337 / 531
Part2
* Е.д これからは *
しおりを挟む
「ああぁ……、疲れた……」
ベッドの上で、お行儀悪く両手両足を広げながら、横になっているセシルは、今日一日の仕事を終え、大きな溜息を吐き出していた。
豊穣祭前は、大抵いつも、怒涛の嵐のど真ん中を進んで行くかのような多忙さを極め、豊穣祭を終える前では、一息つける暇もないほどの時間が限られている。
豊穣祭を無事に終わらせ、やっと、一息がつけると思いきや、次に、年末調整の決済があって、来年度の予算案決定が待ち構えている。
だから、セシルの場合は、年末を無事に終わらせられると、お正月の一日、二日ほどは、仕事を入れないようにして、完全な休息日としていることが多い。
前世(なのか現世) の時なら、年末・年始はビッグイベントが続いていて、どこの家庭でも大忙しなものだ。
クリスマスでパーティーを終えれば、年末の仕事治め、年末大掃除などで、除夜の鐘を聞き、新年を迎える。
その間、お節料理を作る家庭では、新年のご馳走に向けて料理で多忙を極めてしまう。
新年では、お正月料理を満喫し、初詣に行ったりと、皆がウキウキと浮かれている大イベントだ。
そうやってお祝いする楽しみがあるのだったが、セシルの場合、あまりに一年が多忙過ぎて、お正月だけは、一切、何もしないことにしたのだ。
寂しいことながら、お節料理はない。
新年を祝って、そう言った習慣を作っても良かったが、すでに、豊穣祭で心身共に疲弊しきってしまい、年末で完全燃焼になってしまう為、お正月だけは、一切何もしない習慣が出来上がってしまった。
残念なことだ……。
今年の豊穣祭も大賑わいをみせ、領地全体での収入上昇も問題なく見られている。
セシルだけではなく、財務部だってホクホク顔で、他の部署の主任達も、豊穣祭後の売り上げから来年度の予算が少し上げられるかな? との期待で、彼らもホクホク顔だ。
そして、領地では、すでに、来年の豊穣祭に向けての計画が立てられ始めている。
やっと、豊穣祭を終えたばかりだと言うのに、領民はすでに来年の豊穣祭を計画しているのである。
なにしろ、来年は、特別な一年なのだ。
セシルがこのコトレア領に移って来て「領主名代」 となってから、来年は十年が経つ。十年の特別記念なのだ。
それで、領民全員が十周年を祝い、盛大なイベントを企画しているのだ。
まあ、正直な話、セシルも来年の十周年記念祭には、かなり期待をしている方だ。
今まで、怒涛のような勢いで、この十年を乗り切って来た。生き抜いてきた。生き延びて来た。
毎日が戦いで、休まる暇もなく、休まる時もなかった。
それでも、今まで成し遂げて来たことに、その結果に、セシルも不満はない。
これからも、まだまだ走り続けていくだけだ。
「はあぁ……」
それでも、心意気は決まっていても、身体的な疲労には勝てない。
若さで乗り切ろうにも、さすがに、限界があるだろう。
明日は、仕事を減らし、少し休憩を取るべきだろうか?
なんだか……思い起こせば、今年もまた、色々な行事があったものだ。色々な経験をすることができた。
初っ端からアトレシア大王国の夜会に招待されて、またも、隣国を訪ねることになってしまった。
それからも、アトレシア大王国とのイベントは続き、多忙だった。
セシルとしては、当初の予定として、セシルの婚約解消が済んだのなら、それからは、コトレア領の統治に専念して、余計な召集がかからない限り、ノーウッド王国の王都からも、王宮からも離れ、静かな余生を送るつもりだった。
静かで、平和な日々を過ごす予定だった。
うーん……。
今の所、平和、ではあるかもしれないが、静かで――という部分は、満たされていないかもしれない。
行事続きで、どうにもこうにも落ち着かない日々が続いているような?
これからは、静かで平和な日々がやってくるといいのだが。
「なんだか、勢いだけで……毎日が過ぎて行っているみたいねぇ……」
半分は、セシル自身のせいなのだが。
なにしろ、セシルは行動が早い。即決定で、即実行、だ。
別に、それをモットーとしているのではないが、何事にも無駄を嫌うだけに、時間の無駄も嫌だし、労力の無駄も嫌だし、お金の無駄も嫌だし、色々である。
問題点が上がって来ると、
「なにかしら、これ? なんて、無駄なこと」
などと、ついつい、速攻で、その“無駄”を解決してしまう癖がある。
だから、今までだって、スローダウンできただろうに、セシルの性格が伴って、なんでもかんでもものすごいスピードで終わらせてしまった。終わってしまったのだ。
「ちょっと、スピードを下げるべきかしら……?」
今は若さで乗り切っているが、いつまでも、この調子で仕事を押し進めていくことには、無理が出てくるだろう。
来年は、十周年記念にもなるし、そろそろ、スローダウンで仕事をこなし、終わらせていることを検討してみるのもいいかもしれない。
「少しは、落ち着きをみせろ、ってことなのかしら?」
セシルの行動は素早いものでも、だからと言って、いつでもどこでも急ぎ足、というのでもない。
セシルの性格だって、忙しないのではない。
「うーん……。仕事を詰め過ぎているのかしら?」
一日に終わらせる仕事の量を決めて、それ以上は無理をしない、など?
それは、セシルもできそうな方法だ。
これからは、静かで平和な時間を過ごせるように、セシルも来年からはちょっとした改善を試みようかしら?
