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Part2
Е.д これからは - 04
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「そうやって世話をして、普通の生活ができるように、生きていくことをお教えなさっているのが、ご令嬢だということを知りました。最悪の時は……、腕を噛まれるほど暴れたそうです。長い年月をかけ、そうやって、「人」 として生きて行けるように、ご令嬢が子供達の世話をしている、という事実を知りました」
「なるほど」
「長い年月――最高でも四年はかかったそうですよ。ねえ、兄上? 一体、いつから子供で、いつから子供ではなくて、子供を救ってきたのでしょうね?」
「さあ。私には、知り得ようもないな」
「ですから、私は、もう、ご令嬢には、頭が上がらないのです」
「それは知っている。運命の女性など、早々、見つかるものではないだろう?」
「そうですね」
「特別クラスの視察を、許されたのか?」
「いえ、知ったのは偶然です。豊穣祭前に、ご令嬢自身が王都に戻り、事情のある孤児を引き取らなければならなかった為、いつにも増してご多忙であられた為、私達の前で、眠ってしまわれたからです」
「ほう? 随分、信用されるようになったじゃないか」
「いえ、違います。もう、あの場で、気力が切れてしまっていたのでしょう。体力は――たぶん、豊穣祭前から続いてはいなかったのでしょうが、まあ……、(例年のごとく)無理をなさっていらっしゃったのです。ほぼ徹夜状態が続いていたと、聞いていますので」
「なるほど。確か、ノーウッド王国の王都も、北側に位置していたような?」
「そうですね。馬車なら、五日ほどかかるそうです。それの往復で時間を費やし、孤児の世話で更に時間を取られ、通常のお仕事をなされていたのは、たぶん、夜中だったのでしょう」
「豊穣祭は、多忙なのだろう? それなのに、孤児の世話を?」
「もちろんです。ご令嬢以外、一番初めに、事情のある子供の世話をできる者はおりません。今回は、言葉を喋れない子供ですから、尚更に」
「なるほど」
「なぜ、そういったことを――想像を超えるほどの努力や忍耐があるのに――自慢なさらないのでしょうね。領民に約束したから。「人」 として生きていくこと、選べることを与える為に領主になったからと、普通は違うものではないのですか?」
その問いは、兄のレイフに問いかけられているような感じでもなかった。
ただ、自問しているまま、口から出てしまった。そんな感じだったのだ。
「領主になったのは――ご令嬢の場合は、事情が事情でしたが、貴族の爵位を授かっているから領地があるのであって、それで、領地を治めなければならないのが、貴族の義務でしょう?」
「普通はな」
「ええ、そうですね。ですが、ご令嬢は、義務ではないのに「領主」 として領地を治め、「領主」 になったから、領民全員に生き抜いて、生き延びることを教えていらっしゃる。それも無償で。自分の知識を最大限に生かし、その知識を与えることにも、一切の躊躇いもなく、ただ領民達に、「人」 としての生を与える為に「領主」 になる。なぜでしょう?」
「それを私に質問する方が、間違っている。私は、かのご令嬢ではない。お前の言葉を引用すれば、私は王族だ。王族であるから、その責任があり、立場があり、国を統治する。それだけだ」
「そうですよね。私もそうです」
でも、セシルだけは――全部が全部、違っていた。
自分の知識も経験も、それを誰にでも簡単に授け、それを全く苦とも思っていない。それが自分にできることだと、誰よりも理解している一番の人だったから。
自分にできることも、能力も、誰よりも一番に理解していて、それを使うことに、一切の躊躇いもない。
試行錯誤だから、なんて、何度もトライする根気だって、若さだけでできるような簡単な事業でもない。
でも、セシルにとっては、そんな試行錯誤だって、苦になっていない。
苦労することも、辛いことも、その全てが全て、「生」 を生きている証だと、セシル自身が言っていた。
明日に生きていく為に。
前進していける力が、とても眩しい、と思う。
眩しくて、輝かしくて、とても暖かくて、手に入れたいと思う。
「せっかくの長い髪だったのに、お切りになってしまいました……」
突拍子もない話題の転換だったが、ポロっと、ギルバートの口から洩れていた。
「髪を切った? なぜ?」
「邪魔だから、だそうです」
そして、あまりにきっぱり言い切られて、「ええぇ、そうですかぁ……?」 と、反論する余地もないほどだった。
「昔は、あのようなサラサラの銀髪は、貴族の貴婦人の間で高く売れる為、売り払っていたようですが」
それを聞いて、レイフの顔が微かに引きつっている。
「さすが、令嬢らしからぬ令嬢だなあ……」
「そうなんです。ですが、勿体ない……。あのようなきれいな髪だったのに……。あの領地では、いつでも、毎回、驚かされてばかりですが、このような驚き方は、あまり、嬉しくないかもしれません」
そして、セシルのことを考えているだけに、またも、ポロっと、自分の感情がこぼれていたギルバートだった。
