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Part 3
А.б 困ったわ…… - 05
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* * *
「「「「結婚っ!?」」」」
「そういう話が、上がってるみたいだよ」
そこに集まっているメンバーの全員が、あまりの驚きで、互いの顔を見やったまま、言葉を失っている。
今日この頃では、成人したジャンやケルトは、正騎士としての仕事が任され、残りの二人も騎士見習いの仕事が忙しく、フィロはフィロでいつも邸にいる為、なかなか全員で集まる機会が減って来ていた。
それで、夜勤の無い日は、一応、一日の報告会がてら、孤児院の夜の門限が十時までなので、それに間に合うよう、九時を過ぎた頃、五人が昔から“溜まり場”にしている訓練所の裏の大きな木の下に集まっていた。
手持ちの燈篭を灯し、ゆらゆらと心許ない灯りが照らしているが、はっきりと五人の姿を映し出すほどの明るさでもない。
五人は、昔取った杵柄――ではないが、スラム街にいた時から、暗闇で行動することが多かった為、暗闇が恐くない。
むしろ、暗闇で動く気配を察知しやすくて、暗闇の方が行動しやすいのだ。
「結婚って……あの王子サマとするのか?」
「さあ」
「さあ――って……。マスターは、なんて言ってるんだ?」
「考え中」
「考え中、って……。――もしかして、結婚しちゃうのか……?」
やっと、あの悪名高き侯爵家のバカ息子との婚約解消により、セシルは晴れて自由の身になれた。
もうずっと、婚約解消を成立させる為だけに、セシルの若い半生は消えて行ってしまった。
だから、婚約解消が成立した今、セシルは領主として、今まで以上の勢いで領地の統治をしているし、していくものだと、全員が考えていた。
もう――結婚など、しないものだと、全員が信じて疑わなかった(なにしろ、セシルだって、そう公言しているくらいだから)。
セシルはずっとこの領地で領主をして、そして、そうやって年をとっていくものだと――全員は信じて疑わなかった。
それが、だ。
あの隣国の騎士団の副団長で、王国の王子サマが、セシルに結婚を申し込んできたなど――青天の霹靂そのものだ。
フィロを抜かした四人が、何を言っていいのか分らず、何を言いたいのか困惑して、互いに顔を見合う。
「……結婚、しちゃうのかな……」
「さあ、それは……」
セシル以外にその答えを知っている人はいない。
「もし――もし、の話だけど……、もし、マスターが結婚することになったら――もしかして、マスターはこの領地を去って行っちゃう、とか……?」
「えっ……!?」
「まじっ……!?」
あの王子サマは、隣国の王子サマだ。隣国、アトレシア大王国の人間だ。
もし、セシルがあのギルバートと結婚することになったら、セシルの所在はアトレシア大王国に移ることになっても不思議はない。
そうなると……コトレア領の領主は、もう、できないことになるのでは……。
嫌な考えが浮かんでしまって、シーンと気味の悪い沈黙だけが下りていた。
「それは、ないと思うけど」
フィロの一言で、全員がフィロを振り返った。
「なんでだよ。普通、結婚した場合――女性とか、貴族の女の人が結婚した場合、大抵、男の方の屋敷に移るのが普通じゃないのか?」
「そうそう」
「家はアトレシア大王国に移るだろうけど、あっちは、別に、マスターに領主を辞めろ、とは言わなかったみたいだけど」
それは初耳だと、フィロを抜かした全員がフィロを向き直る。
「なんだよ、それ。なんの話だよ」
「そうそう。フィロだから、なにかマスターから話を聞いているんだろ?」
「これは内緒の話だけど」
「絶対、誰にも言わないぜ」
五人の中で気軽に話をしたからと言って、その内緒の話を言い触らすなんてことはない。いつも、五人の間だけの会話で留まっているのだ。
だから、フィロも自分が聞いた話を残りのメンバーに話すことは、左程、心配をしていないし、問題視にもしていない。
フィロはセシルの補佐役で、いつもセシルの傍にいる一人だ。今では、領地でも欠かすに欠かせないほど重要な役割を果たしているほどである。
フィロは“セシルの右腕だ”と説明されても、不思議はない立場でもあるのだ。
だから、セシルは、執事のオスマンドとフィロの二人だけには、結婚を申し込まれた話を聞かせたのだろう。
「婚姻契約書があるみたい」
「婚姻、契約書?」
「それって、なんだ?」
さすがに、自分達が耳にしたこともない単語がでてきて、全員が首をかしげている。
「結婚をする際に提示される条件みたいなもの。あっちの王子サマがマスターに提示してきた条項の中に、マスターには領地の領主を続けてもいい、っていうような内容があったから」
