オネエとヤクザ

ちんすこう

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第二章:酒とクスリと男と男

2−8

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 言いかけて、止まる。


 ぎょっと目を剥いた伊吹の視線の先には。

 「あらぁん! まだいたの伊吹ちゃん!」

 胸がパツパツのTシャツに短パンを着た、筋骨隆々な男が立っていた。

 「だっ……誰だオッサン!?」

 驚愕する伊吹に、短髪の男はオーバーに傷付いた反応をする。

 「やだもう忘れたの!? キャメロンよ! メ・ロ・ン・ちゃん」

 むっふんと投げキッスをしてくるのは間違いなく彼女――いや、彼なのである。
 店で着ているメロンの化身みたいな黄緑の衣装ではないが、確かにしなの作り方は本人だ。

 じゃあねん、と軽快な足取りで去っていくキャメロンに続き、またもや見慣れない青年が出てくる。

 染めたこともなさそうな黒髪で、白いシャツに眼鏡という格好はどことなく神経質そうだが。

 「じゃあね、江本くん」

 ミフユが手を振ると、ぺこりと会釈が返ってきた。そして、そのまま店を後にしていく。控えめな性格らしい。
 そんな謙虚なキャストが居ただろうかと、伊吹は首をひねった。

 「今のは?」

 「パピ江ちゃんよ」

 はぁ?と伊吹がとぼけた声を上げている間に、アキとモモが出てきた。この二人は店と変わらない姿である。

 「驚きました?」

 クスクスと笑いながら降りてきたアキに、伊吹は変な表情で呆然と返す。

 「驚くも何も……なんだありゃ。普通にそのへんにいる野郎じゃねぇか」

 「そりゃ野郎ですもの」

 横でモモが可笑しそうに笑い、手元のスマホを見て、あっと声を上げた。

 「いっけない! 今日は息子ちゃんのお弁当作ってあげなくっちゃ。もう行くわ、バイバイ!」

 「は、え? 息子?」

 モモもまた去って行き、後にはミフユたち三人だけが残される。
 茫然とみんなの後ろ姿を見送った伊吹は、ぽつりと呟いた。

「どういうこった……?」

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