「ああぁ……、あのようなきれいな髪だったのに、勿体ない……」
いえ、邪魔ですから。
あの (魔の) 一言に尽きる。
はあ……、そうですか――以外、一体、何が言えようか。
残念なことである。
「なるほど」
「長い年月――最高でも四年はかかったそうですよ。ねえ、兄上? 一体、いつから子供で、いつから子供ではなくて、子供を救ってきたのでしょうね?」
「さあ。私には、知り得ようもないな」
「ですから、私は、もう、ご令嬢には、頭が上がらないのです」
「それは知っている。運命の女性など、早々、見つかるものではないだろう?」
「そうですね」
「特別クラスの視察を、許されたのか?」
「いえ、知ったのは偶然です。豊穣祭前に、ご令嬢自身が王都に戻り、事情のある孤児を引き取らなければならなかった為、いつにも増してご多忙であられた為、私達の前で、眠ってしまわれたからです」
「ほう? 随分、信用されるようになったじゃないか」
「いえ、違います。もう、あの場で、気力が切れてしまっていたのでしょう。体力は――たぶん、豊穣祭前から続いてはいなかったのでしょうが、まあ……、(例年のごとく)無理をなさっていらっしゃったのです。ほぼ徹夜状態が続いていたと、聞いていますので」
「なるほど。確か、ノーウッド王国の王都も、北側に位置していたような?」
「そうですね。馬車なら、五日ほどかかるそうです。それの往復で時間を費やし、孤児の世話で更に時間を取られ、通常のお仕事をなされていたのは、たぶん、夜中だったのでしょう」
「豊穣祭は、多忙なのだろう? それなのに、孤児の世話を?」
「もちろんです。ご令嬢以外、一番初めに、事情のある子供の世話をできる者はおりません。今回は、言葉を喋れない子供ですから、尚更に」
「なるほど」
「なぜ、そういったことを――想像を超えるほどの努力や忍耐があるのに――自慢なさらないのでしょうね。領民に約束したから。「人」 として生きていくこと、選べることを与える為に領主になったからと、普通は違うものではないのですか?」
その問いは、兄のレイフに問いかけられているような感じでもなかった。
ただ、自問しているまま、口から出てしまった。そんな感じだったのだ。
「領主になったのは――ご令嬢の場合は、事情が事情でしたが、貴族の爵位を授かっているから領地があるのであって、それで、領地を治めなければならないのが、貴族の義務でしょう?」
「普通はな」
「ええ、そうですね。ですが、ご令嬢は、義務ではないのに「領主」 として領地を治め、「領主」 になったから、領民全員に生き抜いて、生き延びることを教えていらっしゃる。それも無償で。自分の知識を最大限に生かし、その知識を与えることにも、一切の躊躇いもなく、ただ領民達に、「人」 としての生を与える為に「領主」 になる。なぜでしょう?」
「それを私に質問する方が、間違っている。私は、かのご令嬢ではない。お前の言葉を引用すれば、私は王族だ。王族であるから、その責任があり、立場があり、国を統治する。それだけだ」
「そうですよね。私もそうです」
でも、セシルだけは――全部が全部、違っていた。
自分の知識も経験も、それを誰にでも簡単に授け、それを全く苦とも思っていない。それが自分にできることだと、誰よりも理解している一番の人だったから。
自分にできることも、能力も、誰よりも一番に理解していて、それを使うことに、一切の躊躇いもない。
試行錯誤だから、なんて、何度もトライする根気だって、若さだけでできるような簡単な事業でもない。
でも、セシルにとっては、そんな試行錯誤だって、苦になっていない。
苦労することも、辛いことも、その全てが全て、「生」 を生きている証だと、セシル自身が言っていた。
明日に生きていく為に。
前進していける力が、とても眩しい、と思う。
眩しくて、輝かしくて、とても暖かくて、手に入れたいと思う。
「せっかくの長い髪だったのに、お切りになってしまいました……」
突拍子もない話題の転換だったが、ポロっと、ギルバートの口から洩れていた。
「髪を切った? なぜ?」
「邪魔だから、だそうです」
そして、あまりにきっぱり言い切られて、「ええぇ、そうですかぁ……?」 と、反論する余地もないほどだった。
「昔は、あのようなサラサラの銀髪は、貴族の貴婦人の間で高く売れる為、売り払っていたようですが」
それを聞いて、レイフの顔が微かに引きつっている。
「さすが、令嬢らしからぬ令嬢だなあ……」
「そうなんです。ですが、勿体ない……。あのようなきれいな髪だったのに……。あの領地では、いつでも、毎回、驚かされてばかりですが、このような驚き方は、あまり、嬉しくないかもしれません」
そして、セシルのことを考えているだけに、またも、ポロっと、自分の感情がこぼれていたギルバートだった。
「ああぁ……、あのようなきれいな髪だったのに、勿体ない……」
いえ、邪魔ですから。
あの (魔の) 一言に尽きる。
はあ……、そうですか――以外、一体、何が言えようか。
残念なことである。
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