「それって? ――結婚しても、マスターがコトレアに残っていていい、って言ってるのか?」
「年に何回か帰ってきていい、っていう話」
なるほど、と全員が真剣に話を聞きながら頷いてみせる。
「じゃあ……屋敷はアトレシア大王国で、でも、年に何回かは領地に戻って領主の仕事を続けてもいい、ってことなのか?」
「そう」
「それなら……」
多少、セシルに会える回数が減ってしまうけれど、だからと言って、セシルに一生会えなくなるわけでもない。
昔だって、王立学園に通っていた頃は、セシルも頻繁に領地に戻ってくることはできなかった。
もしかして、あの時の状況と似たり寄ったりなのかもしれない。
それが判ってしまって、全員もなんとなく安堵をみせる。
「それなら……結婚、しても、いいのかな?」
「別に、提示された条項は悪くないと思うけど」
「フィロも見たのか?」
「いいや。マスターの話を聞いただけ。でも、領主を続けてもいいし、コトレア領に戻ってきてもいいし、ヘルバート伯爵家だってアトレシア大王国にやって来てもいいし、マスターには悪い条件じゃないと思う」
へえぇぇぇ……と、知らない情報を聞いて、全員が感心している。
「じゃあ、マスターも、その話に乗り気なのか?」
「さあ。今は考慮中」
「考慮中? ――迷ってるのか、あのマスターが?」
そっちの事実の方が、残りの四人は驚きである。
出会った時から、あまりに冷静沈着で、感情の上下が激しくなく、落ち着いて取り乱したことのないセシルしか知らないだけに、あのセシルが迷っている姿なんて、四人も想像がつかなかった。
あれだけ決断の早いセシルが、その決断に心悩ませているということは、セシル自身もこの結婚話が――それほど悪い話ではないのだろう、と考え始めているのは間違いなかった。
フィロも、そんなセシルの姿を見たことはなかったが、それでも、セシルが少し悩んでしまっているのは、フィロも気が付いたことだ。
あのギルバートは、婚姻契約書まで作り、それもほぼ、セシルの為にあるような契約条項で、あれほどまでに――セシルを考えた、いや、セシルだけを考えた条件など滅多にないだろう。
それだけギルバートが本気で、そして、それ以上に、セシルの領主としての立場も、自由に動き回っているセシルの強さも、その全てを尊重しているギルバートの思いを、契約書が全部物語っていた。
だから、きっと、セシルも――決心するのに、心が揺らいでいるのは、間違いないのだ。
「「「「結婚っ!?」」」」
「そういう話が、上がってるみたいだよ」
そこに集まっているメンバーの全員が、あまりの驚きで、互いの顔を見やったまま、言葉を失っている。
今日この頃では、成人したジャンやケルトは、正騎士としての仕事が任され、残りの二人も騎士見習いの仕事が忙しく、フィロはフィロでいつも邸にいる為、なかなか全員で集まる機会が減って来ていた。
それで、夜勤の無い日は、一応、一日の報告会がてら、孤児院の夜の門限が十時までなので、それに間に合うよう、九時を過ぎた頃、五人が昔から“溜まり場”にしている訓練所の裏の大きな木の下に集まっていた。
手持ちの燈篭を灯し、ゆらゆらと心許ない灯りが照らしているが、はっきりと五人の姿を映し出すほどの明るさでもない。
五人は、昔取った杵柄――ではないが、スラム街にいた時から、暗闇で行動することが多かった為、暗闇が恐くない。
むしろ、暗闇で動く気配を察知しやすくて、暗闇の方が行動しやすいのだ。
「結婚って……あの王子サマとするのか?」
「さあ」
「さあ――って……。マスターは、なんて言ってるんだ?」
「考え中」
「考え中、って……。――もしかして、結婚しちゃうのか……?」
やっと、あの悪名高き侯爵家のバカ息子との婚約解消により、セシルは晴れて自由の身になれた。
もうずっと、婚約解消を成立させる為だけに、セシルの若い半生は消えて行ってしまった。
だから、婚約解消が成立した今、セシルは領主として、今まで以上の勢いで領地の統治をしているし、していくものだと、全員が考えていた。
もう――結婚など、しないものだと、全員が信じて疑わなかった(なにしろ、セシルだって、そう公言しているくらいだから)。
セシルはずっとこの領地で領主をして、そして、そうやって年をとっていくものだと――全員は信じて疑わなかった。
それが、だ。
あの隣国の騎士団の副団長で、王国の王子サマが、セシルに結婚を申し込んできたなど――青天の霹靂そのものだ。
フィロを抜かした四人が、何を言っていいのか分らず、何を言いたいのか困惑して、互いに顔を見合う。
「……結婚、しちゃうのかな……」
「さあ、それは……」
セシル以外にその答えを知っている人はいない。
