オネエとヤクザ

ちんすこう

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第二章:酒とクスリと男と男

2−16

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 雄々しい叫び声を上げて盛大につんのめった伊吹を、驚いたミフユが咄嗟に支える。あやうく顔からコンクリートにぶつかるところだ。

 「危ないわね!」

 「っな……な……」

 支えた左胸がバクバクと波打っている。
 さぁっと青褪めた伊吹をそっと立たせてやると、ミフユはふむ、と顎に指を当てた。

 「やっぱり、ハジメテの子にはきつかったかしら?
 ヒール」

 「妙な言い方をすんな、……ったく」

 くそ、と悪態をついた伊吹は、その場にかがみ、山吹色の『スカート』の下のナマ足を乱暴に擦った。

 「今ので変な筋が攣った! だぁ! 踵は擦れるし爪先は痛ぇし!」

 「それがオンナの努力ってやつよ」

 「こんな努力ならいらねえ! ――じゃなくて」

 シルバーのヒールを荒っぽく脱いで宙へ放っぽった伊吹は、長い黒髪を振り乱しながら怒鳴った。


 「俺はオンナじゃねえ!!!」


 そう。

 一週間前、二人が早朝の喫茶店で取り決めた計画。
 【禁じられた果実】の取引現場に、彼らが“違和感なく”潜入するために企てた作戦は。

 「最悪だ! 誰だこんな無茶苦茶な計画立てたのはっ、――畜生が俺達じゃねぇか徹夜のテンションで決めるんじゃなかった!!」

 “ホストクラブである【EDEN】のメインターゲット、女性を装って、客として入店する”というものだった。

 
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