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Part2

В.д 囮に? - 11

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 それよりも、その光景を見ていたギルバートの――目が、チカチカと、火花が飛び散ったように、血が逆流した。

 ブチッ――!

 もう、完全に音になって聞こえるほどにしっかりと、ギルバートの忍耐がそこで切れていたのだ!

 完全に無表情になって、あまりに感情も映さないほどの冷たい目も据わっているほどだ。
 スッと、鞘ごと剣を抜いたギルバートが、無言で男達の方に進んでいた。

 シュッ――!
 ガツッ――!!

「――ぅあっ……!」
「――ぅがぁっ……!!」

 目に見えぬ速さで剣を振り回したかと思うと、すでに、二人の男が鞘付きの剣で殴られたのか、横の壁に、無残に吹っ飛ばされていた。

 ズルズルと、壁から滑り落ちていく二人は――完全に気絶している。

「なっ、なんだこいつっ――!」
「くそっ……!」

 残り二人が、突然の状況変化に焦り、片方が背中からナイフを取り出した。

「くそっ――」
「うるさい」

 凍り付きそうなほど冷たい一言を吐き捨てたギルバートが、ダッと、駆け出した。

 男がナイフを振り上げる暇さえなく、ギルバートの剣がナイフを吹っ飛ばし、それで、腕が降り上がってがら空きになった胸元が、おもいっきり蹴り飛ばされる。

「……うがぁっっっ……!!」

 完全な無表情で――鉄仮面と名高い――ギロリと、最後の男を睨みつけたギルバートに、男の顔の方が全身蒼白になっていた。

「……くそっ、くそっ……来るなっ――」

 いや、そんな懇願など、今更、遅過ぎである。
 素早い一振りだけで、最後の男だって、完全に気絶させられていた。

 その間、一分もない。

「あの――騎士の人、恐いんだな……!」
「全然、そうは見えなかったのに――!」

 さすがに、五人とも、この展開は予想していなく、唖然としている。

「ギルバート様は、いつもあのようですが」
「「えっ!? まじっ……?!」」

 咄嗟に反応してしまった五人は、つい、ため口が、ポロっと、こぼれていた。

 クリストフは、その態度を気にしていないのか、
「ええ、そうですね」

 クリストフの態度も変わらず、飄々とした様子なのも変わらない。

 さすが、ギルバートである。
 一瞬の間で、一気に、五人の男達を叩きのめしてしまった。


(あっ、私の獲物だったのに……)


 セシルが、後でコテンパにやっつけてやろうと標的にしていた男達二人も、ギルバートに簡単にやっつけられてしまった。

 全員が気絶していることを見取り、すぐに、ギルバートがセシルの元に駆けよって来て、膝をついた。

「大丈夫ですか?」
「はい。ちょっと尻もちをついただけですので」

 でも、それだって、ギルバートの顔が、いたたまれない……と、しかめられていた。

 セシルをゆっくりと立ち上がらせ、失礼にならない程度に、土埃も(ものすごく)丁寧にほろってくれる。

「マスター、大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません」

 子供達も、セシルの元に走り寄って来た。

「ここで護衛していてくれ」

 あまりに短い、それだけの一言を子供達に残し、ギルバートは地面に転がっている男の一人の首根っこを掴み上げていた。

 その男をズルズルと掴み上げたまま、容赦もせず、加減もせず、ギルバートが思いっきり男の頭を壁に叩きつけていた。

 濁った悲鳴が口から吐き出されていたが、半分気絶しかかっていた男は、今では完全に白目を向いて、ノビてしまっていた。

 今のは――なんだか……非情に、無情に、冷酷に、ギルバートの八つ当たりをしたような感じだった。

 次に、うめきながら地面で這いつくばっていた男を蹴り上げ、吹っ飛ばされた男が地面に落ちると同時、ギルバートの足が、思いっきり男の喉仏のどぼとけを押し潰す。

 音にもならない、奇妙で不気味なあえぎが吐かれて、男が必死でギルバートの足を外そうと試みるが、ギルバートの力は全く緩むことはない。

「黒幕は誰だ」

 だが、地面でもがいている男からは返答がなく――返答もできず、呼吸困難で、顔が真っ赤になり出している。

「答える気がないのか? では、お前は死ね」

 答えるもなにも、答えられない状態で、尋問されている男だ。

「いやいやいや、あの人、なんか目がわってない? 怖いよ」
「いや、本気なんじゃない? 騎士団だから、手加減しないとか」

 そして、(結構)危ない状況の最中、全く動じた様子もなく、淡々と実況中継をしてくれる子供達を前に、クリストフも、微かに口を曲げたような顔をしてしまっている。

 だが、子供達の読みは、少々、外れている。


――――いやいや、あんなものでは手ぬるいでしょう。


 なにしろ、ギルバートの大切な思い人である女性を傷つけたなど、死罪同然の大罪だ。

 そんな輩など、ギルバートが許すはずもない。斬りおとされなかっただけでも、感謝すべきだろう。

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