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Part2
* EPILOGUE *
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また、年が暮れようとしている。
一年が、アッと言う間に過ぎ去っていった。
今年は、行事がたくさんあり、何度もセシルに会うことができた。
最初は一週間程度だったが、それでも、四六時中護衛をする、という名目と大義名分があった。
いつでも、セシルの側にいられた。
美しいセシルのドレス姿を王宮でも見られて、ダンスまで一緒に踊れた。
あぁ……、あの時の光景が、すぐにでも頭に浮かんできてしまう。
麗しいほどのセシルが、あまりに美しかったから……。
次は一カ月程だった。その時も護衛の立場だったが、それでも、デート (らしきもの) もできた(付き人付きで)。
何度も、一緒に食事ができた。セシルの隣も座れた。
一緒にいる時は、たくさん喋った。
普通のお喋りだっただろ?
今、考えても、セシルの領地の話題がたくさんだったが、ギルバートにとっては、興味深い話ばかりだ。
政ごとの話など、仕事以外で滅多にしないギルバートでも、セシルの新しい政策や、計画、今している事業だって、話を聞いているだけで、つい、興味心が沸いてくる話題ばかりだ。
なにも、ギルバートがセシルにゾッコンだから、セシルの話すこと全部、喋ること全部、好きでいるなんて言っているのでは断じてない(クリストフは、あると思うけどなあ、と密かに思っている)。
ただ、話題が新鮮で、知らないことばかりで、ギルバートは、いつも、セシルの話に釘付けになってしまうのだ。
豊穣祭は――短いものでも、今年も、セシルのあの眩しいほどに美しい姿を見ることができた。
今年も、セシルから『祝福』 を授かることができた。
状況に流されているのかもしれないが、なんだか、セシルに『祝福』 を授かると、次の一年、本当に強く進んで行けそうな気になってしまうから不思議だ。
きっと、領民達だって、みんなそう感じているのだろう。
セシルに会えた。月日が離れ、数か月を挟んでも、セシルに会えた。
だが、来年は、そうだとは言い切れない。
そして、来年こそ――ギルバートの猶予期間が、切れてしまう年なのだ。
モタモタしていたら、それこそ、知らぬ間に、そして、アッと言う間に、また次の一年が過ぎ去ってしまうことになってしまう。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
ええ、全くその通りです、レイフ兄上。
ギルバートも、その点は、全く異論なく賛成です。
だから、今のギルバートには――もう、行動に移すしか、選択肢は残されていない。
次の一年だって、アッと言う間に過ぎてしまう。
次の一年を、ただセシルに会う為の理由付けを探しているようでは、ギルバートの猶予期限が、アッと言う間に切れてしまうことは、間違いなかった。
――――結婚……。
そんなこと、今まで、一度だって考えたことはなかった。
王族として、王子として、(無理矢理) 結婚させられることになるその時まで、できる限り延ばしに延ばして、縁談なんて、耳にも貸さないつもりだった。
今までだって、そうしてきた。
なのに、今は――セシルが欲しくて堪らない。セシルを望んで、自分の側にずっといて欲しいと、強く願っている。
ずっと、セシルの側にいられたのなら――そればかり、その強くて抑えようがないほどの渇望と熱望ばかりが、体中を焼き尽くすかのように熱い。
――――結婚って、普通、どうやって、申し込むべきなのだろうか……。
貴族の結婚など、大抵、親同士が決めた政略結婚、見合い話、縁談ばかりだろう。
ラッキーなカップルは、恋愛結婚もできるのだろうが、それは、お互いに恋愛をしている話だ。
ギルバートは――セシルと恋愛関係にあるのではない。
むしろ、悲しいかな……。全くの他人でしかない。
とほほ……。
だから、結婚の申し込みなど、どうやってやるのか、考えにも及ばない。
ギルバートの身近で結婚しているカップルなど、実の兄の国王陛下くらいである。
同じ騎士団では、団長達は年配過ぎるし、残りの副団長のうち一人も、すでに結婚している。
ギルバートよりも年上であるから、不思議はないが、まさか、その副団長に向かって、
「結婚を申し込むのは、どうしたらいいですか?」
なんて、聞けるはずもない。
あまりに情けなさ過ぎるだろう……。
でも、誰かかしらに聞き回れることもできない。
そんな安易で軽率な行動をしてしまったら、すぐさま、セシルの身元がバレてしまい、“ギルバートの思い人”ということで、狙われる可能性がでてきてしまう。
だから、簡単に聞き回れる事情でもない。
それなら、一体、誰に聞けばいいのだろうか?
そんなことを考えていく度に、ギルバートは眠れなくなってしまった。明日だって早いし、仕事だってあるのに。
困ったものだ。
結局、どうやって結婚を申し込んで良いのか、自分で答えが見つからないまま、眠ることもできず、朝方なんとか眠りに落ちたようだった。
それもすぐに、目覚めの時間がやって来て、睡眠不足の身体を引きずって、ギルバートは、いつものように自分の仕事場にやってきていた。
夜勤の護衛からの報告や、朝の引き継ぎを終え、執務室に戻って来る。
第三騎士団団長のハーキンのせいで、今日この頃は、大抵、午前中は、団長が片すはずの書類整理に追われてしまっている。
重い頭を使おうが、今日は、仕事も、全然、はかどらない。気が乗らない。
煮詰まった時は――――
ああ、そうだった。
以前、セシルと何気ない会話で、セシルが子供達に教えている、考えや頭の整理法という話題を、ギルバートは思い出していた。
「子供達というのは、想像力豊かで、感性も強いですから、一度、考え事をすると、すぐに脱線してしまったり、問題への答えが見つからなくて、腹を立てたりすることが多いのですよ。その時に、頭の整理の仕方と言いますか、自分の考えを整理する方法を、教えているんですのよ」
説明してくれた時は、結構、簡単な方法なのだなと、ギルバートも思い出していた。
1) まず初めに、目的やゴール。何をしたいのか?
2) 次に、そのゴールを達成するには、何が必要なのか?
3) 必要なものを満たす為には、どうすればよいのか? 全部、思いつくままに書き写すこと。
4) 必要なものを満たす為に誰が関わって来るのか? 手伝ってくれる人。反対する人。問題になりそうな人、色々だ。
5) 相手や、関わってくる人の懸念、心配事、または問題もしっかりと提示。相手目線から考慮して、懸念を打ち払えなければ、話にもならない。
それを順々に考えて行って、分からない部分は深く考え過ぎずに、分かるところを埋めてみましょう。
そうしたら、自分で見逃している部分、忘れている部分、考えもしなかった点などが上がってくることもあるし、他の人が見つけてくれる時もある、とセシルは話していた。
一年が、アッと言う間に過ぎ去っていった。
今年は、行事がたくさんあり、何度もセシルに会うことができた。
最初は一週間程度だったが、それでも、四六時中護衛をする、という名目と大義名分があった。
いつでも、セシルの側にいられた。
美しいセシルのドレス姿を王宮でも見られて、ダンスまで一緒に踊れた。
あぁ……、あの時の光景が、すぐにでも頭に浮かんできてしまう。
麗しいほどのセシルが、あまりに美しかったから……。
次は一カ月程だった。その時も護衛の立場だったが、それでも、デート (らしきもの) もできた(付き人付きで)。
何度も、一緒に食事ができた。セシルの隣も座れた。
一緒にいる時は、たくさん喋った。
普通のお喋りだっただろ?
今、考えても、セシルの領地の話題がたくさんだったが、ギルバートにとっては、興味深い話ばかりだ。
政ごとの話など、仕事以外で滅多にしないギルバートでも、セシルの新しい政策や、計画、今している事業だって、話を聞いているだけで、つい、興味心が沸いてくる話題ばかりだ。
なにも、ギルバートがセシルにゾッコンだから、セシルの話すこと全部、喋ること全部、好きでいるなんて言っているのでは断じてない(クリストフは、あると思うけどなあ、と密かに思っている)。
ただ、話題が新鮮で、知らないことばかりで、ギルバートは、いつも、セシルの話に釘付けになってしまうのだ。
豊穣祭は――短いものでも、今年も、セシルのあの眩しいほどに美しい姿を見ることができた。
今年も、セシルから『祝福』 を授かることができた。
状況に流されているのかもしれないが、なんだか、セシルに『祝福』 を授かると、次の一年、本当に強く進んで行けそうな気になってしまうから不思議だ。
きっと、領民達だって、みんなそう感じているのだろう。
セシルに会えた。月日が離れ、数か月を挟んでも、セシルに会えた。
だが、来年は、そうだとは言い切れない。
そして、来年こそ――ギルバートの猶予期間が、切れてしまう年なのだ。
モタモタしていたら、それこそ、知らぬ間に、そして、アッと言う間に、また次の一年が過ぎ去ってしまうことになってしまう。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
ええ、全くその通りです、レイフ兄上。
