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第14話「元最強陰陽師、天体観測を開始する」
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夜の帳が下りる頃、俺は学院の天文台に来ていた。
目的はこの世界の天体の運行を観測し、元の世界との違いを確認しすることだ。これにより、星の配置に適合していない俺の陰陽道に適切な修正を加えることが出来るだろう。そしてそれにより元の世界に戻る魔術が行使できるようになるはずだ。
陰陽道は様々な要素が影響しているため、星の配置だけが俺の魔術の弱体化の原因とは言い切れないが、一つ一つ弱体化の要因を潰していかなくてはならない。
最近3食でイモリの黒焼きやらマンドラゴラを食べているのも、魔力を回復させるための努力のいっかんであり、ついさっきの夕飯でもエルフの陰陽師であるカナデが用意してくれたそれらのゲテモノ料理を食していた。
もっとも、俺はそういった食材に精神的な耐性があるし、カナデの味付けは中々のものであるため苦にはなっていない。
なお、天文台には1人出来たのではなく、陰陽道を学ぶ同志であるエルフのカナデ、猫妖精のダイキチ、鬼族のアマデオ、それに俺と同部屋のクロニコフも勉強のために同行している。
「九頭刃アツヤです。異世界で陰陽師をやってました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします。話は学院長から聞いていますので、どうぞ施設を隙に使ってください。それに、分からないことがあったら何でも言ってください」
俺の自己紹介に対して、丁寧に対応してくれるのはこの天文台の管理者であり、占星術を専門とする学院の教師、ミーティア師である。裾の長いローブを身に纏い、とんがり帽子をかぶった長いひげの老人で、いかにも魔術師といった風体である。
若僧である俺に対してとても丁寧に対応してくれるが、かなりの実力者であろうことは雰囲気から察することが出来た。
「ところでこの世界の天体と九頭刃君の世界の天体の比較で、陰陽道に関わる魔術法則を見出そうという事だそうですが、どのようにそれを進めるのですか?」
「この世界の天文学や占星術の本を少し読ませてもらいましたが、この世界の占星術は私の世界での西洋と呼ばれる地域の占星術に近いように思えます。なので、まずはこの世界の宇宙を観測して西洋占星術に変換し、その結果をもとに陰陽道に再変換をしようと思います。少し遠回りですが、この世界の陰陽道では星の配置を魔術法則に取り入れていないようなので直接比較できませんので」
この世界の陰陽道は天体の運行を考慮していない。これは、カナデ達この世界の陰陽師に確認したことである。彼女らはまだ見習であるが、多分間違いは言っていないだろう。
「ふむ。中々興味深い取り組みですね。私も出来る限り協力させてもらいましょう。九頭刃君の世界の占星術も気になりますし」
「はい。それでは観測をはじめさせてもらいます」
ミーティア師の許可も得られたので観測を開始した。
この学院の天文台の天体望遠鏡は、元の世界における天体望遠鏡には技術的には程遠い。
しかし、レンズを組み合わせた屈折望遠鏡であり、対物レンズ、接眼レンズともに凸レンズを利用した、ケプラー式に近い物である。
これならば、望む精度の観測結果を得ることが期待できる。
最初に観測の対象としたのは、北極星である。学院から借りた天文学の本を読んだところ、この世界にも北極星があり、それを中心に星が周っているように見えるという事だ。なお、この世界では名前は北天星と呼ばれている。
また、この世界では地面が球形であることが広く知られているらしく、地動説が既に人口に膾炙している。同じ部屋に住む学生のクロニコフに聞いたところ、かつて飛行魔術で世界一周をした者がいるらしく、世界が丸いというのは古くから実証されているとのことだ。
「よし、北極星、北天星発見」
「それで、これからどうする?」
「北天星が元の世界とこの世界の天文学を比較する際の基準として適切か判断するため、後2、3時間は観測する」
「え? 北天星何て動かないから何時間観測しても同じだろ?」
クロニコフは無駄に長時間観測しようとしていることに対して疑問のようだ。
「いや、俺の世界で北天星にあたる北極星は1度位ずれているんだ。まずはこの世界の北天星のずれを観測して比較するところから始めようと思う」
「へえ? 良く知ってましたね。あまり知られていないのですが、九頭刃君の言う通り北天星は約1度のずれがありますよ。後、北天星は常に同じなのではなく、数千年昔は別の星だったとか」
