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Part2
Е.д これからは - 05
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「他には?」
「なんでも、領地の騎士団の訓練施設を建設する為、その資金繰りがやっと決まり、これから、大々的な建設作業にとりかかるそうです」
「訓練施設? なぜ?」
「今までは、騎士団の設立と、騎士としての基本的な任務がこなせるように、との訓練を徹底していらっしゃったようです。今は、大分、人数も落ち着き、騎士団としての役割も決まって来たそうですから、次の段階へ、ステップアップなさるそうです」
「ステップアップ? それは?」
「なんでも、基礎体力、持久力を上げる新たな訓練方法を導入し、その訓練ができる施設の建設をなさるとか。かなり、大々的な施設の建設をお考えになっていらっしゃるようでして、数年は軽くかかってしまうかもしれない、とのこと」
「ほう。あんな小さな町なのに、そのような本格的な訓練施設の建設とは、面白い」
「小さな町ですが、ご令嬢は、これからも、領地の人口増加を考えていらっしゃるようです。たかが八年足らずで、人口が倍以上に増加したのですから、これからも、人口が増え続けていくであろうことは、疑いようもありません」
「そうだろうな。それで、本格的な騎士団の訓練施設」
ふむ、とレイフの口元が、ほんの微かにだけ上がっている。
この顔をする時は、決まって、レイフが何かの興味を引かれている時の顔だった。
それで、面白そうな予感が止められないのか、レイフの好奇心に火がついて、うずうずと、探り当てたくて仕方がない状態になる前兆である。
「それから、豊穣祭で、また、新たな料理やデザートが増えていました。そのどれも、とてもおいしいものでした」
あの領地では、毎回、ギルバートの知らない、聞いたこともないような料理やデザートが出てくる。そのどれもおいしくて、結構、病みつきになってしまうものが多い。
だから、今年の豊穣祭でも、去年、食べた料理などが食べられるのかなぁ、と期待していたギルバートとクリストフの前に、その期待以上の料理やデザートが出ていて、今年も楽しんだものだ。
「今年にできたばかりの“パン屋”という店にも、帰りがてら、立ち寄ってみました」
「パンを売る店なのだろう?」
王宮にいる王子サマにとって、食事にパンが出てくるのは、あまりに日課と化していて、疑問に思ったことさえもない。
だから、パンを専門として売るお店を建てるなど、考えもしたことがなかったのだ。普通は、ただ食卓に出てくる食事の一つではないのか、程度の関心だったのだ。
「そうです。食卓で食べるような大きなパンがたくさん売られていまして、それと同時に、軽食やランチなどに適したサンドイッチや、チーズの挟まれたパンなど、そういった一人分のパンなどもたくさんあって、その横に、一人用のデザートとなる焼き菓子や――ああ、そう言えば、「マフィン」 というものも食べました」
「マフィン? それは?」
「ケーキのようなものなのですが、手で持てるくらいの大きさで焼いた、少し硬めの焼き菓子? ――でしょうか。普段は、ナッツが入っていたものや、チーズマフィンといったものが主流なのですが、季節によって、出てくるものもあるそうです。例えば、ブルベリーマフィンなどは、夏のブルーベリーの収穫の後になど」
「ほう。チーズを入れて。それは、甘い菓子ではないのだな」
「それは、食事となる(Savoury)マフィンだそうです。チーズとか、ハムがあれば、そういったものを入れるそうです。もう少し硬めに焼くと、「スコーン」 というらしいです。お店の従業員の話では、たぶん、食事となるマフィンは、「スコーン」 として売り出していくことになるだろう、と言っていました。今は、まだ新しい商品が出たばかりで、お客が名前を憶えていないので、全部を「マフィン」 としているんだそうです」
「ほう。それはいい。たった数日でも、今回も、随分、色々なことを、学んできたではないか」
「あそこの領民は、観光客にとても親切ですので、質問をすると、全員が丁寧に教えてくれるのです。それに、今回も、豊穣祭の案内役をシリル殿がしてくれましたから」
「ああ、ご令嬢の弟君。かなり若いと言っていたではないか」
「ええ。聞くところによると、5歳、年が離れているそうです」
「なるほど。本当に、興味深いものだなあ」
「領地では、豊穣祭を終えたばかりなのですが、もう、領民達は、来年の豊穣祭に向けて、張り切っているようです」
「今から? まだ、一年もあるではないか」
「そうですね。ですが、来年は、ご令嬢が領地にお越しになられてから、十年になるそうです。ですから、十周年を祝って、盛大な豊穣祭が予定されているとのこと。それで、領民全員が、今から張り切っているのでしょう」
「ほう、益々、興味深いなあ。では、ギルバート、お前はさっさと婚約したまえ」
「――――えっ? なんですか、突然?」
この突拍子もない話の転換。
一体、どこからその話題がでてきたのか?