ある程度の目標も決まり、セシルは心地よい眠りに落ちていた。
ベッドの上で、お行儀悪く両手両足を広げながら、横になっているセシルは、今日一日の仕事を終え、大きな溜息を吐き出していた。
豊穣祭前は、大抵いつも、怒涛の嵐のど真ん中を進んで行くかのような多忙さを極め、豊穣祭を終える前では、一息つける暇もないほどの時間が限られている。
豊穣祭を無事に終わらせ、やっと、一息がつけると思いきや、次に、年末調整の決済があって、来年度の予算案決定が待ち構えている。
だから、セシルの場合は、年末を無事に終わらせられると、お正月の一日、二日ほどは、仕事を入れないようにして、完全な休息日としていることが多い。
前世(なのか現世) の時なら、年末・年始はビッグイベントが続いていて、どこの家庭でも大忙しなものだ。
クリスマスでパーティーを終えれば、年末の仕事治め、年末大掃除などで、除夜の鐘を聞き、新年を迎える。
その間、お節料理を作る家庭では、新年のご馳走に向けて料理で多忙を極めてしまう。
新年では、お正月料理を満喫し、初詣に行ったりと、皆がウキウキと浮かれている大イベントだ。
そうやってお祝いする楽しみがあるのだったが、セシルの場合、あまりに一年が多忙過ぎて、お正月だけは、一切、何もしないことにしたのだ。
寂しいことながら、お節料理はない。
新年を祝って、そう言った習慣を作っても良かったが、すでに、豊穣祭で心身共に疲弊しきってしまい、年末で完全燃焼になってしまう為、お正月だけは、一切何もしない習慣が出来上がってしまった。
残念なことだ……。
今年の豊穣祭も大賑わいをみせ、領地全体での収入上昇も問題なく見られている。
セシルだけではなく、財務部だってホクホク顔で、他の部署の主任達も、豊穣祭後の売り上げから来年度の予算が少し上げられるかな? との期待で、彼らもホクホク顔だ。
そして、領地では、すでに、来年の豊穣祭に向けての計画が立てられ始めている。
やっと、豊穣祭を終えたばかりだと言うのに、領民はすでに来年の豊穣祭を計画しているのである。
なにしろ、来年は、特別な一年なのだ。
セシルがこのコトレア領に移って来て「領主名代」 となってから、来年は十年が経つ。十年の特別記念なのだ。
それで、領民全員が十周年を祝い、盛大なイベントを企画しているのだ。
まあ、正直な話、セシルも来年の十周年記念祭には、かなり期待をしている方だ。
今まで、怒涛のような勢いで、この十年を乗り切って来た。生き抜いてきた。生き延びて来た。
毎日が戦いで、休まる暇もなく、休まる時もなかった。
それでも、今まで成し遂げて来たことに、その結果に、セシルも不満はない。
これからも、まだまだ走り続けていくだけだ。
「はあぁ……」
それでも、心意気は決まっていても、身体的な疲労には勝てない。
若さで乗り切ろうにも、さすがに、限界があるだろう。
明日は、仕事を減らし、少し休憩を取るべきだろうか?
なんだか……思い起こせば、今年もまた、色々な行事があったものだ。色々な経験をすることができた。
初っ端からアトレシア大王国の夜会に招待されて、またも、隣国を訪ねることになってしまった。
それからも、アトレシア大王国とのイベントは続き、多忙だった。
セシルとしては、当初の予定として、セシルの婚約解消が済んだのなら、それからは、コトレア領の統治に専念して、余計な召集がかからない限り、ノーウッド王国の王都からも、王宮からも離れ、静かな余生を送るつもりだった。
静かで、平和な日々を過ごす予定だった。
うーん……。
今の所、平和、ではあるかもしれないが、静かで――という部分は、満たされていないかもしれない。
行事続きで、どうにもこうにも落ち着かない日々が続いているような?
これからは、静かで平和な日々がやってくるといいのだが。
「なんだか、勢いだけで……毎日が過ぎて行っているみたいねぇ……」
半分は、セシル自身のせいなのだが。
なにしろ、セシルは行動が早い。即決定で、即実行、だ。
別に、それをモットーとしているのではないが、何事にも無駄を嫌うだけに、時間の無駄も嫌だし、労力の無駄も嫌だし、お金の無駄も嫌だし、色々である。
問題点が上がって来ると、
「なにかしら、これ? なんて、無駄なこと」
などと、ついつい、速攻で、その“無駄”を解決してしまう癖がある。
だから、今までだって、スローダウンできただろうに、セシルの性格が伴って、なんでもかんでもものすごいスピードで終わらせてしまった。終わってしまったのだ。
「ちょっと、スピードを下げるべきかしら……?」
今は若さで乗り切っているが、いつまでも、この調子で仕事を押し進めていくことには、無理が出てくるだろう。
来年は、十周年記念にもなるし、そろそろ、スローダウンで仕事をこなし、終わらせていることを検討してみるのもいいかもしれない。
「少しは、落ち着きをみせろ、ってことなのかしら?」
セシルの行動は素早いものでも、だからと言って、いつでもどこでも急ぎ足、というのでもない。
セシルの性格だって、忙しないのではない。
「うーん……。仕事を詰め過ぎているのかしら?」
一日に終わらせる仕事の量を決めて、それ以上は無理をしない、など?
それは、セシルもできそうな方法だ。
これからは、静かで平和な時間を過ごせるように、セシルも来年からはちょっとした改善を試みようかしら?
ある程度の目標も決まり、セシルは心地よい眠りに落ちていた。
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
私は逃げます
恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。
そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。
貴族のあれやこれやなんて、構っていられません!
今度こそ好きなように生きます!
乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました
雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた
スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ
この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった...
その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!?
たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく
ここが...
乙女ゲームの世界だと
これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる