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Part2

В.в つかの間の休日 - 04

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 布地のお店のオーナーとも顔見知りで、上客(貴族の中でも選別された貴族だけ)の御用達ごようたしであるお店だったのらしいが、セシルはそんなことを知らず。

 ただ、紹介してくれたので、紹介状を持って、入店したら、紹介状を見た主人が、セシルを快く迎えてくれたのだ。

 上客だから、見逃すべきじゃない――なんて、紹介状に書かれていたのかもしれないが、セシルには、買い物ができれば文句がない。

 アトレシア大王国で今流行っているリボンや、レースの飾りも見つけられて、そこでも、好きなだけ、セシルの趣味で買いまくっていたセシルだったのだ。

 そのお店で買った品物も、一番初めに行った布地のお店のオーナーが、一緒に王宮まで運んでくれる、というので、セシルはその好意に乗せてもらったのだ。

 セシルの買い物は、ここのお店の主人がしっかりと責任を持って、布地のお店に届けてくれるらしい。

「次はどちらへ?」

 そのお店での買い物も、ものすごい素早さだった。
 勢いだった。

 でも、待ちぼうけ、とは感じなかった。
 なにしろ、買い物をする速さが尋常ではなかったから。

 あれも、これも、それも、次もお願いしますね。

 ポンポン、ポンポンと、セシルの領地でしている報告会の並みの手際の良さで、効率良さで、ものすごい量の買い物も終わっていた次第である。

「そうですね……」

 うーんと、セシルが手に持っている地図を見やりながら、どんなお土産を買うべきか考えてしまう。

 ちらっと、セシルの手の中に地図に視線を落としたギルバートが、少々、微苦笑を浮かべた。

「本当に、優秀な部下ですね」
「ええ、そうなんです」

 前回、王都に来た時にトムソーヤが作成した地図は、漏らす所なく詳細で、ついでに言うと――トムソーヤ達が行ってみたい食事処しょくじどころやお店にも印がついていて、便利なものなのである。

 今回はそれを書き写して、全員に持たせるように準備してきたので、王都の繁華街の移動は、とても楽になっていた。

 詳細で綿密な地図ではあるが、隠す必要もないので、セシルも、地図を大っぴらに広げている。

 周囲では行きかう民たちの喧騒やら、馬車の移動やら、ガヤガヤがと、活気がやまない。

 グイッ――と、突然、抱き寄せられたかと思う暇もなく、セシルは――ギルバートに抱きかかえられたまま、先程いた場所から、優に、数歩離れた場所に移動していた状態だったのだ。

 ガラガラッ!
 ドシャンっ――
 ドシンっ――――!!

 ギルバートの腕の中に抱えられているセシルの耳にもすぐに、重い振動や衝撃音が届いてきた。

 しっかり抱きかかえられているような状態でも、一応、首を動かしてみて、チラッと、ギルバートの後ろを確認してみる。

「大丈夫ですかっ」

 少し離れた場から護衛していたクリストフが、即座に駆け寄ってきた。

「問題ない」

 ギルバートは、腕の中で自分を見上げているセシルを見下ろす。

「大丈夫ですか?」
「ええ、全く問題ありませんでした。ありがとうございます」

「それは、良かった。許可なく、このように触れてしまい、申し訳ありません」
「いいえ。そのようなお気遣いは、どうか。助けていただきましたので」

 セシルが、一切、怪我していないことは百も承知なのに、ホッと、安堵してみせるギルバートを見上げながら、セシルも待ってみる。

 それから、ギルバートの腕が離れていって、改めて後ろの惨状が目に入ってきた。

 どうやら、積み上げてあった荷が崩れ落ちてしまったようである。

 木箱もあれば、麻布でまきつけたような大きな包みもあって、均等でないサイズの荷が、地面に散らばってしまっている。

 このお店の前を通る時、仕入れの荷物を整理していたのか、お店のすぐ前の外では、たくさんの荷箱が積み上げられていた。

 歩いている通行人の前に落ちてきたら危ないのにな、とはセシルも、ふと、思ったことである。

「なんだか危ないなぁ、とは思っていたのですけれど」
「そうですね――」

 外の喧騒を聞きつけてか、開けっ放しになっている大きな扉から誰かが外に飛び出してきた。

「一体、何事なんだっ!!」
「なんだ、この惨状は……!?」

 ものすごい勢いで外に飛び出してきたのは、中年の男性と、その人より少し年の若そうな男性だった。
 それで、荷箱や丸まった大きな荷物が崩れ落ち、その惨状を見て、あからさまに顔をしかめている。

「まったく、商品に傷がついたらどうしてくれるんだ……」
「すみません……。ちゃんと、並べておいたつもりだったんですが……」

「いや、並べ方が安定していず、危なかったが」

 突然、横からの声がかかり、その一言を聞いて、ピタリ、と二人の男性の動きも会話も止まっていた。

 二人の視線が一斉にギルバートに向けられて――その瞬間、二人の顔から血の気が一斉に引いてしまったかのように、一気に顔色が青ざめてしまったのだ。

「あっ……!?」

 それで、ガバッと、二人が地面に頭をこすりつけるかのように、土下座したのだ。

 その光景を見て、状況についていけないセシルは、ポカンと二人の頭の形を見下ろしている。

「申し訳ございませんでしたっ……」
「申し訳ございませんでした……」

「いや。大事に至らなかったから、問題ではない」
「申し訳ございませんでした……」

 ペコペコと、二人は地面に顔をこすりつける勢いで、頭を上げない。

 ギルバートの顔にも、一瞬だけ、困ったような、そんな表情が浮かんでいる。

 一体、この状況は何なのかよく理解できていないセシルは、地面に崩れ落ちた荷物を見下ろした。

「あの、荷物が崩れているようですので、拾うのをお手伝いしましょうか?」

 その一言で、ガバッと二人が顔を上げる。

 さっきから、ものすごい勢いで、ものすごい反応を見せる二人である。

「いえいえっ――! そんな、滅相もございませんっ……!」

 店員らしき男性が、真っ青になって首を振る。

「いえいえっ……! どうか、お構いなく……」
「そうですか?」

「人通りが多いから、こういった重い荷の積み上げは危ないだろう。場所を取っても、せめて、2~3箱の高さで留めておいた方がいい」

「は、はいっ……! もちろんです。本当に、申し訳ございませんでした……!」

 平に、平に、頭を低くして誤る店員らしき男性に、ギルバートは気にした風もなく、

「いや、怪我人がでなくて良かった」
「はいっ……。本当に、申し訳ございませんっ……!」

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