「今年は、何度か会う機会があり、かの令嬢とも赤の他人ではなく、ある程度、知り合いにはなれた。だが、未だに、ただの知り合いだ」
分かっています……。
そんなことをはっきりと指摘しなくても――
「だから、大義名分がなければ会うこともできないし、そうなると、来年の豊穣祭も、招待されることはないだろう」
そんなことは、言われなくても、ギルバートだって自覚しています……。
「だから、さっさと婚約してしまえば、来年は、婚約者として、豊穣祭に招待されることだろう」
ギルバートは、なにも、豊穣祭に参加したいが為に、セシルを望んでいるのではありません……。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
それも――ギルバートが一番良く分かっていることです……。
「さっさと婚約してしまいたまえ、ギルバート」
それができたら、ギルバートだって、こんなにも苦労はしていないのです……。
全く助言にもなっていない兄の助言で、更に落ち込みを激しくするギルバートだった。
「なんでも、領地の騎士団の訓練施設を建設する為、その資金繰りがやっと決まり、これから、大々的な建設作業にとりかかるそうです」
「訓練施設? なぜ?」
「今までは、騎士団の設立と、騎士としての基本的な任務がこなせるように、との訓練を徹底していらっしゃったようです。今は、大分、人数も落ち着き、騎士団としての役割も決まって来たそうですから、次の段階へ、ステップアップなさるそうです」
「ステップアップ? それは?」
「なんでも、基礎体力、持久力を上げる新たな訓練方法を導入し、その訓練ができる施設の建設をなさるとか。かなり、大々的な施設の建設をお考えになっていらっしゃるようでして、数年は軽くかかってしまうかもしれない、とのこと」
「ほう。あんな小さな町なのに、そのような本格的な訓練施設の建設とは、面白い」
「小さな町ですが、ご令嬢は、これからも、領地の人口増加を考えていらっしゃるようです。たかが八年足らずで、人口が倍以上に増加したのですから、これからも、人口が増え続けていくであろうことは、疑いようもありません」
「そうだろうな。それで、本格的な騎士団の訓練施設」
ふむ、とレイフの口元が、ほんの微かにだけ上がっている。
この顔をする時は、決まって、レイフが何かの興味を引かれている時の顔だった。
それで、面白そうな予感が止められないのか、レイフの好奇心に火がついて、うずうずと、探り当てたくて仕方がない状態になる前兆である。
「それから、豊穣祭で、また、新たな料理やデザートが増えていました。そのどれも、とてもおいしいものでした」
あの領地では、毎回、ギルバートの知らない、聞いたこともないような料理やデザートが出てくる。そのどれもおいしくて、結構、病みつきになってしまうものが多い。
だから、今年の豊穣祭でも、去年、食べた料理などが食べられるのかなぁ、と期待していたギルバートとクリストフの前に、その期待以上の料理やデザートが出ていて、今年も楽しんだものだ。
「今年にできたばかりの“パン屋”という店にも、帰りがてら、立ち寄ってみました」
「パンを売る店なのだろう?」
王宮にいる王子サマにとって、食事にパンが出てくるのは、あまりに日課と化していて、疑問に思ったことさえもない。
だから、パンを専門として売るお店を建てるなど、考えもしたことがなかったのだ。普通は、ただ食卓に出てくる食事の一つではないのか、程度の関心だったのだ。
「そうです。食卓で食べるような大きなパンがたくさん売られていまして、それと同時に、軽食やランチなどに適したサンドイッチや、チーズの挟まれたパンなど、そういった一人分のパンなどもたくさんあって、その横に、一人用のデザートとなる焼き菓子や――ああ、そう言えば、「マフィン」 というものも食べました」
「マフィン? それは?」
「ケーキのようなものなのですが、手で持てるくらいの大きさで焼いた、少し硬めの焼き菓子? ――でしょうか。普段は、ナッツが入っていたものや、チーズマフィンといったものが主流なのですが、季節によって、出てくるものもあるそうです。例えば、ブルベリーマフィンなどは、夏のブルーベリーの収穫の後になど」
「ほう。チーズを入れて。それは、甘い菓子ではないのだな」
「それは、食事となる(Savoury)マフィンだそうです。チーズとか、ハムがあれば、そういったものを入れるそうです。もう少し硬めに焼くと、「スコーン」 というらしいです。お店の従業員の話では、たぶん、食事となるマフィンは、「スコーン」 として売り出していくことになるだろう、と言っていました。今は、まだ新しい商品が出たばかりで、お客が名前を憶えていないので、全部を「マフィン」 としているんだそうです」
「ほう。それはいい。たった数日でも、今回も、随分、色々なことを、学んできたではないか」
「あそこの領民は、観光客にとても親切ですので、質問をすると、全員が丁寧に教えてくれるのです。それに、今回も、豊穣祭の案内役をシリル殿がしてくれましたから」
「ああ、ご令嬢の弟君。かなり若いと言っていたではないか」
「ええ。聞くところによると、5歳、年が離れているそうです」
「なるほど。本当に、興味深いものだなあ」
「領地では、豊穣祭を終えたばかりなのですが、もう、領民達は、来年の豊穣祭に向けて、張り切っているようです」
「今から? まだ、一年もあるではないか」
「そうですね。ですが、来年は、ご令嬢が領地にお越しになられてから、十年になるそうです。ですから、十周年を祝って、盛大な豊穣祭が予定されているとのこと。それで、領民全員が、今から張り切っているのでしょう」
「ほう、益々、興味深いなあ。では、ギルバート、お前はさっさと婚約したまえ」
「――――えっ? なんですか、突然?」
この突拍子もない話の転換。
一体、どこからその話題がでてきたのか?
「今年は、何度か会う機会があり、かの令嬢とも赤の他人ではなく、ある程度、知り合いにはなれた。だが、未だに、ただの知り合いだ」
分かっています……。
そんなことをはっきりと指摘しなくても――
「だから、大義名分がなければ会うこともできないし、そうなると、来年の豊穣祭も、招待されることはないだろう」
そんなことは、言われなくても、ギルバートだって自覚しています……。
「だから、さっさと婚約してしまえば、来年は、婚約者として、豊穣祭に招待されることだろう」
ギルバートは、なにも、豊穣祭に参加したいが為に、セシルを望んでいるのではありません……。
「時間は限られている。有効に使わなければ、ダメではないか」
それも――ギルバートが一番良く分かっていることです……。
「さっさと婚約してしまいたまえ、ギルバート」
それができたら、ギルバートだって、こんなにも苦労はしていないのです……。
全く助言にもなっていない兄の助言で、更に落ち込みを激しくするギルバートだった。
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