
セシルはギルバートの恋人でもないし、これから婚約者となる関係でも、そこまで親密な関係ではない。
でも、その一言は――もう、完全に、女心をグサッと突き刺すほどの熱いインパクトがありませんこと?
それ……、真顔で言っていい言葉ですか?
それも、少し照れたような、はにかんだような、女心を刺激するような可愛らしい仕草で!
超絶美形の容姿をお持ちの男性が、それはいけませんでしょう?
いけませんよ、絶対に。
もう、そこらの少女から貴婦人まで、一斉に、ハートを飛ばして、卒倒してしまうことでしょうから。
「――――あり、がとうございます……そのようにおっしゃってくださって」
「いえ……。あまり……お力になれずに、すみません……」
自分の発した言葉に照れてしまったのか、ギルバートも(ちょっとだけ) 気まずそうである。
恋愛していないけれど、こういったウズウズとした場面は、照れくさいものですねえ……。
変な沈黙が降りてしまった。
「お力になれずに、すみません……」
「いえ……。婚約者となる副団長様に問題がないのでしたら、一応、持って来たドレスから選ぶことにします……」
「そう、ですか……」
“婚約者”という響きに、ジーンと感動してしまうと共に、嬉しさが混ざって、ギルバートの顔がすぐににやけてしまいそうになる。
久しぶりに会えた二人だったが、今夜は、むずがゆいような、じれったいような、ほんの少しだけ甘い夜を過ごした二人でした。
似合い過ぎていたから、いつも……見惚れてしまっていた。
とてもきれいだ……と素直に思えるほどに、見惚れてしまっていた。
だから、セシルが婚約の儀で着るドレスが、変なドレスのわけがない。きっと、セシルに良く似合っていることだろう。
そんなこと、考えなくても、ギルバートにはすぐにその光景が頭に浮かび上がって来るほどだ。
「そのような心配などしないでください。祭務官もご令嬢のドレスが問題ないと言っているのですから、ご令嬢もそのような心配をなさる必要などありませんよ」
「そう、かもしれませんけれど……」
まだ納得してなさそうなセシルの反応だったが、ギルバートもちゃんとこの点を強調する。
「くだらない文句を言ってくるような輩は、国王陛下に盾突く行為をしていることを、すぐに理解するでしょう。そして、私の婚約者となるご令嬢に向かい、そのような侮辱を吐いて、私の婚約の儀を台無しにするような者は、私が絶対に許しはしません」
かなり冷たい不穏な気配を上げているギルバートの目は、本気である。
王子殿下の婚約者に対して侮辱を働くなど、王子であるギルバートの性格も、プライドも、許してなどおけない。第三王子殿下だろうと、王族として育てられた立場もプライドも、もう、無意識でも体に身についているものだ。
自分の最も大切にしている女性が舐められるなど、絶対に許しておけないのだ。
「絶対に、後で叩き潰します」
「とても、心強く、思います」
そこまで本気でセシルのことを思ってくれているギルバートの言葉は、冗談でもなんでもない。
ギルバートが少し遠慮がちに、両手でセシルの手を握りしめた。
「アトレシア大王国に、そして、王家に嫁ぐことになるご令嬢にとっては、周りは全員敵ばかりと思われるかもしれませんが、それでも……私は、あなたのことを必ず護ります。くだらない貴族になど、耳を貸さないでください」
「その程度の雑音は、気にしておりませんわ」
「ですが、もし、そのような状況が出て来た場合、必ず、私に知らせてください。ご令嬢を傷つける輩は、絶対に許しはしません」
「ありがとうございます。副団長様がそうおっしゃってくださって、とても心強く思います」
「良かった……」
セシルがギルバートに嫁ぐことによって、きっと、セシルはいらぬ攻撃を受けるはずだろう。それで、傷つくことだってあるかもしれない。
だが、そんなことは、ギルバートが一番許せないことだった。セシルを護る為ならどんなことでもするし、どんなことも厭わない。
王家に嫁いで来てくれるセシルに、ギルバートができることなど限りがあるだろうが、それでも、ギルバートはセシルを望んだ。望んだ分だけ、絶対に、セシルを護り切ってみせると誓った。
ぎゅっと、セシルの手に重なっているギルバートの手を、セシルがそっと握り返していた。
「副団長様が傍にいてくださるのなら、私も百人力ですわ」
「そう、ですか。良かった……」
セシルのその言葉を聞いて、ギルバートも、つい、嬉しそうに顔が綻んでしまう。
その笑顔を見ていると、セシルの方だって、ふふと、笑んでしまいそうだった。
「王族のドレスのデザインという話は別にしましても、副団長様の好みのドレスなど、ございますか?」
「私の好みのドレス?」
パタパタと、ギルバートがまたも瞬きを繰り返す。正に、思ってもみない質問だったのだ。
今までを思い返しても、ギルバートの過去は、貴族の令嬢を徹底的に避けて来ていた。冷たく追い払って来ていた。
そんな中で、自分の好みのドレスもあったものではないだろう。誰かが着ているドレスなど、一々、確認したこともない。
今はどんな流行だとか、耳に入れたことさえない。
だが、セシルの質問だ。
じっと、少しだけギルバートが考えている様子なので、セシルが不思議そうな顔をする。
「なにか?」
「あの――これを言ったら変に思われるかもしれませんが……、私は、あなたが着られるドレスなら、その全て、とても美しいものだと思います。きっと、見惚れてしまうほどに」
う、わぁっ…………!!
今のは――ものすごい殺し文句じゃありませんか?
セシルはギルバートの恋人でもないし、これから婚約者となる関係でも、そこまで親密な関係ではない。
でも、その一言は――もう、完全に、女心をグサッと突き刺すほどの熱いインパクトがありませんこと?
それ……、真顔で言っていい言葉ですか?
それも、少し照れたような、はにかんだような、女心を刺激するような可愛らしい仕草で!
超絶美形の容姿をお持ちの男性が、それはいけませんでしょう?
いけませんよ、絶対に。
もう、そこらの少女から貴婦人まで、一斉に、ハートを飛ばして、卒倒してしまうことでしょうから。
「――――あり、がとうございます……そのようにおっしゃってくださって」
「いえ……。あまり……お力になれずに、すみません……」
自分の発した言葉に照れてしまったのか、ギルバートも(ちょっとだけ) 気まずそうである。
恋愛していないけれど、こういったウズウズとした場面は、照れくさいものですねえ……。
変な沈黙が降りてしまった。
「お力になれずに、すみません……」
「いえ……。婚約者となる副団長様に問題がないのでしたら、一応、持って来たドレスから選ぶことにします……」
「そう、ですか……」
“婚約者”という響きに、ジーンと感動してしまうと共に、嬉しさが混ざって、ギルバートの顔がすぐににやけてしまいそうになる。
久しぶりに会えた二人だったが、今夜は、むずがゆいような、じれったいような、ほんの少しだけ甘い夜を過ごした二人でした。
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