ミーティア師が感心しながら補足してくれた。北極星が時代によって変わる。これは元の世界でも同じことなので、この関連性を突破口にすれば何とかなる気がしてきた。
~~~~3時間後~~~~
「フニャーア。もうそろそろいいんじゃないかニャ?」
眠そうにあくびをしながらケットシーのダイキチが声をかけてきた。確かにもうそろそろ良いだろう。
「そうだな。結論からすると、北天星は北極星に相当するとして間違いなさそうだ。ここを基点に他の星を観測していくとしよう」
元の世界では北極星を探す時には北斗七星やカシオペア座等が利用されている。なので、俺はこれを逆用して北天星の周りの北斗七星やカシオペア座に相当する星を探そうと考えていた。
「最終的にはどうなれば天体を陰陽道に活用できるんですか?」
「そうだな。とりあえずこの世界の天空を二十八宿で区分するのと、惑星の対比について確定させたいな。それに、計都や羅睺みたいに実際に観測できない星がこの世界ではどうなっているのかとか、後は九星もこの世界に適合したものにしたいな」
オーガのアマデオの問いに答えて今後の展望を話すが、多分何を言っているかはほとんど理解できないだろう。これから見習陰陽師の者達には教えて行かなくてはならないが、簡単に言えば星の配置やそこから作成された暦によって魔術や運勢に影響が出るので、どうすれば自分が有利になるのかを研究していこうという事だ。
「良く分かりませんが、かなり大変そうですね」
「当然今日中に何とかしようなんて思っていないよ。何回も繰り返し観測しないといけないし、昼間も計算しなくちゃいけないだろうし」
「その通りです。天文学や占星術とは一朝一夕で成る者ではありませんので、じっくりと腰を据えてやっていってください。決して急いではいけませんよ」
ミーティア師が頷きながらそう言った。これまで長い間の研究の積み重ねで苦労してきたのだろう。学問や魔術とは天体に限らずそういうものだ。まああまり時間をかけすぎると、それだけ元の世界に戻るのが遅れてしまうのであるが。
「それじゃ後、3時間位観測したら帰るとしよう。明日も授業があるし、俺は晴れの日は毎晩観測に来るつもりだしな」
その後予告通り3時間ほど観測し、この日は天文台を後にした。
成果としては、いくつかの星が元の世界の星と対応するのではないかという推察を得ることが出来た。今後の観測結果によって総合的に判断していくことが出来るだろう。
真剣に天体観測をしていたせいか、その日はベッドに横たわるとすぐに意識が遠のいた。
目的はこの世界の天体の運行を観測し、元の世界との違いを確認しすることだ。これにより、星の配置に適合していない俺の陰陽道に適切な修正を加えることが出来るだろう。そしてそれにより元の世界に戻る魔術が行使できるようになるはずだ。
陰陽道は様々な要素が影響しているため、星の配置だけが俺の魔術の弱体化の原因とは言い切れないが、一つ一つ弱体化の要因を潰していかなくてはならない。
最近3食でイモリの黒焼きやらマンドラゴラを食べているのも、魔力を回復させるための努力のいっかんであり、ついさっきの夕飯でもエルフの陰陽師であるカナデが用意してくれたそれらのゲテモノ料理を食していた。
もっとも、俺はそういった食材に精神的な耐性があるし、カナデの味付けは中々のものであるため苦にはなっていない。
なお、天文台には1人出来たのではなく、陰陽道を学ぶ同志であるエルフのカナデ、猫妖精のダイキチ、鬼族のアマデオ、それに俺と同部屋のクロニコフも勉強のために同行している。
「九頭刃アツヤです。異世界で陰陽師をやってました。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いいたします。話は学院長から聞いていますので、どうぞ施設を隙に使ってください。それに、分からないことがあったら何でも言ってください」
俺の自己紹介に対して、丁寧に対応してくれるのはこの天文台の管理者であり、占星術を専門とする学院の教師、ミーティア師である。裾の長いローブを身に纏い、とんがり帽子をかぶった長いひげの老人で、いかにも魔術師といった風体である。
若僧である俺に対してとても丁寧に対応してくれるが、かなりの実力者であろうことは雰囲気から察することが出来た。
「ところでこの世界の天体と九頭刃君の世界の天体の比較で、陰陽道に関わる魔術法則を見出そうという事だそうですが、どのようにそれを進めるのですか?」
「この世界の天文学や占星術の本を少し読ませてもらいましたが、この世界の占星術は私の世界での西洋と呼ばれる地域の占星術に近いように思えます。なので、まずはこの世界の宇宙を観測して西洋占星術に変換し、その結果をもとに陰陽道に再変換をしようと思います。少し遠回りですが、この世界の陰陽道では星の配置を魔術法則に取り入れていないようなので直接比較できませんので」