「もし――もし、の話だけど……、もし、マスターが結婚することになったら――もしかして、マスターはこの領地を去って行っちゃう、とか……?」
「えっ……!?」
「まじっ……!?」
あの王子サマは、隣国の王子サマだ。隣国、アトレシア大王国の人間だ。
もし、セシルがあのギルバートと結婚することになったら、セシルの所在はアトレシア大王国に移ることになっても不思議はない。
そうなると……コトレア領の領主は、もう、できないことになるのでは……。
嫌な考えが浮かんでしまって、シーンと気味の悪い沈黙だけが下りていた。
「それは、ないと思うけど」
フィロの一言で、全員がフィロを振り返った。
「なんでだよ。普通、結婚した場合――女性とか、貴族の女の人が結婚した場合、大抵、男の方の屋敷に移るのが普通じゃないのか?」
「そうそう」
「家はアトレシア大王国に移るだろうけど、あっちは、別に、マスターに領主を辞めろ、とは言わなかったみたいだけど」
それは初耳だと、フィロを抜かした全員がフィロを向き直る。
「なんだよ、それ。なんの話だよ」
「そうそう。フィロだから、なにかマスターから話を聞いているんだろ?」
「これは内緒の話だけど」
「絶対、誰にも言わないぜ」
五人の中で気軽に話をしたからと言って、その内緒の話を言い触らすなんてことはない。いつも、五人の間だけの会話で留まっているのだ。
だから、フィロも自分が聞いた話を残りのメンバーに話すことは、左程、心配をしていないし、問題視にもしていない。
フィロはセシルの補佐役で、いつもセシルの傍にいる一人だ。今では、領地でも欠かすに欠かせないほど重要な役割を果たしているほどである。
フィロは“セシルの右腕だ”と説明されても、不思議はない立場でもあるのだ。
だから、セシルは、執事のオスマンドとフィロの二人だけには、結婚を申し込まれた話を聞かせたのだろう。
「婚姻契約書があるみたい」
「婚姻、契約書?」
「それって、なんだ?」
さすがに、自分達が耳にしたこともない単語がでてきて、全員が首をかしげている。
「結婚をする際に提示される条件みたいなもの。あっちの王子サマがマスターに提示してきた条項の中に、マスターには領地の領主を続けてもいい、っていうような内容があったから」
「それって? ――結婚しても、マスターがコトレアに残っていていい、って言ってるのか?」
「年に何回か帰ってきていい、っていう話」
なるほど、と全員が真剣に話を聞きながら頷いてみせる。
「じゃあ……屋敷はアトレシア大王国で、でも、年に何回かは領地に戻って領主の仕事を続けてもいい、ってことなのか?」
「そう」
「それなら……」
多少、セシルに会える回数が減ってしまうけれど、だからと言って、セシルに一生会えなくなるわけでもない。
昔だって、王立学園に通っていた頃は、セシルも頻繁に領地に戻ってくることはできなかった。
もしかして、あの時の状況と似たり寄ったりなのかもしれない。
それが判ってしまって、全員もなんとなく安堵をみせる。
「それなら……結婚、しても、いいのかな?」
「別に、提示された条項は悪くないと思うけど」
「フィロも見たのか?」
「いいや。マスターの話を聞いただけ。でも、領主を続けてもいいし、コトレア領に戻ってきてもいいし、ヘルバート伯爵家だってアトレシア大王国にやって来てもいいし、マスターには悪い条件じゃないと思う」
へえぇぇぇ……と、知らない情報を聞いて、全員が感心している。
「じゃあ、マスターも、その話に乗り気なのか?」
「さあ。今は考慮中」
「考慮中? ――迷ってるのか、あのマスターが?」
そっちの事実の方が、残りの四人は驚きである。
出会った時から、あまりに冷静沈着で、感情の上下が激しくなく、落ち着いて取り乱したことのないセシルしか知らないだけに、あのセシルが迷っている姿なんて、四人も想像がつかなかった。
あれだけ決断の早いセシルが、その決断に心悩ませているということは、セシル自身もこの結婚話が――それほど悪い話ではないのだろう、と考え始めているのは間違いなかった。
フィロも、そんなセシルの姿を見たことはなかったが、それでも、セシルが少し悩んでしまっているのは、フィロも気が付いたことだ。
あのギルバートは、婚姻契約書まで作り、それもほぼ、セシルの為にあるような契約条項で、あれほどまでに――セシルを考えた、いや、セシルだけを考えた条件など滅多にないだろう。
それだけギルバートが本気で、そして、それ以上に、セシルの領主としての立場も、自由に動き回っているセシルの強さも、その全てを尊重しているギルバートの思いを、契約書が全部物語っていた。
だから、きっと、セシルも――決心するのに、心が揺らいでいるのは、間違いないのだ。
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