ギルバートも、その点は、全く異論なく賛成です。
だから、今のギルバートには――もう、行動に移すしか、選択肢は残されていない。
次の一年だって、アッと言う間に過ぎてしまう。
次の一年を、ただセシルに会う為の理由付けを探しているようでは、ギルバートの猶予期限が、アッと言う間に切れてしまうことは、間違いなかった。
――――結婚……。
そんなこと、今まで、一度だって考えたことはなかった。
王族として、王子として、(無理矢理) 結婚させられることになるその時まで、できる限り延ばしに延ばして、縁談なんて、耳にも貸さないつもりだった。
今までだって、そうしてきた。
なのに、今は――セシルが欲しくて堪らない。セシルを望んで、自分の側にずっといて欲しいと、強く願っている。
ずっと、セシルの側にいられたのなら――そればかり、その強くて抑えようがないほどの渇望と熱望ばかりが、体中を焼き尽くすかのように熱い。
――――結婚って、普通、どうやって、申し込むべきなのだろうか……。
貴族の結婚など、大抵、親同士が決めた政略結婚、見合い話、縁談ばかりだろう。
ラッキーなカップルは、恋愛結婚もできるのだろうが、それは、お互いに恋愛をしている話だ。
ギルバートは――セシルと恋愛関係にあるのではない。
むしろ、悲しいかな……。全くの他人でしかない。
とほほ……。
だから、結婚の申し込みなど、どうやってやるのか、考えにも及ばない。
ギルバートの身近で結婚しているカップルなど、実の兄の国王陛下くらいである。
同じ騎士団では、団長達は年配過ぎるし、残りの副団長のうち一人も、すでに結婚している。
ギルバートよりも年上であるから、不思議はないが、まさか、その副団長に向かって、
「結婚を申し込むのは、どうしたらいいですか?」
なんて、聞けるはずもない。
あまりに情けなさ過ぎるだろう……。
でも、誰かかしらに聞き回れることもできない。
そんな安易で軽率な行動をしてしまったら、すぐさま、セシルの身元がバレてしまい、“ギルバートの思い人”ということで、狙われる可能性がでてきてしまう。
だから、簡単に聞き回れる事情でもない。
それなら、一体、誰に聞けばいいのだろうか?
そんなことを考えていく度に、ギルバートは眠れなくなってしまった。明日だって早いし、仕事だってあるのに。
困ったものだ。
結局、どうやって結婚を申し込んで良いのか、自分で答えが見つからないまま、眠ることもできず、朝方なんとか眠りに落ちたようだった。
それもすぐに、目覚めの時間がやって来て、睡眠不足の身体を引きずって、ギルバートは、いつものように自分の仕事場にやってきていた。
夜勤の護衛からの報告や、朝の引き継ぎを終え、執務室に戻って来る。
第三騎士団団長のハーキンのせいで、今日この頃は、大抵、午前中は、団長が片すはずの書類整理に追われてしまっている。
重い頭を使おうが、今日は、仕事も、全然、はかどらない。気が乗らない。
煮詰まった時は――――
ああ、そうだった。
以前、セシルと何気ない会話で、セシルが子供達に教えている、考えや頭の整理法という話題を、ギルバートは思い出していた。
「子供達というのは、想像力豊かで、感性も強いですから、一度、考え事をすると、すぐに脱線してしまったり、問題への答えが見つからなくて、腹を立てたりすることが多いのですよ。その時に、頭の整理の仕方と言いますか、自分の考えを整理する方法を、教えているんですのよ」
説明してくれた時は、結構、簡単な方法なのだなと、ギルバートも思い出していた。
1) まず初めに、目的やゴール。何をしたいのか?
2) 次に、そのゴールを達成するには、何が必要なのか?
3) 必要なものを満たす為には、どうすればよいのか? 全部、思いつくままに書き写すこと。
4) 必要なものを満たす為に誰が関わって来るのか? 手伝ってくれる人。反対する人。問題になりそうな人、色々だ。
5) 相手や、関わってくる人の懸念、心配事、または問題もしっかりと提示。相手目線から考慮して、懸念を打ち払えなければ、話にもならない。
それを順々に考えて行って、分からない部分は深く考え過ぎずに、分かるところを埋めてみましょう。
そうしたら、自分で見逃している部分、忘れている部分、考えもしなかった点などが上がってくることもあるし、他の人が見つけてくれる時もある、とセシルは話していた。
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