この世界の陰陽道は天体の運行を考慮していない。これは、カナデ達この世界の陰陽師に確認したことである。彼女らはまだ見習であるが、多分間違いは言っていないだろう。
「ふむ。中々興味深い取り組みですね。私も出来る限り協力させてもらいましょう。九頭刃君の世界の占星術も気になりますし」
「はい。それでは観測をはじめさせてもらいます」
ミーティア師の許可も得られたので観測を開始した。
この学院の天文台の天体望遠鏡は、元の世界における天体望遠鏡には技術的には程遠い。
しかし、レンズを組み合わせた屈折望遠鏡であり、対物レンズ、接眼レンズともに凸レンズを利用した、ケプラー式に近い物である。
これならば、望む精度の観測結果を得ることが期待できる。
最初に観測の対象としたのは、北極星である。学院から借りた天文学の本を読んだところ、この世界にも北極星があり、それを中心に星が周っているように見えるという事だ。なお、この世界では名前は北天星と呼ばれている。
また、この世界では地面が球形であることが広く知られているらしく、地動説が既に人口に膾炙している。同じ部屋に住む学生のクロニコフに聞いたところ、かつて飛行魔術で世界一周をした者がいるらしく、世界が丸いというのは古くから実証されているとのことだ。
「よし、北極星、北天星発見」
「それで、これからどうする?」
「北天星が元の世界とこの世界の天文学を比較する際の基準として適切か判断するため、後2、3時間は観測する」
「え? 北天星何て動かないから何時間観測しても同じだろ?」
クロニコフは無駄に長時間観測しようとしていることに対して疑問のようだ。
「いや、俺の世界で北天星にあたる北極星は1度位ずれているんだ。まずはこの世界の北天星のずれを観測して比較するところから始めようと思う」
「へえ? 良く知ってましたね。あまり知られていないのですが、九頭刃君の言う通り北天星は約1度のずれがありますよ。後、北天星は常に同じなのではなく、数千年昔は別の星だったとか」
ミーティア師が感心しながら補足してくれた。北極星が時代によって変わる。これは元の世界でも同じことなので、この関連性を突破口にすれば何とかなる気がしてきた。
~~~~3時間後~~~~
「フニャーア。もうそろそろいいんじゃないかニャ?」
眠そうにあくびをしながらケットシーのダイキチが声をかけてきた。確かにもうそろそろ良いだろう。
「そうだな。結論からすると、北天星は北極星に相当するとして間違いなさそうだ。ここを基点に他の星を観測していくとしよう」
元の世界では北極星を探す時には北斗七星やカシオペア座等が利用されている。なので、俺はこれを逆用して北天星の周りの北斗七星やカシオペア座に相当する星を探そうと考えていた。
「最終的にはどうなれば天体を陰陽道に活用できるんですか?」
「そうだな。とりあえずこの世界の天空を二十八宿で区分するのと、惑星の対比について確定させたいな。それに、計都や羅睺みたいに実際に観測できない星がこの世界ではどうなっているのかとか、後は九星もこの世界に適合したものにしたいな」
オーガのアマデオの問いに答えて今後の展望を話すが、多分何を言っているかはほとんど理解できないだろう。これから見習陰陽師の者達には教えて行かなくてはならないが、簡単に言えば星の配置やそこから作成された暦によって魔術や運勢に影響が出るので、どうすれば自分が有利になるのかを研究していこうという事だ。
「良く分かりませんが、かなり大変そうですね」
「当然今日中に何とかしようなんて思っていないよ。何回も繰り返し観測しないといけないし、昼間も計算しなくちゃいけないだろうし」
「その通りです。天文学や占星術とは一朝一夕で成る者ではありませんので、じっくりと腰を据えてやっていってください。決して急いではいけませんよ」
ミーティア師が頷きながらそう言った。これまで長い間の研究の積み重ねで苦労してきたのだろう。学問や魔術とは天体に限らずそういうものだ。まああまり時間をかけすぎると、それだけ元の世界に戻るのが遅れてしまうのであるが。
「それじゃ後、3時間位観測したら帰るとしよう。明日も授業があるし、俺は晴れの日は毎晩観測に来るつもりだしな」
その後予告通り3時間ほど観測し、この日は天文台を後にした。
成果としては、いくつかの星が元の世界の星と対応するのではないかという推察を得ることが出来た。今後の観測結果によって総合的に判断していくことが出来るだろう。
真剣に天体観測をしていたせいか、その日はベッドに横たわるとすぐに意識が遠のいた。
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